0064
コウと愉快な仲間たち?
「ある~ひ~もりのなか~」
「てめぇ、用意周到にやりやがったな」
「あの瞬間に転移を混ぜるか、中々の腕だな」
「どこの森だここ」
「さて、これからどうする」
「あの、沢田君」
「あ、こいつを忘れていたな」
「おいおい、猫を剥げ」
「何だと……ああああ、てめぇは」
「くそ、七変化のミヤビじゃねぇか。まだ居たのかよ」
「オタクな二つ名、クククッ」
「ああもう、バラさないでよね」
「てめぇ、連絡員で帰ったはずだろ」
「彼の調査の追加依頼だったんだけど、かなりの研鑽のようだし、それが原因かな? 」
「何の話だ」
「ああ、天ちゃんのスキルがよく効かなかった話さ」
「お前、あの管理に相当鍛えられたようだな」
「仕事に役立つ便利なスキルってのは少し教わったがな」
「軽く見せてかなりきつい修練だった可能性が高いな」
「自覚の無いままに熟練か、上級のやりそうな事だ」
とりあえず最寄の町に転移し、そこから大きな街まで馬車で移動する事になった。
確かに転移を使えば早いが、そういうのも面白くないと、旅を楽しんでみようという事になったのだ。
たまたま倉庫の中の金が使えたのでそれぞれにいくらかずつ渡し、そうして揃って身分証明となる冒険者登録をし、それぞれはそれぞれの名前で登録した。
ちなみにオレはコウで、それぞれはあのゲームでの名を参考に、ガンマ、クゥマ、シンマという、最後に『マ』が付くお揃いの名にしていたので、後々は三兄弟って役柄も使えそうだ。
そしてミヤビはそのままミヤビに決まった。
そうしてのんびりとした旅が始まり、折角だからと聖石と水晶玉に補充をしながら、オレは表層とは別に深層で色々と物思いにふける事になる。
思えば僅か16年で頓挫した転生体験だが、確か以前の人生でも同じぐらいの年齢で勇者召喚になったような。
全く、何かの因縁かよって思うぐらいだけど、まだ2回目だし偶然って事にしといてやるよ。
それにしても彼らだけど、妙に浅いスキルのようなのが気になる。
浅い割りに妙に自信があるようで、オレをかなり下に見ているような感じなんだよな。
確かにあの世界で産まれて150年ぐらいだが、出向期間がかなり長くてその10倍は軽く他の世界で過ごしていた。
それでも僅か2千年弱の若輩者……神様は数万年とか言ってたし、間違いないところだろう。
そんなオレでは計り知れないぐらいの力量があって、それを巧く隠しているだけなのかも知れないけど。
確かにオレは大したスキルは持ってはいない。
そりゃ魔法はかなり研鑽したけど、上に通じるスキルとかは知れている。
だからと神様は上に通じるスキルのヒントやコツを教えてくれて、出向先で研鑽して身に付けていったんだ。
そりゃ本当は詳しく教えたいと言ってくれたけど、残念ながら大っぴらに教えるのは禁止されているらしく、さりげないヒントに留まった。
ただ、どうしても行き詰った時に通信でお願いしたら、コツのようなものを話の合間に軽く混ぜてくれたりしたけどな。
だけど神様は貴重な技能とは言わず、あくまでもあると便利な技術とか、あったほうがお得な技能って言って教えてくれたんだ。
だから鍛えられたと言うよりも、ヒントを基にして開発したって気分だし、だから神様も少しましになったねって言ったけどそんなに凄い事のようには言わなかったんだ。
そういうのを何度かやっているうちに、引越しの話になっただけだからやっぱりオレって、上では大した事の無い実力なんだろうと思う。
ああ、こうしていると色々と思い出すんだけど、やっぱり印象に残っているのはあの頃の事だな。
悪評高き出向員か、そう言われてから後継者の育成に尽力したっけ……
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オレはそんなつもりは無かったんだけど、どうにも悪評が酷いと言われちまって。
確かに自由気ままに過ごしてはいたんだが、別に禁止された訳じゃ無い。
好きにしろと言われて好きにした結果、それが酷いと言われてもな。
そうなると新人って事になるんだろうけど、何も知らない奴をいきなりってのは惨いと思ってさ、神様とも相談した結果、予備知識まではいかなくても、少し手助けをしようって事になったんだ。
21世紀の終わりの世界は、VRゲームが当たり前に存在していたが、それが本物かどうかなんて誰にも知りようがない。
世界中のVRゲームは、ある社の技術で独占されていて、他社ではその技術を使う事しか出来なかったのだ。
そう、誰もVRを実現出来ず、絵空事として捉えられていた。
だがある時から当たり前の技術として受け入れるようになっていたけど、やはり他社では構築出来ない技術だったんだ。
まあそうだよな。
全く違う試みでの同じような現象の再現に過ぎなかったのがあの世界のVR技術。
そんなもの、他の会社がやれる訳がない。
異世界との通路を霊的に拵えて、異世界存在への憑依方式での精神体で参加のあの方式とかさ、アナザーワールドリアリティって言うべきだろ。
God Makes World 社とか、あからさま過ぎる社名でそれっぽくやっていたけど、実情はそんなものだったんだよな。
なあ、神様。




