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グロカイユ―

学校が終わり、クレモン、クロエ、ユーゴは歩いて帰路についた。


あそこには小学校の時の友だちが住んでいてよく誕生日パーティをしたんだとか、カーニバルの時はそこの公園に集まって、顔にペイントしてビニール袋で仮装したんだとか、クレモンとクロエが交互に話をつないでいく。


「ほら、ここは壁絵で有名な場所よ。シテ・クレアションっていうアーティストグループがいろんな所にこんな壁絵を描いているんだけど、ここが最初に書いた絵。だまし絵でさ。遠くから見ると、本当に階段があって、本物の車やお店があるみたいじゃない?人だって動き出しそうなくらい、リアルなのよ。」


「セ ヴレ(本当だね)。」


ユーゴは片言のフランス語で返事をする。今度は理解できたようだ。


「ほら、こんな時、日本語で『スゴイ』っていうんじゃないの?」


「ウイ、ウイ。『すごい!』って。ハハハ。」


無理やり言わされているような気もしたが、絵は素直にすごいと思えた。


そうこうしていると、4両のプチトランがやって来て、壁絵の前に止まった。中からたくさんの観光客がおりてきた。


「わぁ、観光名所になってるんだ。」


「ホントだね。あ、みんな自分も壁絵の中の人みたいに写真を撮ってる!俺たちもやろうよ。な、ユーゴ。」


「ウイ。」


ユーゴは自分のスマホを取り出し、描かれた階段に座るような恰好をした。


「すいません。写真を撮ってもらえませんか。」


クロエが同じようにカメラを向けている観光客にお願いすると、快く写真を撮ってくれた。


「アン、ドゥ、トワ、スリール(1、2、3、はいにっこりして)!」


掛け声はフランス語だが、アクセントは南の訛りだ。南仏の人が旅行で来ているらしい。


「ありがとうございます。わぁ、見て。面白い写真!絵の中に入ったみたい。後でインスタにあげてよね。」


「ウイ。」


そんな感じで三人でぶらぶらとクロエの家へ向かった。


「ほら、あそこに大きな石があるでしょ。あれはグロカイユー。大きな石、っていうそのままの意味なの。昔、この丘にケーブルカーを通した時に地面を掘ったらしいんだけど、その時この大きな石が工事の邪魔したんだって。大きくて、硬くて動かせなくて大変だったらしいんだけど、何とか取り出して記念にここにおいてるの。」


「今だったらそんなに大変なように思わない大きさだけどね。」


「アルプスから流れ着いたとかって聞いたわ。だから、ほら、この石の向こうにアルプスが見えるのよ。」


「アー、セ モンブラン!(あ、あれはモンブランだ!)」


「うそ!ユーゴ、よく分かるね!リヨンからも見えるんだよ、確かに。でもどれ?」


「ほら、あれよ、あれ。」


クレモンはクロエに指をさして教えてもらった。ユーゴはスキー好きで、よくモンブランの写真を見ていたからすぐに分かった。


「あれがモンブランなんだ。フランスのことでもユーゴの方が良く知ってることもあるんだなぁ。」


「ウイ、セ コムサ(そうだね、そんなもんだよ)」


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