表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自由奔放な猫の如く  作者: 黒田明人
2.放置の対策
54/476

0054

引き続きやっちゃいます……

 

 暦の上では一番寒いと言われている日。


 それを過ぎてもまだまだ寒い日が続く中、同じ階の住人達から義理チョコを貰ったオレは、ちょっと気分が浮ついて登校する。

 オレが16才になる1週間前に、これのお返しをする事になるだろう。

 それにしても、最近の義理チョコは妙に立派と言うか、たくさん入っていると言うか。


 うん、甘くて美味い。


「ああ、お前、誰からだよ」

「あ? 義理だよ、義理」

「そんなでかい箱で義理とか無いだろ」

「そうなのか? 今までもらった事無いから分からん」

「あれ、沢田君が、嘘、誰からよ」

「義理だ」

「そんな大きな箱で? 嘘でしょ」

「ほれ、見ろ」

「そうなのか」

「おい、虹原、よく見ていろよ」

「何よ」

「そらっ」

「え、嘘」

「だから髪を上げるなと言ってるだろ」

「ねぇねぇ、彼女居ないんでしょ、アタシどう? 」

「そういうのをな、変わり身が早いって言うんだ。今まで散々無視しておいて、そんなのに応じるはずが無いだろ」

「あああ、知らなかったわぁぁ」

「どうしたの? 恵子、沢田が苛めたの? キモイんだから、アタシらに話掛けないでよ。ほら、行くわよ」

「そうじゃないの、そうじゃないのよ」

「まだあるが、お前らも食うか? 」

「マイペースだな、お前。けどよ、これ、どれもこれも義理じゃねぇぞ」

「引越しスイーツのお礼だろ」

「種を蒔いて収穫したって感じだな」

「あいつらとは寝てねぇぞ」

「そういう意味じゃねぇよ」


 授業中もこっそり食ってると、何故か先生にバレちまった。

 けどよ、チョコとか殆ど初めて食う代物だしよ。

 そういや昔には駄菓子にもあったけど、あれって紛い物と言うのか、これとは全然違うと言うか。

 てかオレ、嗜好品の類、殆ど買った覚えがねぇな。

 ああ、灘の銘酒は買ったけど、あれも嗜好品と言えば嗜好品の類か。


「お前がチョコとか珍しいな」

「いや、初めてなんで」

「おお、それはめでたいな。だが、授業中は禁止だ」

「え、沢田君が? 誰よ、そんな事をしたのは」

「えーーー、誰よ誰よ」

「こらこら、騒がしいぞ」


 昼休みになり、普段はシカトの女達なのに、今日は実に喧しい。

 誰からもらったのとか、誰が渡したのとか、どうでも良い事をウジャウジャと。

 返事をせずにモグモグ食ってたら、詰問が激しくなる。


「教えなさいよ」

「店で買った」

「あはは、そんな事じゃないかと思ったわ。キモい奴」


 やれやれ、そんなどうでもいい事に騒いでご苦労様だな。

 お、これは酒が入っているのか……うん、美味いな。


「ねぇ、沢田君、これ」

「何? 義理チョコ? 」

「う、うん」

「まあ良いけど」

「ありがとうぐらい言いなさいよ」

「くれと言った訳じゃないのにか? 」

「だからキモイって言われるのよ。加奈子も何でこんな奴に」

「良いの」


 何て苗字だったかな……ええと、ええと、いかん、思い出せん。

 後で聞いてみるか……お、これも美味いな。


「おい、石田にもらったのか」

「ああ、石田か」

「名前も覚えてねぇのかよ」

「何でシカトする奴を覚える必要がある」

「まあな、今回の件についてはオレのせいだしな」

「オレが買ったと言えばあっさり信じるその心は」

「あり得ないと思うからそっちに流れるってか」

「そう言う事だ。しかし、チョコってのも美味いな」

「やっぱり寄こせ」

「ほい」

「でけぇな。やっぱりこれ、本命だろ」

「手紙とか無かったぞ」

「まあ、それならそうかも知れんがよ、お、美味いな」

「酒が良いよな」

「ああ、高級酒だ、これ」

「高いマンション住まいだから金はあるんだろ」

「ああ、そう言う事か」

「何、沢田君、マンション住まいなの? 」

「おお、こいつな。独り暮らしだぞ」

「え、家はどうしたのよ」

「勘当食らった」

「あはは、何よそれ、ダサい奴」

「さっきから煩いぞ、女」

「何よ、文句があるって言うの? 」

「あるから言うんだろうが、頭大丈夫か? 」

「沢田の癖に生意気なんだから、見てらっしゃい」

「何があるんだろうな」

「ああ、あいつな、ちょっとヤバい筋と関係があるらしくてな」

「どの程度かな。オレよりヤバい筋なら大概だが」

「いやいや、それは無いだろ、さすがによ」

「だろうな。あいつまだみたいだし」

「何がまだなんだ」

「手が汚れるやつ」

「そんなの当たり前だろ」

「汚れた」

「嘘だろ」

「あれ、どんな奴だったかな。確か男だったとは思うんだが、顔は忘れたな」

「本気で本気なのかよ」

「おい、何の話をしている? 」

「1万ドルがゴミになった話」

「何じゃそりゃ。ああ、お前、帰りに校舎裏な」

「部活があるからパス」

「強制に決まってるだろ。逃げるなよ」

「そっちは何人だ」

「何がだよ」

「お前らは何人かと聞いてんだ」

「ああ、えーと、6人だ。とにかく逃げるなよ」

「まあ、何とかなるだろ」


 6人か……確かに閃きのままにセラミックククリナイフを懐に呑んではいるが、殺れってか、閃きさんよ。

 てか、閃いたって事は、生命の危機での反撃になる可能性があるな。

 どうすっかなぁ……いくら殺人童貞捨てたと言ってもまだ1人だしな。


「何が何とかなるんだ」

「場所によってはどっかに誘導する必要があるとして、問題は後の始末だよな。よし、伝手に連絡入れておくか」

「お前、そっちの計画かよ」

「オレはな、義務教育で思い知ったのさ。手を出すなら存在ごと消えてもらったほうが早いってよ。だけどその方面では童貞だったから踏ん切りが付かなくてな。けど、つい先日、捨てる羽目になったまったせいか、すっかり制限が外れたと言うか」

「その方面って、他の方面は終わってんのか? おい、何時捨てた」

「世の中には奇特な奴が居てな、ヤれもしないガキがお好みって女が居るんだよ。いやぁ、金の無い時期は助かったぜ」

「ショタエンコーかよ」

「んでまぁ、ヤれるようになっても女に慣れている訳だろ? 後々の糧になるのと、ハニトラ対策も込めてとっとと捨てたぞ」

「確かに飢えてどうのこうのってぐらい酷いなら、それも選択肢に入るんだろうが、よく思い切ったな」

「使えるものは何でも使わんとな。恥やミエなんかじゃ腹は太らん。そんなのはまず食えてからの話だぜ」

「ホント、この時代にハングリーやってたんだな、お前って」

「さてと」

「ああそうそう、それで後はどうすんだ」

「だから伝手に連絡を入れるんだよ。処理屋ぐらいは知ってるはずだし」

「やれやれ、あいつらもバカだよな。コウに手出しとか」

「お前も知っているんだな。表の学生の振りして、裏では何やってやがる」

「それはてめぇだろ。オレは親父の関連で知っているだけだ」


【ピポパ……あー、コウだけど、ボス呼んで……どうした、コウさん……ああ、先日はどうも……あれ、終わったぞ……仕事が早いね……まあな、それで、今日はその関連か……ああ、それとは別なんだけど、オレさ、もう少ししたらヤキを入れるって息巻いている奴らが居るんだよ……誰だ、そいつは……表の粋がったガキなんだが、今は表だからうっかり手も出せなくてよ。悪いんだけど人を寄こしてくれないかな……場所は何処だ……西原高校……よし、うちの手を送る……ごめんね、さすがにアレをそうそうやる訳にもいかなくてな……本部の奴が褒めてたぞ……プロは勘弁してくれ……くくくっ、まあいい。とにかく送るからな……頼みます、では】


「処理の電話にしては長かったな」

「プロに助っ人を願った。ほら、オレ、か弱いから」

「何処がだよ、くっくっくっ」


 これでも閃きがクリアにならないって、どうなっているんだよ。

 とりあえず、伝家の宝刀のスイッチを入れて行ってみるか。

 状況次第では立件になるかも知れないし、証拠の録音は必須だよな。

 しかし、防弾、防刃のベストに閃いて着て来たのは良いが、ちょいと重いんだよな、こいつはよ。

 雑貨屋で買え買えと煩いから5着を2億で買ってやった代物だけど、長時間は肩にくるぞ。

 どんな事が待っているのかは知らんが、とっとと終わらせて脱ぎたいぜ。

 授業が終わって部活に行こうと思ったが、教室の出口で待つとかご苦労な事だ。


「おら、逃げんなと言ったろ」

「部活があると言っただろ」

「良いから来いって言ってんだ」

「終わってからにしてくれよな、せめて」

「良いから来いっ」


 やれやれ、人の都合を聞かない奴だな。

 ああ、殺りてぇな、こいつ。

 う、いかん、オレ、今、どんな思考をした?

 ヤバいぞ、たった1回でこんな思考とか、それこそ枷が外れたみたいに。


「おらおら、こっちだぜ」

「どうしてもか」

「今更だな」

「お前か、最近生意気って奴は」

「覚悟はあるんだな」

「ケッ、確かに生意気だぜ」

「返事をしてくれ。覚悟があるのか無いのか、どっちなんだ」

「ふん、あるに決まってるだろ」

「そうか」


 確かに6人、応援は無しか。

 校舎裏と言っても旧校舎裏。

 周囲に人影も無ければ家も無し。

 障害は無いようだし……


「おらおら、覚悟がどうした」


 始めようか、ナイフの舞を。


 見取り稽古で覚えた動きのままに、速やかに命を消していく。

 やはり使う事になったか、セラミックククリナイフ。

 それにしても静かだな……全く動揺も無く、身体は最善の動きで速やかに急所を抉っていく。

 命は消えるのに、特に殺しているという意識はなく、まるで伐採でもしているような、そんな感覚。

 だから殺意なんかも無いままに……血溜りの中に倒れ伏す6つの物体。

 ああ、もう終わっちまったとは、ちょっと物足りないな。


 いかんいかん、何だこの思考は。


 てか、これはヤバいだろ。

 こいつらの服でとりあえすナイフは拭いてと。

 しかし、返り血無しか、実にスムーズに動いたな。

 やはり人影は無しと。

 しかし、ヤバい思考だな。

 まるでスイッチが入ったかのように、あんな思考になるとはな。

 そういやこれ、以前、VR戦争ゲームのチュートリアルの時とおんなじだ。


 キルスイッチとか、何処の殺し屋だよ。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ