0052
やっと入れたな。
本当なら以前に入れていたのに、変な奴が邪魔しやがって。
けど、ギルド何ちゃらって大会、間に合うのかな。
「ギルド何とかって大会、どうなったんだ」
「ギルド対抗戦だ。んで、そいつはもうじきだが、お前のあの弓ならいけるって」
「そうなのか? 」
「始まりの平原のエリアボスのワンキルとかよ、レベル20クラスの暗殺者のクリティカルブロウって必殺技でギリって話だぞ」
「それって凄いのか」
「盗賊の派生の殺し屋の派生の上級職の、MPを全部使う必殺技だぞ」
「やけに派手だな」
「βはテストだから経験値10倍になっていたが、それで終了間際に何とか到達した奴が居てな、HPバーがミリ残ったって噂になっていたぐらいだ。もう少しMPが多かったらワンキルやれてたってよ」
「復活の珠って高いのか? 」
「当たり前だろって、それが報酬かよ」
「ああ、ワンキル報酬で5個くれたぞ」
「マジかよ。5個とか大騒ぎになるぞ。そいつ、掲示板に載せても良いか? 」
「匿名希望」
「当然だろ。よし、ちょいとこれで」
「単独撃破報酬は良いのか」
「エクストラポーション10個だろ」
「詰め合わせだったぞ。エクストラのHPとMP各10本とハイポーションの両方でこれまた各10本」
「何でそんなに多いんだよ。まさかレベルが関係してんのか」
「レベル1だったからかも」
「有り得る話だな。よし、それも書いておくぞ」
「あいよ」
そうこうしているうちにあいつらが到着し、共に特別承認設定をしておく。
フリーパスだと言ったらびっくりしてたけど、もうじき来るはずだ。
「何か楽な方法だな」
「けど、良いのか? 」
「後の共同生活なら必須だろ」
「ああ、確かにな。それは良いが、506号室、売り部屋になっているな」
「うっく」
「くっくっくっ、女が減っちまったな」
「別にコナかけてねぇぞ」
「時々は髪、上げてんだろ」
「何でそれを」
「くっくっくっ、やっぱりな」
「挨拶回りの時だけだぞ」
「それで会話が弾んだんだな。初対面でおかしいと思ったんだ。女とか警戒心強いのに、いきなりとか有り得ないと思ってたんだ」
「それはスイーツのせいだろ。女は甘い物が好きだから」
「そこらのおっさんならそもそも受け取らねぇぞ」
「オレは単に清潔感を出す為に髪を上げてただけだ」
「学校でも上げてろよ」
「目立つのは嫌いだと言ってるだろ。学校ではモブで良いんだよ」
「あ、そうそう、うちの親父が会いたいって言ってるんだが、どうかな」
「何の話だろ」
「リバースの件だけどよ、ここだけの話な」
「ああ、それで? 」
「裏のバイヤーやっててな、かなり手広いんだけど、裏のバイトとか冗談じゃないけど、お前は見所がありそうだからと言ってな」
「やると言え」
「オレは嫌だぞ」
「良いから言え」
「お前までそんな事を言うのかよ」
「ブツはミカンだ」
「おいおい、何の話だよ」
「仕方が無いな、お前の親父に電話して、コウと馴染みになったと言ってみな」
「コウってな、お前のアバター名だろ」
「ほれほれ」
「あ、ああ…………あ、もしもし、親父?……」
506号室、売りになっているなら買おうかな。
何とか住めると言っても4人で住むにはちょっと余裕が無いと言うか、まあ別に狭くは無いけどな。
それであいつらをあそこに住まわせたら、メシの時だけオレが作れば特に問題は無いと思うが。
まあ、別に炊事洗濯掃除がきつい訳でもなし。
てかさ、あそこを商売の本拠地として登録も可能になるよな。
んで、抵当権に設定すれば良いんだし。
顧問に後で相談してみるか。
(何だと、コウだと……親父、知っているのか……何処で知り合った……ちょっとした事でだけどよ……繋ぎ付けられるか……どうしたんだよ、そんなに凄い奴なのか……最近、売出し中の奴だが、持ち出しの資金がとんでもなくてな、事業資金回してくれるならうちもかなり助かるんだが……そんなに金があるのかよ……で、どうなんだ……聞いてはみるよ……繋いでくれるならうちのバイトの話は忘れていいし、好きなバイトも構わん)
「知ってたか」
「お前、どんだけ派手にやってんだよ」
「まあ、裏でコウを知らない奴はモグリだな」
「そこまで言うのかよ」
「冗談だ。オレはまだ駆け出しに過ぎんよ。で、何だって」
「事業資金を回して欲しいらしいな」
「なら、交換条件だ。お前らの事業の後見付きなら、いくらでも回すと伝えてくれ」
「そんなにあるのかよ」
「冷たい親に知られたら、盗られると思って必死に隠したさ。だから悪かったな、当時は使えない金だったんだけど、無かった訳じゃないんだ」
「使えないなら無いのと同じだろ」
「命の保全には使ったぞ。しかし、それ以上は使えなくてな」
「済まんな、思い出させてしまったか」
「じゃあお互い様で」
「ああ。それで、どれだけ回せるんだ」
「お前らがミカンのブローカーをやるにあたり、必要と思われる額の10倍だ。だから親父を助けたいなら手広くやる事だな」
「その辺り、話しておくから一度家に来てくれよ」
「ふむ、明日にでも行くか。迎えに来てくれ」
「今からはダメか。今日は泊まる訳にいかなくてよ」
「ちょっと待ってろ。ああ、お前らは好きに遊んでいて良いぞ」
「泊まりも良いのか」
「オレもオレも」
「電話して許可をもらえ。んでな、腹が減ったら残り物の水炊きがレンジにある。かなり余ってるから好きに食え」
「やったぜ」
「いただき」
やれやれ、結局こうなるのか。
1人だけじゃ無くならないと思ったら、3人来るから無くなるって閃きか。
明日の朝に雑炊にでもしようと思ったけど、この分じゃ無くなりそうだな。
しかし、この格好で動くとなると、つい裏の心境になっちまうな。
整髪剤付けて髪を後ろに撫で付けて、スーツ姿で完成と。
「お待たせ」
「うおおおお」
「お前、それで学校に行ってみろよ。逆に気付かれないぞ」
「悪いがこれは裏の顔なんでな、表に出すつもりはねぇさ。さて、行こうか」
「本当に派手にやっているんだな」
石崎の家はかなり近く、ちょっとした豪邸のような佇まい。
スーパーの裏手のお屋敷、誰の家かと思えば石崎だったとは。
いやはや、他人のプライベイトには踏み込まないスタンスが、友人の家すら知らなかったって事になるとはな。
石崎の案内のままに屋敷に入り、応接室に連れて行かれてしばらく待っていると。
「夜分お邪魔します、コウです」
「おお、これはわざわざ、申し訳無いですな」
「実はですね、お宅の息子さんが事業をする事になりまして、そこへの資金提供の話をしていたのですよ」
「翔太、お前、そんな事をやろうとしてたのか」
「だからバイトはやれないんだ」
「そうかそうか」
「それでですね、彼の事業資金の10倍までなら都合付けましょう」
「本当ですか」
「その代わり、彼の後見、やってくれますよね」
「はい、もちろんですとも」
「ふむ、彼には20億、貴方には200億、これでどうですか」
「そんなにとはありがたい」
「後はうちの顧問と話を詰めてくれますか。こちらになります」
「あ、はい、分かりました」
「では翔太君、事業頑張り給え」
「ありがとうございます、コウさん」
「では失礼するよ」
「本当にありがとうございます」
ふうっ、やれやれ。
しかしあいつもノるな、クククッ。
ありがとうございます、コウさんって、クククッ。
残金いくらかな……えっと……イチ、ニィ、サン、シィ、また増えてんな。
ああ、14桁出したんだっけ。
その後も何度か出して、みんなちゃんと2割入れてくれているらしいな。
後は櫻木さんもバッチリのようだし。
あれ、何のメールだ。
金色姫螺鈿?
それって以前落札した品だよな。
閃きのままに、確か20億だったと……うえっ、重文?
盗品なのかよ、あれ。
ああ、違う違う、家族に売られたのか。
申請済みの重文を息子に勝手に処分されてとか、保管をきちんとしろよな。
25億で引き取る? 高坂の奴、舐めてんのか。
よし、売りで出しておくか。
売)金色姫螺鈿 500億 コウ
最初は吹っかけ、そして下げて行くと。
さてさて、どれぐらいで妥協するかな。
まあ、100億なら勘弁してやるか。
【そちらコウ殿であられるか……おい、そんな言葉遣い止めろ……姫螺鈿の事なのだが……500億だ……申し訳無いがの、もう少し何とかならぬかの……480でどうだ……もう一声欲しいの……450では?……400億は無理かの……構わんよ……そうか、ありがたい。認定されて物が無いなどと、進退に関わるでの……代理人経由で良いな……どちらの代理人かな……山辺の雑貨屋のあるじだ……ああ、裏競売の……明日にでも渡しておく……ほんに申し訳無いですの……ではな】
やけに高くないか?
値切りは当然として、400億? おかしな閃きを感じるぞ。
櫻木さんに2割でケツ持ってもらうか。
事によると裏事情を知っているかも知れんし。
【ああ、あの件な……落札20億で400億だ……大儲けとして嬉々として取引に応じて消されるケースだな……やはりな。で、2割で良いか……3割は欲しいが、うちの金主さんだから構わんよ……悪いな、また稼いだら追加を入れる……ありがたい……山辺経由だ、ケツを頼む……分かった】
(あの若さで嗅覚がとんでもねぇな。普通なら引っ掛かるぞ。しかし濡れ手で粟の80億か、悪くない。悪くないが、弱ったな。あいつらが潰れたらうちの貸金もヤバくなるんだよな。全く……うちの金主に手を出そうなんて太ぇ奴らだぜ。親戚じゃなかったら始末を依頼するところだ。となると、知恵を付けた奴に直接かますか。あいつらには悪いが、こっちにはコウのほうが大事なんだ、悪いな)




