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ラグナロクの鮮情  作者: 卯月 光
ヴァルキリーの秘密
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第16話 ベルセルク 前編

何かとややこしいペルソナの弟妹たちですが、個人としてではなく集団で把握していただいて問題ありません。発言者が0XXとなっている場合「この中の誰かが発言した」とでも捉えていただければ幸いです。

 金髪二つ結いの少女イステルは舞うように腕を旋回させ、自らを陥れようとした刺客たちを着実に追い詰めていく。一見思考を停止した無駄な動きのようだが「見て触れたものを粉砕する」能力を最大限に発揮できる立ち回りだ。決して相手から目を離さず、常に全員と向かい合わせになっている。

 

 「くそっ、これじゃあらちがあかない。109、作戦指揮を」


 「了解。エインヘリャル持ち二人と105は110を起こして101を抑える。110はリーテ・レティキュラータを確保、そのまま離脱。残りは時間稼ぎ。一人だけでも持ち帰る」


 まだリーテはまともに動ける状態ではない。俺も右手が動かない。


 「もう起きてますよー!」


 110は背後からメイスを振り下ろす。それを左手で受けるがこれで両腕がしばらく機能停止だ。


 「お兄ちゃん…いや、ペルソナ兄ちゃんでしたよね」


 110は不敵な笑みを浮かべる。そして俺が背を向けた方向からは…

 

 『危ない!』


 振り向いた瞬間、鎖骨をなぞる白刃。102…次いで105、107と両脇腹を斬りつけられる。

 俺の肩と両脇腹からは鮮血が滲んだ。しかし長刀の三連撃をかすり傷で耐えたのは予想外だった。


 「急所を逸れただと?チッ、陽炎か」


 『その通り、あたしに感謝しなさいね』


 ジュリィ…叶うなら涙を流して感謝したいが、そうはいかない。気を取り直し炎弾を発現、瞬時に放つ。しかし軽やかに避けられて再び挟み撃ちの陣形になる。

 

 「ペルソナ兄ちゃん、さっきのお返し。大っきいのいくよ!」


 110の飛翔、からの大打撃。これは俺でも耐えられない…


 メイスが俺の前髪まで達しようとした時、轟音と共に110が消えた。次に何かが海面に落下し水しぶきが上がった。

 俺の足元より少し先、ちょうど110がいた空中の真下には丸く穴が空いている。


 『これはあたしたちの能力じゃないわよね。ってことは』


 「まずい、第二目標が戦線復帰した」


 リーテか!もう戦えるのか…っ!

 俺の腰にリーテの手が回され、何を思ったのかその身体を俺の背中に押し当ててきた。

 体と体が密着している。いい匂い、そしてイステルを負ぶった時にはあまり感じられなかった感触が背中を包んだ。

 

 「な、何をしてるんだ!?」


 リーテは俺の肩にできた傷をゆっくり舐め、妙な色っぽさを滲ませた声で言った。ただならぬ光景と感覚に俺の体は小刻みに震え、背筋が張る。


 「わたしが普通に能力を使っても勝てる相手じゃない。だから父さんから受け継いだこの『特性』を使うんだ。それに少し…喉が渇いた」


 リーテは尖った八重歯を俺の傷口に当て、刺し込んだ。紅い血が溢れるが、リーテはそれを全て吸い取った。すると全身の気を抜くような脱力感に襲われ、俺はその場に座り込んでしまった。


 「驚かせて悪い。だがこの時まで守ってくれてありがとう。あとはわたしに任せてそこで休んでいて」


 そう言ったリーテの紅い瞳は今までで一番艶やかに、しかし凛々しく爛々と燃えていた。

 そして現れる揺らめく薄い煙のような光。この気配は俺が初の世界間移動を経験した時のグレイプニル戦闘員の二人とまったく同じもの?


 『これは…激情化…リーテも使えたのね』


 イステルもリーテの圧力に充てられ、半開きの口と見開いた目でこの光景を目撃している。戦闘中ということを忘れ去り、硬直する。それほどに奇怪に写っていることは容易に理解し共感できる。

 弟妹たちは思い思いに感嘆の声を上げるなり乱れた指示を送るなりでまとまりが薄れていく。


 だが全員の口から出た共通の言葉があった。それは俺の知らないリーテのことを指すようで黒畏族(スルト)とは違う名称、「狂血族(ベルセルク)

 

 

語句解説

妖界族(エルフ)

・ミズガルズとは違う世界、アルヴヘイムの住人

・全種族で五本の指に入る人口を抱える

・若干長く尖った耳と外見年齢の変化が緩やかな肉体を持つ

・生後数年で細胞を特定の構造に変異させるという特性がある

・どのように変異するかは家系によって異なる

・身体能力はあまり高くない


次回からこのコーナーでは人物紹介も挟んでいきますね。本日はもう一話投稿させていただきます。

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