第10話 砂と水の世界
話数表記ができてませんでした。
修正しました。
凄まじい熱気を放つ光球を浮かべる澄みきった群青色の空の下、行く先を想像しようともせず黙々と足を進める俺たち。
フードに始まり足元まで届く薄手の硬い布でできた衣服は、ミズガルズマントといい、陸地のほとんどを砂漠地帯が占めるミズガルズでは生活必需品なのだとリーテが教えてくれた。糸本来の色で織られた硬い布は日光を反射し、砂嵐から身を守る。
安全であっても、快適とはいかない。退屈という言葉が思い浮かばないほどに過酷で、ただ前を向き歩き続けることだけを考えていなければいけない。楽しみといえば食事休憩の時に軽くお互いについて話し合うことぐらいだ。
一日が経ち食料も尽きかけた昼、またこの時間がやってきた。
「ペルソナってさー、やっぱりエインヘリャル使いなんだよな」
パンと水を頬張りながらリーテがそんなことを口にした。今までそのことを聞いてこなかったのは「むやみに自分の能力を明かさない」というエインヘリャル使いの暗黙のルールがあるからだという話を聞いたことがあるのだが、暑さのせいで少し判断力が鈍ったからなのだろう。
「発火能力、だろ?もうこの際みんなの能力も教えてやろうぜ」
単なる発火だけではなく何かもっと秘密がありそうな能力なんだがな。
『じゃあシグルドの能力もわかるんだ』
それは興味深い。あの上位戦闘員との関係がある能力なのだろうか。
「オレの能力は『細胞活性化』一時的に運動能力を格段に上昇させることができる。リーテの能力は少し言い表しにくいんだが、『噴火誘発』とでも言おうか」
「そして僕は『幻術』光を使って幻を見せることができる。姿を消したのもその原理だ。なぜかペルソナには破られたけどね」
『あの男の能力は「不可視化」だからちょっと違うみたいね』
いろいろエインヘリャルがあるものなんだな。…あれ?パンがなくなった。これで最後か。
「さて、片付けて先へすすもうか。今日の夜には入り江の港町エーギルに着く。そうすれば腹一杯食べられるから今はこれで辛抱しとけ」
「港町エーギルか。楽しみだな」
「何があるんだ?」
「魚だよ!わたしたち普段ニヴルヘイムにいたりミズガルズの内陸国にいたりするから魚は滅多に食べられないんだ」
なるほど、ならば俺もしっかり腹を空かせておかないと。
『いいなーあたしも食べたいな』
味わうだけならできるんじゃないか?一応俺と感覚がつながっているわけだし。
『そうだといいけど…』
「片付いたか?さっさとエーギルに着いて魚料理を楽しむぞ」
エクエスの合図で、俺たちはまた歩き始めた。
しかし…それからが長い。あからさまに気が緩んで皆会話で体力を浪費し、この地域に慣れているリーテやシグルドさえも足が痛いだの目が痛いだの挙げ句の果てに幻覚が見え始めるという事態に陥ってしまった。空も暗まり始め俺自身も肩で息をするようになり、もう限界も近いのかもしれないと思い始めた時、エクエスが三人を振り返り喜びの声を。
「町だ!エーギルが見えてきたぞ!」
その瞬間、吹っ切れたかのように皆走り出した。細かい砂地に何度も足を取られたが、勢いを弱めることはなかった。
最初は建物が二、三件地平線に見えるだけだったのが、だんだんの数を増していきその向こうに広がる海をも視認できるほどになった。
一番手前にあった飲食店らしき建物に入ると、俺たちと同じように砂漠を渡ってきた旅人で溢れかえっていた。
とりあえず席を見つけ、シグルドがカウンターへ向かって叫んだ。
「焼き魚四人前ー」
それから力尽き、テーブルに突っ伏した。
数分後、焼き魚が運ばれてくると、辺りに香ばしい匂いが充満しシグルド起き上がった。
「あ、蘇生した」
起き上がったその勢いでフォークを皿に突き立て、できたての焼き魚を頬張った。すると、俺含む三人も同時に皿に手を伸ばし、全力で堪能しようと試みた。
「く…かはっ」
魚の身を口に含んで数秒後、向かい合って座っているリーテがいきなり身とともに吐血した。
『えっどうしたの』
「まさかこの料理…」
エクエスとシグルドの顔はみるみる真っ青になり、リーテの隣のエクエスは必死でリーテの背中を叩き、吐き出させようとしている。
「ちっ、ニンニク入りか…おい店員!この焼き魚のニンニク抜きを持ってきてくれ」
ニンニク?確かに強烈な風味ではあるが吐血するほどの刺激があるのか?
「も、もう大…丈夫…」
リーテは顔を上げて途切れ途切れに言った。




