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自由奔放な猫の如く  作者: 黒田明人
1.如月の悪魔
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 出向先は大陸かと思ったのに、連れて行かれたのは紛争地帯。

 どうやら敵対組織の殲滅がお仕事のようで、お仲間が何人か居た。

 それらと共闘しても良いし、単独でも構わないとの事。

 とにかく1年生き延びて、対抗組織の存在を減らせば良いらしい。


 組織の暴れん坊の教育が目的らしいが、オレにとっては楽園にも等しい。

 早速、情報のままに潜入し、飲み放題の生活となる。

 本拠に毎月連絡を入れるのを忘れ、ロスト扱いになって数ヶ月。

 オレは夢中で殺しまくっていた。


 まあ、飲んでいたんだけどね。


 とにかく相当な人数だったから、飲んでも飲んでも限りが無くてさ。

 毎日が楽園の様相だったんだけど、その人数も遂には尽きちまったんだ。

 対象の人数が相当に減り、その時に思い出したんだ。


 連絡の事を。


 そうして本部に戻ったら叱られた。

 どうやら死んだ事になっていたらしい。

 そうして状況が変わったとかで別の場所に行く事になり、今度は北欧に送られた。

 対象組織は数千人とかで、バレないように減らすのが仕事らしい。

 残り3ヶ月、好きに殺せと言われてまたしても潜入し、ボックスの肥やしにした。

 血を抜いてボックスに入れまくり、対象組織の人員は日々減っていく。

 なんせ死体が出ないから発覚もしない訳で、精神魔法で内部の存在になりすましている。

 そうして約束の1年が経過し、引き上げる時にはかなり減っていた人員だった。

 でもさ、戻ってから何か気が抜けたみたいになってさ。


 国内って思うように殺せないのな。


 いや、殺す事自体は好きにやれるんだけど、他の組織との関連がどうのこうので殺せないんだ。

 だからもう、休暇の時には紛争地帯で変装をして暴れるのが趣味になっちまってさ。

 何時もニコニコしていたら勘違いする野郎は出るんだけど、殺す前に対処されちまうんだ。

 如月の悪魔に手を出すな、なんて通達が回っているらしく、つまらない事このうえない。

 他の組織のシマで飲んでいても、本部から連絡が入るんだ。

 どうやらオレに手を出さずに本部に苦情を言っているらしくてさ、困ったもんだよ、本当に。


 素直に手を出してくれたら良いのにさ。


 バクチや株で本部に貢献しながら数年が過ぎ、いよいよ幹部がどうのこうのと言い出した。

 だけどそんな立場に興味は既に無く、相変わらずあちこちの組織のシマ内をうろつく毎日。

 そのうちはじいてくれるんじゃないかと思っているのに、教育が行き届いているのか誰も手を出してくれない。

 それにあんまりうろついていると本部から連絡が入るからさ。


 それでも関西に日帰り旅行と洒落込み、地元の奴らと諍いになる。

 変装した甲斐があったってものだけど、組織の奴ら半分殺して満足した。

 限りなく黒に近い白とか言われたけど、風体が違うから関係無いで済ました。

 さすがに京都観光って名目で、夜中に神戸で暴れたのが拙かったのかも知れない。

 だけど距離的に無理があるから、そこで誤魔化したんだけどさ。


 やはり灰色は大事だと思うんだ。


 だってさ、完全なアリバイの元に暴れるとさ、そこに何かの異常な現象が必要になる。

 例えばいきなり北海道で大量殺戮とか、普通ではやれない事だ。

 だけど、東北旅行と言っておいてそれだと、何かのカラクリを使ってやったと思われる。

 人間に可能なカラクリまでに留めておいて、その内容を秘密にするのが大事なのだ。

 そうしないと本当に悪魔とか何かと思われちまう。

 それが悪いとは言わないけど、人の社会の中で暮らすにはそれが大事だと思うから。

 でもさ、組の関連から抜けたらもう、そんな必要は無くなるんだ。

 だからなるべく組から追い出さないで欲しいな。


 オレが人のはしくれで留まれるように。


 完全な化け物として世間を騒がせるのは簡単だけど、そんな事はしたくないんだ。

 だから闇に紛れてこっそりと、世間から人を消していきたい。

 対象はなるべく悪人にするからさ、地味に静かに暮らさせて欲しい。

 ダメなら世間を震撼させる事になるだけさ。

 まあそうなっても別に困りはしないけど、なるべくは静かに暮らしたいんだ。


 それはともかく、幹部の話は辞退するものの、断れないようになってくる。

 最前線が好きだと言うのに、どうしてもその立場になれと最近煩いんだ。

 どうやらオレに重しを付けて、あちこち徘徊するのを止めさせる目的があるらしい。


「そういうの困るんだけど」

「お前もいい加減、そういうのから離れろ、良いな」

「オレは殺したいんだってば」

「さすがに庇い切れんぞ。お前、いい加減、あちこちの組織にマークされているんだ。何時はじかれても不思議じゃないんだからな」

「はじいた組織は潰して良いんだよね」

「お前が生きていればの話だろうが。殺されては何にもならんぞ」

「気を付ける」


 オレを殺したいと思っている組織があるなら、さっさと炙り出そうか。

 オレもどきなゴーレムを徘徊させれば、車で轢いてくれたりする訳で。

 早速にも運転手に対する精神魔法で洗い出し、乗り込んで殲滅する事になる。


「お前、生きていたのか」

「そっくりさんが轢かれたっぽいね」

「そして殲滅したと」

「そんなの知らないよ」

「やれやれ、通達を再度出しておかんとな」

「だから知らないって言ってるでしょ」


 証拠も無いのにすっかりバレているようで、惚けても無駄だった。

 だけどそんなイケイケなオレの態度に対して画策してくれる雑魚が居て、オレは組から排除される方向に話が進んでいく。

 都合が良いので流れに任せて流されていくと、そのまま田舎の支部に送られる事になった。


 そうして田舎……絶海の孤島だ、ここ。


 中々のカモフラージュな島を拠点に、変装して暴れ回る事になる。

 最初からこうしていれば良かったんだなと、連日のように排除した奴らを殲滅していく。

 変装したスタイルで回状が回る頃には、また別の変装で暴れ回る。

 手下を何とかしろと本部から連絡が入るけど、オレは日がな1日釣りをして過ごしている事になっている。

 確かに夜中に暴れてはいるけど、昼間は釣りをしている訳だ。

 それにそんな手下とか居ないので、本部には意味が分からないと告げておく。


 そして事件が起こりそうになるが、起こる前に消える事になる。


 深夜、隣の島から数人でボートに乗って近付こうとして、転覆して死んじゃったと。

 真っ暗の中、銃器を持って渡ろうとするから、転覆させただけなんだけどさ。

 どうやらヒットマンの集団だったらしい。

 アイス系の魔法で船は大破して、乗っていた人員は海に投げ出されたんだ。

 たまには魔法も使わないと、威力とか忘れているもんだね。


 乗っていた船がいきなり氷に乗り上げて、横倒しになって滑った挙句に海に突っ込んだんだ。

 どうやら命中率も落ちていて、かなり手前に着弾したみたいだ。

 事件としては流氷に突っ込んで溺死って事になったけど、あんな南の海に流氷とか不思議に思われた。

 だけどある物は仕方が無く、事件はそれで収束した。


 いやね、真っ赤な存在が近付くから、その対処をしたに過ぎないんだよ。

 それでさ、今度は昼間にさ、セスナで来ようとするからさ、風系のダウン魔法で海に叩き落したんだ。

 そうしたら局所的な異常気象って事になってさ、それも不思議な現象って事になったんだ。

 そうなるともう、如月の悪魔って名前が独り歩きする事になるよな。


 本物の悪魔だ、とか言い出してさ、病院送りになったのも何人か居たらしい。

 本部にはかなり貢献しているのに、辺境送りになっている幹部候補って立ち位置になっている今日この頃。

 対抗組織のヒットマンが何故かトラブルに巻き込まれて死ぬ羽目になる、如月の悪魔と呼ばれる存在ってさ。

 本部でも腫れ物扱いになっちまって、本人が苦情を言わないものだから、そのまま辺境住まいのままだ。

 皆は戻りたいかと聞くんだけど、風光明媚な島が気に入ったって戻らないって言い張っている現在。


 手下を減らせば考えも変わるかと、今では出張所はオレ独りになっている。


 それでも別に困らないので、残留のまま今日もあちこちで暴れていると。

 そうしたらさ、さすがに本部も我慢の限度が来たらしくてさ、新しい赴任地に送られる事になったんだ。

 嫌なら本部で幹部だと言われ、場所を聞いたら無人島って話。

 とりあえず仮の住まいはあるらしく、リゾート地の調査の為のバラックとか何とか。

 幹部は嫌だと駄々をこねていたら、そこに送られる事に決まる。

 しばらく過ごせば嫌になるだろうと、そんな目論見のままに。


 でもさ、誰も居ない島って過ごし易いんだ、とってもさ。

 転移があるから食事には困らないし、ボックスに在庫も大量にあるし。

 魔道具で虫避けになるし、過ごすには静かでとても良い所。

 近隣の組織に対して暴れた後、小船で沖に出る振りをしてやれば、大挙して押し寄せてくれる。

 本部では半分さじを投げていて、だから好きに処分して良いとか言っているらしい。


 それってオレに対するご褒美だよね、くすくす。

 

収拾が付かなくなりました。

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