しがない学生、運に任せる。
久し振りの投稿です。
俺は、佐々木 貴幸。
地元短大に通う、しがない学生だ。
突然だが、前回までのあらすじをざっと説明させてくれ。
つい先日、俺は運命的な出会いをした。
美しい花が咲き乱れる中、柔らかく微笑む可憐な女性。
挨拶をする声すら鈴の音の様で、俺は一目で恋に落ちた。
授業すら身に入らなくなってしまった俺は、仲の良い友人二人に相談した。
俺の深い恋煩いに胸をうたれた友人たちは、俺たちの仲を取り持とうと、俺を彼女のもとへと連れ出す。
そして、再び出会う二人。
果たして、俺の恋の行方は……!
「ちょっと!なんでそんなに話つくってるのさ!?」
「別につくってはいないぞ。ただ、少しばかり大袈裟に言っただけだ」
「うるさい!ていうか倉本!出だし早々主役を喰うな!」
神の如き読者様が勘違いするだろ!
え~~、ゴホン。
気を取り直して、皆様お久しぶりでございます。
しがない学生こと佐々木 貴幸です。
今度は正真正銘、俺です。
初っぱなから倉本がふざけてすみません。
危うく主役の座を奪われ…「だって、俺たち結構出てるクセに名前全然呼ばれなくて、作者名前忘れてたんだもん」
「言われてみれば、二話目しか呼ばれてないような…」
「てめぇ倉本!話遮んな!高橋も納得しない!文句は、有りがちな名前をてきとーにつけた作者に言え!」
……ゴホン。失礼しました。
まあ倉本の説明が、あながち間違っていないので省略して…。
俺たちは今、彼女のいる喫茶店のサンルームで、お冷やを飲みながら注文した飲み物が届くのを待っている。
注文を取りに来た女性は、残念ながら俺の想い人ではなく、ホッとしたような残念なような複雑な気持ちだ。
「でも、さっきの女の子、可愛かったよね♪」
「あ~。まぁまぁじゃね?」
「ていうか、あの子結婚してるよな?」
『えっ、うそ!』
注文表をもつ左手の薬指に、指輪がしてあったから間違いないと思う。
「そんな…。どう見ても同年代にしか見えないのに」
高橋が、ガックリしてテーブルに突っ伏した。
少し可哀想になって、フワフワの髪をポンポンと軽く叩いてやる。
「でも噂の彼女、出てくるか?」
「コレばっかりは、わからん!運任せ!」
心配そうな倉本に、俺はハッキリと言った。
なにせ個人経営っぽい小さな喫茶店だ。
そんなに人手がいるとは思えない。
さっきの女性だけで店を回している可能性は大いにある。
『う~~ん』
二人揃って唸っていると。
「お待たせ致しました」
軽やかな鈴の音が、俺の耳朶を打った。
どうやら、天は俺に味方をしてくれたらしい。
俯いていた顔を上げると、直ぐ側にお盆を持って微笑む彼女がいて、俺の心臓が止まりそうになった。