ピエール爺さん
パチ
「うわぁ。この物置、うちのよりずっと広いわ。しかも、机とかあるじゃない。普通の部屋みたいね。」
「クロエ!誰かいるよ!」
クレモンが人影に気付いた。
「出よう!早く!」
クロエを引っ張ろうとしたその時、
「ムッシュー…」
目のいいユーゴは、それがお爺さんだと分かったらしい。
「うーん?ほぉ…、ほぉ…。」
ゆっくりと人影がこちらを振り向く。
「あれ、あの人、ピエールじいさんじゃないの?ほら、あの赤いスカーフ…。」
「え、ホントだ!じいちゃん、何してんの?こんなとこで!」
ピエールはクレモンのおじいさんだ。家は確かに近所だが、どうしてこんなところにいるのだろう?
「おー、おー。クレモンか。お前たちのほうこそ何だ、こんなところで。中学校は終わったのか?」
「じいちゃん、いい加減にしてよ。もう高校生になったんだよ、って何回も言ったでしょ?」
「おー、おー、そうか。そうじゃったな。そこの娘さんはイザベルだったかな?」
「イザベルって。ちょっと古くさい名前だから、いまどきの高校生にはあんまりいませんよ。クロエです。」
「おー、おー、そうじゃった、そうじゃった。クロエ、な。ジャックのとこの、な。そうじゃった、そうじゃった。」
「じいちゃん、クロエのおじいさんとも仲良しだったもんね。」
「あいつは確か、息子のエマニュエルに引き取られたんじゃな、ボケてしもうて。元気にしとるかな?」
「もう亡くなりました。去年。ピエールさんもお葬式にいらしてましたよ。」
「おー、おー、そうじゃった、そうじゃった。もう年でなぁ。よう覚えとらんで。で、そこの子は誰じゃ?」
ピエールがユーゴの方を向いたとき、
パン
電気が消えた。
「☆!◎×?・↑▽」
「★?×◎!・↓▲」
パチ
ユーゴが電気を付けた。
「よく分かったね、どこにスイッチがあったか。」
「ウイ、イル マ ディ(おじいさんが言ってくれた)」
「ん?何か言ったの、じいちゃん?」
「おー、おー、言ったかのう。どうじゃったかなぁ?」
「クレモン、ピエールさんとユーゴ、何か言ってたわよ。でも何語だったか全然わからなかったけど。」
「どういうこと?」
「おー、おー、そうじゃそうじゃ、←■)#}|”?>☆彡。さぁ、上にあがろうかのぉ。」
「じいちゃん、一体ここで何してたの?」
「ワインじゃ、ワインじゃ。うまいワインを取りに来たんじゃよ。さ、お前たちも一緒に上がらんか。ほれ、ほれ。」
ピエールに促されるように、部屋を追い出され、すっきりしないまま出口の方へ向かっていった。