0051
校正
あれ、オレ、道端で何寝てんの?
いかんな、疲れているのかな。
おっと、とっとと帰って夕食作らないと。
こんな所で寝ていたら風邪引いちまう。
おお、寒。
うへぇ、帰ったら先に風呂だな、こりゃ。
しっかし、良い物が手に入ったな。
毎回、デザートはこれで決まりだな。
あいつら揃ってミカン好きだし、明日、学校に持って行ってやろう。
んで、家に送ったって言ってやれば、クククッ。
あれもありがたかったよな。
4天王の集まりでは毎回、ミカンを誰かは持って来てたからな。
オレのビタミン補給はあいつらのミカンが頼りみたいになっていて、だからそのお返しでもあるんだぜ。
やたら甘いミカンだからな。
ざっくりと水炊きの準備をしてとろ火のまま風呂に入る。
風呂から上がったら完成しているかな。
今日は寒いから熱燗にしようかな。
しっかし、酒も飲み始めたら癖になっちまうな。
味わいはイマイチだけど、あのほんわりとする感じが精神疲労に効くと言うか何と言うか。
まあ、少しだけにしておいて、ログインしてあいつらと遊んで、寝酒にまた少し。
充分温まって風呂から上がる。
おっと、折角の風呂の湯、活用しないとな。
しっかしまた出て来たと言うか、風呂水供給とかどんだけだよ。
全自動ドラム式洗濯機に変なパイプが繋がっているから何かと思ったら、バスタブに変な穴が開いていて、家の説明をよく読んでみたら風呂上りにお湯の再利用とか何とか。
大体、マンション買ったら電化製品が付いているとか、変だと思ったんだ。
こりゃ一度説明書、全部読んでみないとな。
しっかしあんな分厚い説明書、とりあえず必要な所だけざっくりと読んだけど、だから後から出て来るんだよ。
よし、これで良い。
ろ過シートの自動洗浄とかも付いているし、何かもうどんだけ至れり尽くせりなんだよって感じだよな。
これはあれだろ、でかい豪華なマンションをそのまま凝縮したって感じだろ。
よしよし、とりあえず食っちまおう……おお、いい匂いだ。
酒の燗をしてポン酢の容器に注ぎ足してと、これは漏斗が欲しいな。
仕方が無いからビニール袋の角を切って突っ込んで……よしよし、良い調子。
はふはふ……うん、美味い。
『ピンポーン』
ほぇ?
『どちらさ……あれ』
『今日、泊めてくれ』
『ほい、承認』
『悪いな』
あいつ、妙に鼻が利くな、なんてな、クククッ。
確かに土鍋がでかいからと、閃きのままにたくさん作りはしたが、まさかこうなるとはな。
風呂の湯、まだあるよな。
まあ、足せば問題無いか。
おっと、特別承認にしとこう。
最初はイチイチ承認したけど、ダチなんだし特別でも構わんな。
「あれ、カギが開いてるぞ」
「ああ、特別承認な。ここ、別に独身女性専用って訳じゃ無いから、夫婦とか親しい友人とか、絶対信用出来る相手の為の承認方法があるんだよ。つまり、本人が留守でも入れる承認さ」
「おいおい、お前が留守の時とかヤバいだろ」
「なら何か、夫婦でも奥さんが買物に行っていたら寒いのに下で待ったままか」
「いやそんな派手なのをオレに使って良いのかと聞いているんだ」
「後々、共同生活するんだろうが。後には他の奴らも同様にしないと、オレが帰るまで中に入れんぞ」
「あ、そういやそうか」
「ほれ、コタツに入れ。あ、風呂も沸いてるぞ、お湯は少ないけど」
「待て待て待て、今日は水炊きか、ラッキー」
「やれやれ、熱燗で良いな」
「うひょー、気が利くぜ」
それにしても、バイト禁止ぐらいで家を出るかね。
そりゃ小遣いが少ないとゲームにも支障が出るかも知れんが、だからと言ってだな。
てか、そんなの親に報告しているんだな、普通は。
オレとかバレないように必死で隠したってのに。
「ならよ、ブローカーでもするか? 」
「そりゃ良いが、ブツは何だ」
「こいつだ」
「お、ミカン、買ったのか。どれどれ……うほっ、甘、これ、何処のミカンだ」
「農家直販、昔ながらの拘りの栽培法、量は少ないけど味は抜群」
「これを売るのか」
「ほれ、名刺」
「ミカンの園? 」
「奥さん命名だとよ。んでな、仲介ブローカーが何か下手打って、別件でパクられたらしい。んで、後任を探しているうちに収穫の時期になって、仕方なく直接売りに来たって話だ」
「これ、高いだろ」
「だから誰も買わないからと腐っててな、オレが水を向けたらかなり乗り気になってたぞ」
「いけるぜ、こんだけ甘いなら」
「あいつらとも相談してやれそうなら資金は回してやる」
「なら、お前が代表だな」
「悪いがオレはトップには立てん。定款に書くべき財産がヤバいんでな」
「お前、裏じゃ相当派手にやってんだな」
「お前らなら親に頼めば後見人ぐらいやれるだろ。特に、石崎の親とか理解ありそうだろ」
「ああ、あの美食家の、成程な」
「ちゃんと話を詰めて、資金があればすぐにスタート出来るようにしてから話をするんだぞ」
「くっくっくっ、反対で契約違反か、派手な作戦だぜ」
それからゲーム内で話をするって事になり、食事の後は風呂にも入り、片付けをして布団を敷いているうちに風呂から上がる。
VR専用機を枕元に置いて。
「あれ、何で2つあるんだ」
「そんなの使っているから数値が上がらんのよ」
「これ、使っても良いのかよ」
「あいつらの分も買ってある」
「マジかよ」
「とにかく話は中だ」
「おっし……メモリを挿してと」
「虎の子の数値62か」
「実は63になったぜ」
「お、やったな」
「こんなの使ったら70行くかも、くっくっくっ」
「バーチャル・イン」
「うお、待て待て、バーチャル・イン」
そしてまたしてもあいつらのギルドにお邪魔する事になるが、彼女は既に除名になったらしく、その姿は見当たらない。
つらつらと話を聞くに、除名騒ぎで引退するような話になって、あれから見てないそうだ。
「うちの親父かぁ……まあ、前の件で妙にお前の事を気に入っていたようだし、可能性はあるけどな。うちもバイトの話は禁句に近くてよ」
「お前ん宅、何か商売でもしてるのか」
「ああ、だからバイトがしたいなら手伝えと言われるんだけどよ、あんな仕事がやれるかよ」
「どんな仕事なんだ」
「そういや、お前、家の仕事の話、した事無いよな」
「悪いがログの残るここでは言えん」
「リバースかよ」
「そう言う事だ」
「お前ら一度落ちてコウの家に集合だ」
「ああ良いよ」
「お前はどうなんだ」
「既に隣でログイン中だ」
「すぐ行く、アウト」
「待ってろ、アウト」
「くっくっくっ」
「よし、ひとまず落ちるぞ」
「待て待て、承認する」
「クククッ、今度はお前が承認か」
「ギルド入会の承認だ。ほれ、押せ」
「ほい」
「ようこそ、我らが攻略最前線へ」
「それがギルドの名前なのか? 」
「バカ言え、ギルド名は、リミックスだ」
「最前線を意識したような名前だな」
「いや、まさにそれなんだけどな」
「オタク最前線」
「喧しい」
このピーキーな反応が、オレの深層を刺激するんだ。
 




