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コア破壊命令 4

また、死人がでた。ソフィアの治癒魔法は意味を成さなかった。狼は闇に紛れ、一瞬の不意をついて抗夫の喉笛を噛み千切った。最初は二十名ほどいた人は、今はもう六人だけになった。エーリル達四人と抗夫であるライルとベルント。エーリルはできるだけ、死体を見ないようにと必死だった。

「さっさと行くべきだったんだ、休憩なんかしてるから」

フリッツは頭を抱え、髪の毛を掻きむしっていた。

「疲れている状態で、あのノーネームと戦っていたら全滅していたかもしれないじゃない。あなたの考えは間違ってなかった」

ソフィアがフォローの言葉をかけたが、フリッツはどうにも納得できなかった。

「行こう、コアを破壊して帰ろう。これまで死んだ仲間のためにも」

ベルントは剣を握り締めた、あたりに憂鬱な空気が流れていたけれど、みんな振り払うかのように武器を手に取って足を進めた。



六人はたどり着いた、コアの元へ。道を進んでいくと、不意に現れたのだった。暗闇に同化するかのように、呑み込まれるような黒く血のような赤色。一点の狂いのないような球体で、大きさは人並み程度だった。

「これを破壊すればいいんだな」

ベルントがそう言い、剣を両手で握り締め、渾身の力で突き刺した。すると、コアは女性の悲鳴にも似た、耳に突き刺さる高い音を響かせて粉々に砕けた。

「これで、終わりなのか」

ライルがそうつぶやいたとたん、雷が落ちたかの様な衝撃と轟きが発生し、全員あまりの衝撃に目を伏せた。そして目を開くと、コアがあった場所にはノーネームの姿があった、数は一体だったが明らかに様子がおかしかった。

「コアは破壊させるけど、生きては返さないってことか」

そのノーネームは人型だったが、大きさが通常よりもはるかに巨大だった。右手にはクロスボウ、左手にはメイスを持っていた。そして、腰から足先にかけては狼型ノーネームが融合していた(以下、上半身が人型、下半身が狼型ノーネームをハンターと表記します)。

「目的は達した!コアが消滅したノーネームは時間経過で消滅する!地上に逃げるんだ!」

フリッツが叫ぶと、全員が来た道を駆け出した。ハンターは余裕を感じさせるような、ゆっくりとした歩みで六人の後を追った。右手のクロスボウには自動的に灰色の矢が装填され、狙いを定めて引き金が絞られた。その瞬間、エーリルの横を弓で放たれたときとは比べ物にならないほどの風が走る、もし貫かれたら体全てが持っていかれそうなほどの威力だった。

「次がくるぞ!」

大砲のような矢は、誰にも当たらずに、ただ紙一重のところ掠めるばかりだった。次は自分に当たるかも知れないという恐怖が歯を震わせる。

「あの足ならすぐ追いつけるはずなのに、もしかして遊んでるのか」

エーリルがそう考えると、焦りと恐怖の中に怒りが混ざる。しかし、今は立ち向かっても勝てる見込みはなく、ただ走るしかなかった。やがて先ほどの開けた場所へと出たが、走る足を止めることもなく、その場所を駆け抜けた。するとハンターは一気に速度を上げ、エーリル達に迫った。その時だった、短い声が聞こえたかと思うと、エーリルの横を走っていたソフィアが倒れた。敷かれていたトロッコレールに足を引っ掛けた、すでにソフィアの後ろにはハンターが追いつき、左手のメイスを振り下ろす瞬間だった。エーリルは胸のうちに力強い鼓動と、絶望によるぞくりとした感覚が同時に襲い、力の限り叫んだ。

「ソフィア!!」

メイスは振り下ろされた、坑道内に響きわたる衝撃と舞い上がる粉塵、フリッツたちが気づいたときにはすでに手遅れの状態だった。その時、霧のように視界をさえぎる粉塵の中に、青い閃光が煌いた。

「エーリル?」

閃光の正体はエーリルだった。纏う防具が青く輝いて、盾も同様に輝き、ソフィアに振り下ろされたメイスを受け止めていた。

「援護を」

「分かってます!」

カインは短い詠唱で炎の糸を作り出した、糸は無数にも数を増やし、ハンターの体へと巻きついて拘束した。エーリルはメイスを押し返すと、ソフィアの手をとりフリッツたちの元へ走る。

「エーリル、私、死ぬかと思った」

涙声が混ざったその声に、エーリルは戸惑いながらも笑い、ソフィアの手を強く握った。

「あまり長くは」

ハンターは暴れまわり、炎の糸を千切ってだんだんと自由に動けるようになっていく。

「エーリル、その鎧」

フリッツがそう尋ねると、エーリルはただ「分からない」とだけ答えた。

「けれど、この状態だと不思議と力が沸いてくる」

その言葉を聞くと、フリッツはベルントとライルを呼んだ。

「あいつが本気になって走ると、俺らじゃ簡単に追いつかれる。だから、俺らで足止めをする」

「それでどうするんだ、まさか君達が犠牲になるのか」

「違う、爆薬を持ってくるんだ、それであいつを閉じ込める」

ライルは反論を言わずに、強く頷いた。

「必ず、仲間達を説得して見せます。死なないでください」

ベルントとライルはエーリル達に敬礼すると、地上を目指して走り去った。

「悪い、勝手に決めちゃった」

誰も、責めない。最初から考えていたかのように、覚悟を決めた。

「とにかく足どめするんだ、カインは魔法が切れたらすぐに拘束魔法を開始してくれ、そして拘束できたら俺らも地上へ目指す」

作戦を伝え終わると、カイン以外の三人はハンター前へと立ちはだかった。炎の糸から開放されたハンターはフリッツに向かってメイスを力任せに振り下ろす、素早く交わし一気に下半身の狼へ近づくと、頭部に向けて双剣を突き刺した。しかし、双剣は刺さらず、頭部に僅かなひびを入れたくらいだった。

「堅いな、反則だろそれは」

すかさず体制を低くし、体を反転させると同時に足の関節を切りつけてその場を一瞬ではなれた。ハンターはフリッツを標的に定め、身をかがめた。

「エーリル、これを」

ハンターの後ろに位置するエーリルはソフィアから一本のロープを受け取った。片方に鉤爪状の引っ掛けがついており、麻糸のような糸が何重にも束ねられている細いものだったが、エーリルはハンターの首関節部分に向けて鉤爪を投げた。関節部分に引っ掛けるとほぼ同時に、エーリルは体全てを使い、ロープを引っ張った。すると、飛び掛ろうとしていたハンターは大きく体勢を崩し、その場に崩れた。

「今だ!」

カインが杖を地面に突き刺すと、ハンターがいる地面に赤く光る魔法陣が現れ、それを中心に一回り小さい六つの魔法陣が広がる。そして小さい魔法陣から、赤く燃えたぎり、錨がついた鎖が飛び出した。鎖に繋がれた錨は生き物のように、ハンターの体へと深く突き刺さった。突き刺さった部分からは煙が噴き出し、ハンターを地面に縫い止めた。

「よし、これでもう十分だろう。早く地上へ急ぐぞ」

チートとか俺TUEEEとかじゃないです、そのつもりです。


魔法の解説が不十分な気がしますね、こんど詳しく説明する機会を作ります。

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