0082
何やらどっかで聞いた話のようだが、まさかシナリオってあんな話じゃないだろうな。
一年中春の島が世界の何処かにあったりしないよな。
そうしてあんまんが潰れたような……冗談じゃねぇぞ。
閃きも別に肯定しないようだし、ただの勘違いだろう。
現実に口が菱形とかキモいだけだしな。
それはともかく、研磨してオークションにはまだ時間が掛かるらしく、今年一杯は見てくれと言われた。
そう言う事なら追加は言えない事になるが、残りのダイヤ85個はともかく、他の宝石類の研磨はどうしようか。
当分倉庫に死蔵になりそうだし、どんな世界でも通用しそうな宝石の在庫は是非増やしたいところ。
つい調子に乗って11個もオークションに出す羽目になっちまったけど、そのうちまた研磨に出せば良いか。
あいつは元宝飾関連だけあって、宝石の研磨も得意としている。
他に信頼出来る工房があれば頼むんだが、食事になりそうな相手に頼んでも仕方が無い。
それは良いが、つい11個も預けたんだけど、不思議に思わない調整をする羽目になっちまった。
だって1個が15キロ前後の重さでそれが11個となれば、少なくとも150キロは軽く超えている。
そんなのをバッグに入れて運ぶとか、普通に考えたらありえない話だ。
頼むぞ、そのまま深く深く疑問は沈めて、そのうち雲散霧消してくれよ。
どうしてもダメなら担いでやるさ、150キロぐらい。
でもなぁ、あんまり人外な行動はやりたくないんだよ。
それにしても口座額が相変わらず酷い事になっているな。
もうすぐ1兆に届きそうな額じゃないかよ。
何とか減らしたいけど、減らすのはともかく、出金するのが大変なんだよな。
だからつい、貸付入金とか土地購入とか、電子上での取引に走ってしまう。
そしてその電子上の取引で面白そうなのを見つけた。
ゆずが大量ってなっているけど、化粧箱で138万箱ってこれどうなっている。
早急に取引したいとか書かれているけど、普通ならこんなに仕入れても捌けないだろ。
時間無効の倉庫でも持ってない限り……よし、買おう。
てかあれ? この波動は……おいおい、良いのかよ。
下に降りてはダメな規則とか言って無かったか、神様。
ゆずのバイヤーとか、何のつもりなんだろう。
《いやいや、内緒にしてくれるとありがたいよ……でも何で大量のゆず……ああ、ちょっと入手してね。早急に処分したいんだ……買います……くすくす、そう言ってくれると思ったよ。その代わり、色々とおまけも付けるからさ》
ゆずの箱138万箱に加え、ありとあらゆる雑貨から食料から、果ては武器弾薬までが大量に貸し倉庫の中に溢れている。
まるで誰かの倉庫の中身をぶちまけたみたいになっているけど、一体誰の倉庫なんだろうか。
それでも神様が言わないって事は、聞いてくれるなって事だから詮索は出来ない。
ゆずの箱1つ2000円の売価らしく、出来れば定価で買って欲しいと言われてしまう。
神様に下の世界の金とか使い道があるのかと思ったが、シナリオで使うと言われては仕方が無い。
神様なのに金ぐらい作れば良いと思ったけど、世界の市場経済に影響を出したくないんだそうだ。
27億6千万の代金と、あれやこれやも含めて100億で購入する事にした。
おまけと言ったけどおまけのほうが明らかに高価だし、それがたんまりあるとなればそれでも少ないぐらいだし。
《いや、悪いね。これでシナリオも楽に始められるよ……あれ、やってたんじゃ? ……1つがついこの前終わってね、しばらくして後にまた次のシナリオになる予定なんだけど、君に関連は基本的にしないから、気にしなくていいからさ……分かりました》
何とか全部倉庫に入れた後、ゆずの箱を1つ出して1個試しに食ってみる。
酢っぺぇぇ……
ううむ、やはりゆずはそのままでは食えないな。
そういやあいつら、ゆずを食ったりしないよな。
いくら柑橘系が好きでも、あれはまた別だろ。
翌日、学校で99個入りの箱を出してみる。
「これ、食うか」
「お、ゆずじゃねぇか。食って良いのか? 」
うわぁ、マジかよぅ。
「好きなだけ食え」
「おっし、補習の合間に食うぜ。酢っぱいから眠気覚ましになるんだよな」
そんな程度じゃ無いと思うけど、柑橘好きにはその凄まじい酸味も程良いのか?
理解したくもない味覚だな。
そもそも、カラアゲは塩だよな。
あれにゆずってのも少し変だと思っていたけど、あいつらが好きだからと大量に買ったゆず100%絞り汁。
そういやもうあの部屋は石田の部屋になっちまってるし、あの1升瓶、引き取ってもらおうかな。
オレだけだと何年保つか分からんぞ。
もっとも、今じゃあらかた倉庫に入れてあるが。
授業が終わって帰宅途中、またしても行き付けのスーパーで買い物だ。
さてさて、干ししいたけ、れんこん、ごぼう、ゆでたけのこ、にんじん、こんにゃく、絹さやを買いましょうか。
おっと鶏肉も買わないといけないが、もも肉で良かったはずだが……あれ、地鶏が安いのか。
これ、好きだから大量に作り置きするとしても、妙に安いな、この地鶏。
「おう、兄ちゃん、地鶏安いぞ」
「妙に安過ぎない? 何かあんじゃねぇの? 」
「いやなぁ、これなぁ、平飼いは間違いないんだが、他の表示が無いだろう。生産業者もはっきりしないんでな、大っぴらに売れなくてな。だからこうしてバーゲンにしてとっとと売り切りたいんだ。なあ、去年の今頃に牛肉をたんまり買ってくれたの兄ちゃんだろ? またまとめて買ってくれよ、サービスするからよ」
1年前なのに覚えられていたらしい。
さすがはプロだなと感心し、そう言う事ならまた買おうかと思えた。
当時は確かに大量に買いはしたけど、あれも結局はみんな食っちまったしな。
今じゃそこまでの食欲は出ないけど、地鶏大量ならそのうち、そうだなぁ……夏にバーベキューでもするか。
「よし、買った」
「おっ、で、どんだけだ」
「もちろん全部」
「おお、太っ腹だな、おい。よっしゃ、ならな、バックヤードのも全部で良いな」
「ああ、何トンでも構わんさ」
「はっはっはっ、そんなにあるかよ」
「担当、また来ました」
「何ッ、ちょっと待て。あれはもう止めろと言っただろ」
「それが、話が通じてなくて、止めたんですけど止まってなくて」
「まともに売れないから止めろとあれ程……」
「とにかく、追加の5トンを何とかしないと」
「何だと、5トンだと、くそぅぅ、大崎の奴、いい加減にしやがれよ」
何かが大量に入荷して困っているらしい。
まあ、何でも大量は倉庫ならではの特典だし、助けてやろうじゃないの。
「その5トン、買った」
「おいおい、良いのかよ」
「で、何の肉」
「だから地鶏の話さ。在庫の850キロだけでも弱っていたのに、追加で5トンとか無茶苦茶だ。これで表示がまともならそれなりに売れるってのに」
「いいよ、それなりで全部買うから。ちょっと裏行こうか」
「あ、ああ」
髪を上げればそのままコウで取引になる。
軽い暗示と裏の名刺でその気になり、取引は速やかに完了する。
後はまたしても暗示で配送した事にして倉庫に全て入れておく。
5850キロの国産地鶏、平飼い他表示無しは全てせしめた。
口座の額からしたら知れた額だし、行きつけのスーパーが潰れては困るからな。
仕入れ業者の意趣のようだったが、クリアしたからもう安心らしい。
念の為に探偵に連絡して裏事情を探らせて、可能なら警告を発して欲しいと頼んでおく。
(コウの絡みの店とか、誰が手を出すんだ。まあ、軽い警告で止まるだろう)
色々な部位があるから、煮付けとか焼き鳥とか色々やれそうだな。
雑貨コーナーの串を買い占めて、ついでにバックの在庫も買い占める。
筑前煮の予定だったのに、とんだ飛び入りだ。
家に帰って一口サイズに肉を切るんだけど、物凄い数なのでまずは内臓から開始する。
砂肝は甘めに煮付けて皮は塩焼きにするのと、皮付きの肉はそのままザックリと切って調理する。
その他の部位は5つずつ串に刺していく。
朝までひたすらやっても終わらなかったので、今日も帰って続きをやる予定。
気付けば夕食も食わずにそのままだったが、今じゃメシは嗜好品になりつつあるからつい忘れるんだよな。
主食を飲んだ後、片付けをして学校に行く。
「あれ、中間だっけ」
「君、暢気だね」
「まあ、テストとかどうでも良いし」
「もしかして、余裕なのかい」
「まあね」
「それではお手並み拝見だね」
ライバル宣言かな?
それこそどうでも良い話だ。
もう獲得点数の調整が面倒なので、分かる範囲は全て書いておく。
てか、全部分かったから全部書いたんだけど。
これはさ、ちょっとした意趣返しになる。
つまりさ、単位不足で留年したけど、テストの点は問題無いんだって話さ。
それぐらいやっておかないと、寄付だけじゃ拙そうな閃きを得てさ、少し高い目の平均点にしないといけなさそうに思えてさ、どうせだから調整をしないで全て解いただけの話。
そもそも寄付はしたものの、進級特典を受けずに素直に留年したんだし、あくまでも友人達への支援って立ち位置だ。
だからテストの点云々は関係無いはずで、そこを突かれても問題無いんだけど、進級していてもやれていたって思わせるのが目的になる。
つまりさ、あえて特典は受けずに留年したけど、進級も可能な成績なのにわざと受けなかったと思わせる訳だ。
利己の為の寄付でのごり押し疑惑はそいつで消えるはずだし、そうなればそこまでの追求はやれないだろう。
妙な閃きを感じての今回のテストだけど、高得点は色々周囲が騒がしくなるから本当は嫌なんだよな。




