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自由奔放な猫の如く  作者: 黒田明人
4.軽率の代償
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 そうして段取りを付けた頃にあいつがやっと到着する。

 なのに割り当ての荷物を持つどころじゃなく、仕方なくオレが全部持つ羽目になる。


「お前、途中で荷物持ちを交代しろよ」

「はぁはぁはぁ、こんなの、ありかよ。普通は馬車で運んでくれるもんだろ」

「オレ達の流儀が気に入らないんなら、今から帰っても良いんだぜ」

「冗談じゃあるか。ここまで来てタダ働きとかやってられるかよ。返したいなら違約金寄こせ」

「そこまで言うなら仕方が無い。コウ、良いんだな」

「任せて」


 そうして入り口脇の小部屋で休憩する事になり、あいつは壁に寄りかかって俯いている。

 マグラスさん達は部屋の隅にある、何かのモニュメントに揃って手を当て、こっそりと魔法陣で消えていく。

 その途端、小部屋の扉が閉まり、何かのイベントが開始になる。


「なんだなんだ。え、あいつらは? 」

『おお、試練を求めし者、よくぞ来た』

「なんっ、まさか、ここは、嘘だろ、あいつら」

『しかも2人とは頼もしい。そうさの、まずはそなたらで戦いをせよ。生き残ったほうに試練を渡そうぞ』

「くそぅぅぅ、あいつらオレを生贄にしやがったな。こうなったら、死ねぇぇぇ」


 軽く避けて足を引っ掛けてやると、そのまま顔から地面に突っ込んでいく。

 プレートアーマーな彼はその自重でかなりのダメージを受けたようで、ゲホゲホ言いながら起き上がってくる。


「くそ、舐めやがって、この野郎」


 大体さ、前衛職は良いが、ポーターなんだからそんな重い鎧は置いて来いよな。

 マグラスさん達が求めているのは、あくまで荷物持ちと雑用なんだ。

 なのに普通のパーティメンバーのような格好で参加したうえに、荷物が持てないとかふざけてるだろ。


 頭に血が登ったのか、直線的な攻撃が何度も来るが、足を引っ掛けるだけであいつばかりが怪我をしていく。

 そのうち息も絶え絶えになって起き上がれなくなるが、恨み言だけは止まる事がない。


「こいつ、もう動けないぞ」

『殺しは嫌なのかの』

「まあね」

『殺せぬとあれば致し方あるまい。次なるステージで見極めるとしようぞ。そやつは魔物のエサにするのでな、そこに放置で構わぬよ。さあ、我のところに来るがよい』

「さよなら、名前も知らない雑魚さん」

「ま、待て、この、野郎っ」


 よろよろと立ち上がろうとする雑魚を蹴飛ばして壁に叩き付ける。

 ああ、ちょっと力を入れ過ぎたか。

 昏倒したみたいだけど、どうせ魔物のエサになるようだし、そのままで良いよね。

 そして誘われるままに魔法陣で別の空間に飛ぶ事になる。


『おぬしは殺しを厭うようじゃが、見殺しにした時点で手は穢れておるぞぃ』

「それが? 」

『気にならぬのかの』

「あんな世間体の言葉に騙されるなよ。もう雑魚も居ないんだし、猫は剥いでも良いだろ。さあ、試練とやらをやってもらおうか。何? お前を殺せば良いのか? 」

『はっはっはっ、元気の良い生贄じゃのぅ』

「神聖魔法・聖なる浄化」

『な、なん、じゃと』

「光属性最上級魔法・天上の輝き」

『ぐぁぁぁぁぁ、止めろぉぉぉぉぉ』

「合成魔法・万物の黄昏」

『そ、存在、が、消え、貴様、これは、一体……』


 ふん、世界外魔法に抗えるかよ。

 この世界の魔法とはシステムが違うからな、世界内存在に抗う術は無いさ。

 さてさて、あいつも食われたみたいだし、そろそろ合流といきますか。


『よくも我がしもべを消滅させたの』


 あれ、上役が出て来たぞ。

 てかこいつ、ダンジョンマスターじゃないのかよ。

 やれやれ、無用心だな。

 最下層で隠れていれば良いものを、飛んで火に入る夏の虫だぞ。


「捕縛」

『こんなもの……こん、な、もの……おのれ、何をした』

「すぐ戻って来るからじっとしてろ」


 やれやれ、ダンジョンマスターが動けないとかさ、コアの取り放題だよな。

 最下層に転移してコアを抜き取り、インベントリに入れてまた戻って来る。


「お疲れぇ」

『貴様、何をした。これは、これは』

「転送」


 さようなら~


 ダンジョンコアが抜かれた事で、もうマスターとしての力は行使出来ないからさ、自分の足でここに戻って来ないといけない訳だ。

 しかもシステムが止まっているから、今のあいつは普通の人間と同じく、死んでも蘇生はやれない事になる。

 その癖、人類の敵の立ち位置は変わらないので、うっかり神官とかに出会ったら指差して言われるぞ……『人類の敵』ってさ。

 マスタースキルが使えれば偽装とかも使えるが、隠す術がなくて人間並のステータスとか、殺してくださいと言っているのと同じだ。

 今頃は王都の神殿の中だろうから、周囲の神官達はさぞや賑やかだろうな。

 神聖騎士達の猛攻を潜り抜け、無事に戻れる事を祈っておいてやろうな。


 しかし、まさか逆に試練を出す羽目になるとはな。


 ~☆~★~☆


 結局、マグラスさんと合流になり、まともに向かって来ない魔物を排除しながら下の階層に進む。

 2人生贄の恩恵か、かなりのショートカットになったらしく、相当先で合流になった。

 再開を喜んでくれたマグラスさんだったが、何もくれなかったと答えたら不思議そうにされた。

 まあ、コアをもらったとか言う訳にもいかんしな。


「おい、ここに普通はコアがあるもんじゃないのか? 」

「おかしいですね」

「お前、まさか、ここで相対したのかよ」

「いーや、あの部屋だよ」

「お前なぁ、コアは値打ち物なんだからな、あるなら出せ」

「知らないよ」

「あのな、コアがあったらここの持ち主になれるんだからな」

「そんなに人類の敵になりたいの? 」

「あんなの言うだけさ。ここがアジトになればよ、王都にも近いから便利になるんだよ」


 この三文芝居、何時まで付き合わないといけないのかな。


「合流魔法・指定先・サクリアダンジョンマスター・対象・サブマスター・実行」


 マグラスさんの幻が消え、周囲の様相も変わり、眠っているマグラスさん達が見えてくる。

 23階層の次が最下層とかあり得ないだろ。

 そんな幻惑に嵌まると思ったかよ。

 盗られたコアを取り戻したかったのは分かるけどよ、やるならせめてもっと節目の階層にしろよな。


 折角なので近くのセーフティゾーンに風呂を構築し、沸かせて衝立で囲んでおく。

 そうしておもむろに料理を始めると、匂いのせいか起きてくる。


「お前、何時合流したんだ」

「ついさっき」

「それで、試練はクリアになったんだな」

「あいつ、戦う以前だったよ。オレ、何もしてないし」

「そんなに弱いのか、あいつは」

「オレは足を引っ掛けただけだよ。あいつ、ポーター募集なのにあんな重装備だし、自重があるから転んだらダメージででかいのな」

「はっはっは」

「しかし、大口を叩いた割りには情けないですね」

「全くだ。お、風呂か、ありがてぇ」

「もうすぐ料理も出来るからさ」

「やったね」

 

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