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自由奔放な猫の如く  作者: 黒田明人
1.如月の悪魔
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0023

7月8日改訂

 

 異世界の神がそれと気付いた頃には既に勇者の姿は無く、人族と魔族の争いも終わっていた。

 倒すはずの勇者は何処に消えたのか分からず、神はもう勇者達は寿命になったのだと思っていた。

 それにしても、どうしても魔族を滅ぼしたいのか、神は新たなシナリオを投入する。


 彼がそれに気付いたのは偶然の事。


 自分のステータスを偽装し、低レベルな数値とステータスにして人族の中に潜り込んでいた時の事。

 妙な者達が町に溢れ出していた。

 そいつらはかつての世界の者達のような言動をして、モンスターを狩ってはレベルを上げていく。

 各地に妙に強いモンスターが配置され、それを倒す者達。


 そして彼は思い出す。

 

 あいつらってもしかしてプレイヤーだったりするのか?

 つまりさ、これがVRMMOの真実だったりするのか?

 確かに技術的に困難って言われてて、だからこそどうやって実現したのか分からなかった仮想現実。

 それがまさかこんな事とか無いよな?

 そうなのかよ?

 参ったな、まさかこれが世界の真実とかさ。

 楽しみにしていたゲームの真実がこんな事だったとは。

 そう考えてみると、この世界って『トワイライト・ワールド・オンライン』に似てないか?

 あれってかつて勇者が云々で、後々に魔王がどうのこうので、魔族を退治するのが何とかってさ。


 勇者送還でここの神はこんなのを導入したのかよ。

 あいつらは仮想現実と思っているが、実は異世界ってオチかよ。

 やれやれ、当時のオレはこんなのを楽しみにしていたんだな。

 それにしても、オレのマークが黄色いのはNPC扱いかよ。

 確かに今は1桁レベルのステータスに偽装してあるが、街に立っていても押しのける勢いだな。


 これ、殺しても良いのかな、クククッ。


 どうやら街中ではPK禁止になっているようだけど、街の人は構わない様子。

 ふむ、何かのクエストに混ざって雇われようかねぇ。

 やたら強いNPCと思われたりして。

 そういう遊びも面白そうだが、最終目的が気になるところだな。

 頼むからもう魔族をターゲットにするのは止めてくれないかな。


 そうしないとゲームバランス、崩しちゃうぞ。


 つらつらと調べてみるに、やはり最終目的は魔王討伐のようだ。

 やれやれ、どうにもならんか、この世界は。

 早速、魔族領に戻り、人族の新たな戦力を話していく。

 またぞろ侵略かと、セイルも頭を悩ませる事になる。


 しかし、新たな産物が解決に導く。


 初心者の町で料理屋を始めたプレイヤーに食材が提供される。

 白米と醤油と味噌、後は昆布に豆腐にネギ、白菜にしらたきにえのき茸である。

 未だ見つかっていない食材と調味料の提供にプレイヤーは狂喜し、早速にも料理として提供する。

 更にカニやカツオ節までもが提供され、その料理屋は連日満員御礼となる。


 その食材は○にマの文字が記された包装紙に包まれていて、それが卸売り業者のマークと思われた。

 魔族領では米作は元より、味噌や醤油の生産にも成功し、白菜や様々なあちらの世界の野菜や果物の栽培にも成功していた。

 そうして○にマのマークの元、密かに人族との交易を始めていた。

 変わった食べ物だが、プレイヤーには絶賛されるそれらの食物はかなりの人気になっていて、そこに争いの火種は消えようとしていた。

 それでも攻略組の攻略は進んでいく。

 だがしかし、ある文献を混ぜ込んでおいたが為に、攻略組がやたらと嫌われる事になる。


 すなわち、魔族の正体である。


 魔族の正体が獣人族で、モフモフを殺すのがお仕事などと言われては、可愛い物好きの女性プレイヤーは生産職に傾いた。

 生産職に嫌われては攻略は進まない。

 そうしてモフモフとの交易を好む傾向になり、彼らと個人的な交流を育む事になる。

 魔族領では連日のようにモフモフとの交流の催しが催され、魔王も臨席してプレイヤーと馴染んでいく。

 さすがにそれらを殺すのがクリア条件と言われても、それをやれる者がどれだけ居るか。

 最終的に、攻略組対モフモフ愛好家との戦いに発展しようとしていた。


 シナリオを無理に達成しようとすれば、生産職の協力無しにしなくてはならない。

 更には魔族に混ざってプレイヤーが参戦する事になり、俄かにPVPの様相を呈していく。

 中にはやたら強い魔族側のNPCが攻略組を殲滅に追い込んだりして、シナリオは一向に進まない有様。

 魔族が勝てばプレイヤーに米や味噌、醤油に各種野菜や果物が褒賞として渡され、更にはモフモフの会も催される。

 攻略組が勝っても何ももらえず、得られるのはモフモフの敵という、女性プレイヤーからの非難ばかり。

 嫌気が差した者は攻略組から抜けて魔族側に立つようになり、シナリオはどうにも進まなくなっていた。


 遂にまったりゲームに転換したこのゲームから、ゲーム廃人達が抜けていく。

 そうして世界は再度、安定化への道を歩み始める。

 さすがに今度の邪魔はバレたようで、元凶の送還を決めた神。


 あれから60年の時を経て、彼は元の世界に戻されようとしていた。


『セイル、長い付き合いだったが、そろそろお別れのようだ』

『やっと送還になるのか、長かったな。しかし、お前のお陰でこの魔族領は安泰になった。ありがたい事だ』

『オレが消えればまたぞろ神の企みがあるかも知れんぞ』

『構わないさ。あれから数十年、お前が居なければ滅んでいたかも知れないのだ。それが今の平和な領となれば、これ以上は望まんさ』

『段々と強く引っ張られるようになっている。近いうちに送還されてしまうだろう』

『お前には何も返せぬままになってしまったが、せめて戻っても元気でな』

『好きでやった事さ、気にする事は無い』

『ありがとう。ありがとう、キルト』

『またな、セイル、お別れだ』


 ここで作れない物資はあらかた置いておくが、それも何時かは尽きるだろう。

 その時までに開発をして、何とか再現出来ると良いな。

 そして人族との交易、継続させていくといい。

 争いは何も生まないって事を人族に教えてやるといい。


 楽しかったぜ、またな。


 《もう良いのですか……嫌と言っても止まらんのだろ……君はやり過ぎたのです……呼んでおいてよく言うよ……それが全ての過ちでしたが、もう君には混ぜて欲しくはありません。帰って貰いますよ。転送》


 解析完了だ。


 何の事は無い。

 オレのスキルと殆ど変わらない。

 すなわちあの勇者達は本当に帰れたんだな。

 あの時は実験にも等しかったが、帰れていたのなら良かったな。

 さて、何処に誘致されるものか。


 おっと、こんな場所かよ。


 最後の最後まで嫌がらせとはな。

 別に寒さとか感じないから構わんが、南極大陸に転送とか子供みたいな嫌がらせは止めてくれよな。

 さて、イメージのままに……転移。


 うおお、落ちる落ちる。


 おっかしいな、座標がずれたかな。

 買ったマンションは何処に消えたものか。

 あれっ、あれがそうかな。

 あれから何年が過ぎたものか、全く変わってないように見えるんだが。


 アイテムボックスからかつての通貨を取り出し、新聞を買おうと店に赴く。

 年月日を見ると……あれっ?


 《お帰りなさい、くすくす……時が経ってない……そのほうが良くないかい?……あれから60年は過ぎているはずなのに……時を遅くしておいたからね、君が召喚されてからまだ1週間ぐらいだよ……なんでも出来るんだな……そうでも無いけどね。ともかく、君は自由に過ごして良いからね……そんな事を言われたら暴れられない……くすくす……とってもチートな称号ありがとう……どういたしまして、くすくす》


(召喚された彼らを君が戻したのは良いけどね、彼らには無駄に力があって、それでトラブルの連続だったんだ。過ぎた時を忘れたかのように元の学校に戻ろうとかしたりしてさ、どうにもならないから彼らは記憶を消して身体を作り直しておいたけど、君はそんな事は無いと信じるよ。見目も変わってないようだから元の学生でも構わないようだし、だから元に戻ってそのままのんびりと自由に過ごすといい)


 さて弱ったな。


 今更、帰って来ましたと言うのもな。

 1週間と言われでも、つぶやきには100年って書いたんだよな。

 とぼけて仮想現実の世界で遊ぼうにも、もう舞台裏を知ったらやる気も無くなったし。

 下手にログインしようにも許可されない恐れもある。

 しかしな、あんなに大々的に荒稼ぎしての大量購入だからさぁ、確定申告が心配だよ。

 まあ良いか、株式でもやって督促が来たら必要だけ払えば。

 そうと決まれば仮想株式市場に殴り込みだ。


 残高3万余りか、参ったな。


 とりあえず一気に増やそうと、数字当て宝くじを閃きのまま記入して投票しておく。

 後端数を自転車で増やし、馬でも増やし、バイクでも増やし、船でも増やす。

 かなり増えたので桁数の違う数字当てに、またもや閃きのまま投票しておく。

 そうして巷に変装で潜り込み、夜な夜な食事をする事になる。


 チンピラ達の災厄の日々の始まりかな。


 そうこうしているうちに残高が増えたので、いよいよ株式に投入する事になる。

 仕手っぽい値動きを予想して、その手前で売る仕手の中抜き計画を立てる。

 底値で買い込み上昇して売るなど、いくつものパターンを予約して投入しておく。

 それと共に数字当てにまた投入しておく。

 先の先のそのまた先までを予想して、その分を予約して購入するようにしておく。

 どれぐらい増えるか分からないが、督促が届いてもこれなら払えるだろう。

 いくらでも言って来るといいさ。

 金が増えたらまだそろ色々と買い込む事になる。

 7月上旬になって、さすがにもう良いだろうと組に連絡を付ける。


 暴れたら追い出されたと言って。


 しばらく笑い声が止まらなかった電話の向こうだが、戻れたのなら良かったと嬉しそうに言われた。

 それからまたかつての生活が戻り、長期の休みで教師に色々言われたが、頬の傷を目立たなくする手術をしていたと言って誤魔化した。

 実際、60年の年月の果てに回復魔法にも熟練し、殆ど目立たなくなった傷。

 本当は確実に消せるのだけど、名残りのように残しておいた傷。

 近くで見ればまだ分かるものの、以前とは全く違う傷跡に、形成手術を受けていたと言えばクラスの連中もそれを信じた。

 そんな中、またぞろ悪魔のつぶやきサイトに何か書いておこうと思い、それらしき事を書いておく。


【魔界召喚されたんだけど、暴れたら追い出されたんだ。2ヶ月振りに少し書いておくね】

【来週完成予定の遊園地、開園寸前にトラブルで延期。卸売り業者の選定は確実にね】

【夜空を彩る流星群。ひとつだけ大きなのが落ちてくる。気を付けてね、大陸の皆さん】

【珊瑚を選ぶか命を選ぶか。領海侵犯窃盗団は珊瑚を選んだようです。命知らずだね】


 当たるも八卦、当たらぬも八卦。


 復学して少し経って夏休みになるが、かつて楽しみにしていたはずのゲームに全く食指が動かない。

 あんな舞台裏を見てしまっては、やる気にならないのも当たり前だよね。

 なので物資の買い込みと数字当てクジをして休みを終わらせる事になった。

 元々、倫理観など無かったオレだが、60年の年月はそれを助長したようで、転移魔法を活用して戦場から武器の窃盗などをやるようになった。

 ただこの世界には大気にマナが無いようで、どうやっても回復しないのには参る。

 レベルが相当に高いので余裕はかなりあるが、使って回復しないMPというのは実に困る。

 確かに魔石や魔水晶や聖石の在庫はあるが、使えば無くなるものだ。

 あちこちに転移して物資を戴いて、MPが減ったら聖石で回復の日々となる。


 夏休みは終わったものの、既に学生生活は惰性のものとなり、高校進学の意欲も既に無かったが、いきなりの心変わりは拙いと、ひとまず進学する予定だ。

 テストのヤマ出しも今更だけど、金庫の中のテスト用紙を透視してやれば確実な予測になる。

 もちろん、閃きも以前とは格段の差になってはいるんだけど……

 体育祭とかもうどうでも良かったが、超常現象研究会が最後の出し物とかって騒いでいた。

 なので軽い気持ちで魔法の実演っぽい催しをしたんだが、ちょっとした騒ぎになっていた。


 向こうでの色々な研究結果のうち、簡単な魔道具関連でのアイテムを作成して展示したのだ。

 この世界には大気に魔素が無いから魔法が使えない。

 つまり、魔素さえあればイメージのままに誰でも魔法が使える可能性がある。

 クズ魔石をそれっぽい箱に入れ、それを握ってイメージのままに魔法を使えとメンバーの奴らに試させた結果、全員が弱い魔法もどきを発動したのだ。

 これにはさすがに驚いたようで、入手先を聞かれたからつい……


「魔界土産さ」

「じゃあよ、あの手術ってのは? 」

「ふふん、魔王に治してもらったさ」

「すげぇ、でよ、これ、まだまだあんのかよ」

「展示する分にはこんな欠片でも良いだろ」

「じゃあよ、でかいのもあるんだな」

「買えるか? 単位は億だ」

「うげぇぇ、マジかよ」

「作り方は簡単だ。人間の魂から作るんだよ」

「冗談だよな? 」

「さあ、どうかな、くっくっくっ」


 少し悪乗りしたんだけど、ちょっと暗い雰囲気でやったから追及は無かった様子。

 そんなこんなで文化祭の展示となり、展示品は高値で売れた。

 部員に見本を持たせて簡単な魔法の発現をやらせ、その後で展示品オークションをやったのだ。

 お陰で部費が相当に水増しになったと、下級生部員は喜んでいた。

 先輩からのプレゼントとしては最上な結果になったようだけど、こんな成果がそう簡単に出せると思うなよ。


 それにしても、種火魔道具があんな高く売れるとは。


 現地じゃ銀貨5枚……日本円にして5000円ってとこだけどな、オークションで各10万円で売れたもんだ。

 ただし、中の魔石の欠片は本当の欠片であり、クズもクズの欠片魔石でしかない。

 通常なら500回は出せる火種も、あれでは精々数十回で終わりだろう。

 確かに指先から出るのは確かだけど、やっている事はライターと変わらない訳だ。

 ファイヤーと唱えてライターの炎みたいなのが出るだけの魔導具に、10万も払うってのはご苦労な事だ。

 だけど、この調子だと魔石の需要も、もしかしたら高いかも知れない。

 世の似非魔術師連中垂涎の品になるかも知れず、後々が楽しみと言ったところだろう。


 聖石や魔水晶に魔晶石はそれなりだが、魔石は相当大量にある。

 特に下級の魔石の量はとんでもない量だ。

 ゴブリンとかの魔石の事だけど、後に魔道具に使えると知って溜めまくった成果だ。

 それの処分になるのなら、後々売っても構わないかも知れない。


 閑話休題それはともかく


 文化祭もつつがなく終わり、中学生生活も残り僅かとなる。

 冬休みも組関連の仕事に従事し、その中で魔石の需要を確かめる。

 どうやら既にアンダーグラウンド業界にその話が流れているようで、欧州の魔術師協会のような組織からの情報員が潜り込んでいるとか。

 かつて10万で売れた魔導具のうちのいくつかが海外に流れ、莫大な価格での懸賞金騒ぎになっているらしい。

 組からって事でクズ魔石を裏に流してみると、莫大な懸賞金が手に入った。

 それはそのまま組織の資金源になりそうだと言われたが、魔界土産だから量は無いよと話しておいた。

 それでもあるだけ欲しいと言われたので、オレの税金関連の処理を頼み、手持ちの中のうちの本当のクズな魔石の欠片を渡しておいた。

 100個の欠片がどれだけの価格になるかは知らないが、半分もらえる事になっている。

 まあ、別に金などどうでも良いが、寄付ってのもさすがにな。


 組の仕事はそれからも何度となくあり、その度に食事となって実にありがたい。

 アイテムボックスを活用すれば処理も自前でやれるので、殺しと処理を単独でやれる方法を確立したと、その手の依頼も請けるようになる。

 更に転移に精神魔法で痕跡も消せるので、拉致と殺しと処理の3つを単独でこなすエージェントすら可能となる。

 付き合いがあるので処理組織にも仕事は回すが、殺して血抜きした死体を纏めて渡すようになる。

 そんなこんなで3学期も終わり、オレはいよいよ卒業となる。


 高校ではいよいよ偽装戸籍を使う事になり、畑中強から青山祐二へと変わる。

 年齢も16才から19才へと変わり、高校在学中に成人する予定となる。

 どうやら元の青山君の生年月日が4月2日だったようで、入学式には19才になっていたのである。


 高2で成人か。



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