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ラグナロクの鮮情  作者: 卯月 光
百年の意志
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第22話 再びあの地へ

人物紹介

【エマ・オレンジ】

・アルヴヘイムの名家、オレンジ家の末端出身の妖界族(エルフ)

・オレンジ家の一員という例に漏れず発電能力を持つがそれほど強くない

・金の長髪が映え、目の覚めるような美人だが性格は穏やかで妹思い

・十八歳にして妹と共にアルヴヘイムを抜け出す

・オレンジ家流の剣術と自家に伝わる細剣を使いこなす

・エインヘリャルは所持していない

 「あれ?わたしはどうしてこんなところで眠っていたんだ。たしかイステルの姉ちゃんとエクエスが戦っていて、そこでなんだか眠たくなって…シグルドもイステルも起きてくれー!ってこの人はイステルの姉ちゃんじゃないか!」


 真っ先に跳ね起きたリーテはやはり取り乱しシグルドとエマを揺する。しかしエマをイステルと間違えていたことに気づきすぐに手を引っ込める。


 「えっそうよ私はイステルの姉、エマ・オレンジよ。あなたはどなた?私はヨトゥンヘイムでエクエスと決闘して…」


 エマも目覚め、慌てて辺りを見渡す。命をかけた決闘の途中で眠ってしまったのならこれぐらいの取り乱しは当然だろう。


 「お前らはイザベラ・カンナの能力でしばらく眠ってたんだ」


 エクエスが石に腰かけたまま冷静に説明する。するとエクエスの姿を捉えたエマはそばに寝かせてあった細剣を取り上げ、エクエスに向けた。強い静電気で髪の毛が逆立つ。


 「あなたっ!何をしてるの!?決闘の続きを…」


 「その必要はない。アクセルの繭はなかったんだ。オレたちが争う理由は今のところない」


 「そうだったの。で、あなたたちは何者なの?」


 俺とリーテを向いて質問する。

 その問いに対する答えを準備していたかのようにリーテが即答した。


 「イステルが謎の組織に追われていたところを助けてここまで来たんだ。わたしはリーテ・レティキュラータ、こっちはペルソナ・リトリネア。にしても驚いたなー。本当にそっくりだ」


 「イステルを助けてくれたの?ってことはイステルを狙ってる組織は本当にあったのね。私が一人にしてしまったばかりに…何はともあれ、あなたたちには感謝してもしきれないわ。それで、イステルはどこに?」


 リーテはまだ寝っ転がっているシグルドと隣に寝かされたイステルを指差した。エマの表情は安堵に満ち、沈んだ目元は輝きを取り戻したように見えた。


 「イステル!私のかわいいイステル!ごめんね、私があなたを一人にしてしまったばかりに」


 エマはイステルに飛びつくと骨のきしむ音が聞こえてきそうなほど強く抱きしめた。姉妹愛の強さはもはや一片も疑う必要などないことは誰もが一瞬で悟った。

 突然の衝撃に、寝そべった姿勢から目を見開いたイステルは驚いて暴れるそぶりを見せるが、それが姉だと気づくと一転優しく穏やかな表情に変わった。

 だがやはり身体を圧迫される苦痛に顔をしかめる。


 「お姉ちゃん、もうわかったから…離して。苦しい」


 「あらごめんなさい。そうだ!怪我とかしてない?誰にやられたの?」


 「だからもういいって」


 姉妹のやりとりが一区切りついたところで、岩に腰を下ろしていたエクエスが口を開いた。


 「まず訊きたいのはだな、エマとイステル…と言ったか。お前らはなぜアルヴヘイムを抜け出しアクセルを利用しようとしている?ついでになぜこの場所を知っているんだ」


 「ああ、それなら」とエマは躊躇することなく答えを返す。その乾いた笑顔にどこか投げやりなものを感じる。


 「私がこの場所を知っていたのは、仲間が教えてくれたから…いや、元仲間ね。私たちはネズベラエヌス王国という国にもオレンジ家という環境にももううんざりだったのよ。あなたもそうだったんじゃないの?」


 「オレか…そうだな。本家出身のオレが言うのもなんだが、オレンジ家の連中は対抗勢力を陥れ一部が富を得ることしか考えていない。オレはそんな環境に嫌気がさし、当時仲良くしていた他家の女性とともにアルヴヘイムを出た。その判断が間違いだとは思わないし、現に今の俺を動かしているのはあの日以来眠り続けているその女性を救うという志だ」


 「なるほどー。だからエクエスは誰とも結婚せずに百年も生きてきたんだな」


 リーテの独り言は一見見当違いのようで、実はエクエスという人生の核心に触れている、気がする。

 そういえばアクセルを利用する動機はまだ聞いていない。


 「私がアクセルを仲間にしたかったのは妹を護るためよ。イステルは自分の意志でもなくエインヘリャルと結びついてしまった。オレンジ家はそれをも勢力争いにつぎ込んでしまおうとしていた。この能力はあまりにも強力。きっとミズガルズに来ても誰かに狙われる。だからイステルを守るためにアクセルの力が必要なのよ」


 『なるほど。そんな経緯があったのね』


 「でもアクセル・ロッドとやらとはまだ出会えそうにないという話だったが」


 話を聞いていたシグルドがあくびを一つして寝起きに気だるげに言った。


 「確かにそうだ。アクセルと出会うにはまだ少し時間がかかる。ここで一つ提案なんだが…二人ともオレたちと来ないか」


 エクエスが切り出した。姉妹をはじめ全員が軽く驚く。考えてみれば特に目的のない姉妹にしてみればこのような結果になることは望ましいのだが、つい数日前まで何年も三人で暮らしてきたリーテとシグルドにとっては大きな出来事だろう。


 「あなたたちがいいのならとぜひそうしたいわ」


 「歓迎する。何をするにしても人数が多いに越したことはないからな。それに…いやなんでもない」


 「じゃあ私、リーテちゃんたちと一緒にいられるの?」


 「ええ。あなたにとっても私にとっても居場所ができるのはいいことだと思うの」


 「やったー!よろしくねリーテちゃん…とエクエスさん」


 エマとイステルの姉妹を迎えた俺たちはエクエスの目的のためニヴルヘイムを目指すのだった。


 

 

人物紹介

【イステル・オレンジ】

・姉と共にアルヴヘイムを抜け出して旅をする十六歳の妖界族(エルフ)

・長身の多いエルフでは珍しく小柄な体躯で、長い金髪を二つ結びにしている

・能力の暴走を防止するために包帯を幾重にも巻いているが、それを解くと意志の強さを訴えるつり気味で琥珀色の瞳を持つ眼があらわになる

・体内に埋め込まれた反響定位装置と、並より強い発電能力のお陰で包帯を巻いていても空間把握ができる

・性格が対照的なリーテとは意外に仲がいい

・エインヘリャル能力は「粉砕破壊」見て触れたものを任意の範囲、程度でどんなものでも破壊することができ、応用性の高さから多くの組織に狙われている

・本人は望んでエインヘリャルの能力者になったわけではない

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