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自由奔放な猫の如く  作者: 黒田明人
3.召喚の顛末
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 そんなこんなで時は過ぎ、それぞれの魔法は熟練へと誘われていく。

 それぞれは知恵を振り絞って既存の空想系の魔法の中から、効率的な魔法を想像して応用している。

 土魔法のニードル系や風魔法のカッター系にその回答を見出す者。

 火魔法の凝縮に挑み、小さな炎ながら熱量の増大を見込んで発動させる者。

 氷魔法のニードル系に挑む者や、光魔法の極細レーザーに挑戦する者。


 それぞれがそれぞれの発想に基づき、自分の得意魔法にするべく努力を続けていた。

 山奥の廃村の結界魔法の効果内では今、それらの魔法が行使されている。

 崩れかけた家屋や案山子を目指し、様々な魔法もどきが行使され、それなりのダメージを与えている。


 彼らが魔法にも慣れ、それぞれに得意魔法も出来た頃、ちょっと魔物召喚を試してみる事にした。

 何匹か倒せばレベルアップするだろうからと、とりあえずLV.2を体験させようと思ったのだ。

 かつて行った事のある世界から魔物を召喚し、動けないようにして全員でなぶり殺そうという計画だ。


「さて、朝食を抜いた理由だが、今日はお前達に殺しを体験させる」

「えぇぇぇぇぇ」

「ちょっと待ってくれよ」

「それは、さすがにヤバくないですか? 」

「もちろん、犯罪じゃないから心配するな」

「えっ、それって、どういう……」


【転移系召喚魔法・対象・オーク・確定・誘致・拘束】


「うおおお、何だあれ」

「わお、ネトゲでよく見るオークだわ」

「すげぇぇぇ」

「相手はこの世界に存在しないモンスターだ。だから殺しても罪にはならん。さあ、自分達の魔法で攻撃しろ」

「「「おおおおっ」」」


 実は勇者召喚にMP300万ってのが標準になってはいるが、あれは上納が酷い代物だったんだ。

 つまり世界の管理者……俗に言う神様への貢物と言うか、手数料と言うべきか。

 すなわち、世界を隔てた対象を確定し、それを世界の壁を越えて呼び出す技能などそうそう得られない。

 となると神様がその行使を代行する事になるんだが、その手間賃とも言うべき代物が大半を占めていた。

 その見返りと言うか、設定になるのかも知れないが、恩恵を授けるのも上納あればこそになるらしい。


 実際、オレがこの技能を確立した際、必要MPは3万であった。


 確かに他の次元から呼び出すとなると、その数十倍は必要になりはするが、同じ次元中の他の世界からの誘致だとそれぐらいだった。

 問題は世界の特定と世界内の存在の特定、隔てた世界とこの世界を繋ぐルートの確立と、対象の保全だ。

 すなわち、他の世界がある事を知る者が、行った事のある世界限定で、その世界の中で見た事のある対象と同じような存在限定。


 これが前提条件になる。


 つまり知らない世界の知らない対象は呼び出せないという訳で、対象に対する情報が必須になる。

 だから巫女がいくら魔法を唱えても、勇者など召喚は無理なのだ。

 巫女は概念的に他の世界の事を知っていても、実際に行った事は無い。

 更に言うなら現地の存在の特定などもやれないし、世界を繋ぐルートの確立もやれない。

 他の世界をサーチするスキルはあるが、その他の世界の存在を知らなければ、そもそもサーチが効かない。

 もっと言うなら、世界の構造を知らなければ、世界と世界の道筋の繋ぎ方など分からない。

 それら、世界の中の存在では知りようのない事柄に対し、神様が手助けする見返りにMPを要求されるのだ。


 実際、巫女がやっているのは神様へのお願いのようなものであり、スキルの行使は神様がやっているのと同じだ。

 だからあらかたスキル行使料として神様に支払われているようなものであり、だからこその300万になるのだ。

 オレはかつて召喚された事もあり、VRなゲームの振りをした異世界の体験が何度かある。

 その異世界ではそれぞれ、あらゆる魔物を殺してきた。

 つまり、情報はたっぷりある訳で、後は必要な世界から対象をこっそり掠め取るだけだ。

 とは言うものの、神様からしてみれば世界の存在など、塵芥にも等しい。

 ただこの世界の神様は他の者とは違ってやたら情が深いだけなのだ。


 奇特な神様だよな。


 だがその奇特さによって生存しているオレにとっては、恩人にも等しき存在だが。

 ともあれ、自力発動でやる場合は、その必要魔力は相当に少なく、かつて数万だった必要魔力も効率化の果てに相当減った。

 今では本人転移に3000であり、同行人ならば1人当たり1000もあれば余裕だろう。

 つまり、世界と世界を結ぶのにMP2000消費して、転移自体はMP1000でやれるって事になる。

 てな訳で世界と世界を繋ぐルートを確立させておけば、最初こそMP3000必要でも次からはMP1000で呼べるって事になる。

 実際は世界探査でいくらか使うからもう少し多くなるが、それでも今のオレの魔力量からすれば知れた量に過ぎない。


 彼らはおっかなびっくりでオークに魔法を行使し、叫び声に気分が悪くなっている様子。

 まだ最初だからだろうけど、そのうち平然と殺せるようにならないとな。

 庭の片隅に土魔法の【ピット】で深い穴を掘り、スライムを召喚して入れておく。

 瀕死になったオークに対し、自前の剣で止めを刺し、拘束を解いて穴に蹴落とす。


「どうだ、感想は」

「あっさり殺すんだな」

「可哀想だった」

「殺したくないならやらなくても良いぞ」

「でも、殺さないと経験値にならないんだよね」

「オレはまだやれるぜ」

「なら、お前。細剣で刺し殺せるか」

「うっ」

「とにかく慣れろ。もし万が一にでも召喚に巻き込まれて、現地で殺せないと殺されるぞ」

「そっか。今は動けないようにしてくれているけど、本当は襲ってくるんだよな」

「ああ、その時になって焦っても遅い。殺して気分が悪くなっていたりしたら、他のモンスターの餌になるだけだ」

「やるよ、僕」

「ああ、オレもやるぜ」


【ネクストモンスター・コール・バインド】


 うん、道筋があると消費が少なくてありがたいな。

 オークの集落も発見してあるから、次のモンスターも呼びやすい。

 おっと、魔法組とは別に、直接攻撃用にも呼ぶか。


【ネクストモンスター・コール・バインド】


「よーし、死ねぇぇぇぇ……うっ、ぐぇぇぇぇ」

「思い切りは良かったが、後は慣れだな」

「うっ、ああ、ううううっ」


 ~~☆


 最初は死屍累々だった面々も、ひたすら戦わせると慣れてくるようだ。

 元々、VRゲームで戦いに慣れている年頃なので、後はリアルさに慣れるだけだったと言うのもあるのだろう。

 剣で命を奪う行為も、ゲームだと思い込むようにして慣れていき、しまいにはリアルと認識しても殺せるようになった。


 人間慣れである。


 今ではオークを誘致すれば周囲からグサグサと剣が刺さり、断末魔を聞いても当たり前に止めを刺すようになる。

 そのうち拘束を止めたが、動く相手にも冷静に対処するようになった。

 やはりゲームでの経験がかなり効いていると思われた。

 そうしていよいよ本番の始まりである。

 皆のレベルは2桁に上がり、身体能力も魔力も当初とは比べ物にならない。

 オレは知らなかったんだが、実はこのステータス適用には最初にマナが必要らしいのだ。

 だから巷の殺人鬼はいくら人を殺しても、経験値も入らずレベルも上がらないのだと神様に聞かされた。

 言われてみれば、こっちで18人殺して召喚された時、確かにオレのレベルは1だったしな。


 8月下旬、いよいよ満を持して苛めっ子達に死の招待状を送る。

 それぞれのターゲットに場所をメールで送らせた。

 飲み放題、食べ放題、宿泊無料っていう、招待ツアーの詳細である。

 8月20日から27日まで、8人それぞれ1日違いでの招待。

 そして事が終われば28日から31日まで、絶海の孤島でのバカンスが待っている。

 もちろん、最終日の夜、各自を家の近くまで転移で送る事になっているが。

 

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