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ミジンコから始まる異世界生き残り物語  作者: 英目太郎


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第五話 進化の臨界点と巨大化

【キャビテーション・ブレード】の習得からさらに半年。幸田は、その力を駆使して次々と捕食者を討伐していった。ヒドラの群れも、大型のゾウリムシも、彼の「見えない衝撃波」の前には無力だった。その結果、【念動力】はD+、【キャビテーション・ブレード】はC-までランクアップし、進化に近づいていると信じたい。

幸田の前に現れたのは、この水域の支配者の一種、オニケンミジンコ(Cyclops Gigas)だった。体長は幸田のミジンコの三倍近く、全身を厚いキチン質の甲殻で覆っている。巨大な一対の触角と、幸田と同じく一つの大きな複眼を持つ、まさにミジンコの進化の未来図を先取りしたような姿だ。

オニケンミジンコは、その巨体とスピードで獲物を圧倒する、純粋な物理戦闘タイプだ。幸田の存在を感知したオニケンミジンコは、その強靭な遊泳脚を動かし、幸田目掛けて一直線に突進してきた。


『【危機察知】C-発動! 超越的な物理脅威!』


「今の俺のブレードなら、貫ける!」


幸田は逃げずに迎撃を選択した。全精神力を集中させ、【念動力】の最大出力で【キャビテーション・ブレード】を生成する。


『キャビテーション・ブレード(C-)! 最大出力、連射!』


ドゥン! ドゥン! ドゥン! ドゥン!


四発の衝撃波が、オニケンミジンコの正面の甲殻に集中して炸裂した。衝撃は強力だった。オニケンミジンコの突進はわずかに軌道を逸らし、その甲殻の表面には、白い凹みが刻まれた。しかし、致命的な損傷には至らない。

オニケンミジンコは、初めて受けた痛みと衝撃に激怒し、遊泳脚の動きをさらに加速させた。その速度は【高速移動(E)】を発動した幸田をも上回る。


「くそっ、硬すぎる! 物理的な防御では、キャビテーションの限界か!」


幸田は、突進をかわしつつ、前世の戦闘機動を模倣した三次元的な回避パターンを展開した。オニケンミジンコの速度に対し、幸田は【念動力】で周囲の水を押し引きし、急制動と急旋回を繰り返す。

その時、オニケンミジンコがその巨大な触角を振るった。それは幸田の回避ルートを先読みした、完全に予測された攻撃だった。


ゴッ!


幸田の薄い甲殻に、触角の先端が激しく接触した。


『致命的ダメージ! -80%HP! 甲殻破壊!』


ミジンコの小さな体は、池の底へと叩きつけられ、砂泥の中に埋もれた。甲殻は砕け、赤い心臓が露出するほどの重傷だ。意識が遠のき、強烈な痛みと、前世のタクシー事故の時の衝撃がオーバーラップする。


「……終わるのか。こんな、ミジンコのままで……」


諦めかけたその時、彼の意識の奥底で、何かが弾けた。彼の人間としての知性(Will)と、ミジンコとしての生存本能、そして一年半の戦闘経験が、一つの答えを導き出した。


「外側から破壊できないなら、内側から破壊しろ!」


幸田は、最後の力を振り絞り、微量の精神エネルギーを水中に解放した。そのエネルギーは水流に乗って、オニケンミジンコの体液に、そして内部構造に侵入する。目標は、心臓でも神経節でもない。オニケンミジンコが吸い込んでいる水だ。

オニケンミジンコが次の突進のために水を吸い込んだ瞬間、幸田の意識が、その体内で爆発した。


『【念動力】臨界点突破! B-ランクに到達!』

『ユニークスキル:【体内キャビテーション(C)】が解放されました!』


オニケンミジンコの体内で、幸田の念動力により、内部の体液が瞬間的に沸騰し、キャビテーションが連鎖的に発生した。

ブシュッ!

オニケンミジンコは、内側から爆発するような激痛に悶え、遊泳脚が痙攣し、動きが完全に停止した。巨大な体が水中に沈んでいく。


『捕食者オニケンミジンコを討伐しました。経験値大量獲得。』

『全スキルランク合計値が進化条件を達成!』 『緊急警告! 進化プロセスが開始されます!』


幸田のミジンコの体は、強烈な光と熱に包まれた。やっぱりあった。進化できるみたいだ。


「やったぞ!」


砕けた甲殻が弾け飛び、透明な体が激しく脈動する。骨格が組み変わり、体が縦に伸びる。複眼は小さくなり、代わりに二つの強靭な目を持つ頭部に変化する。遊泳脚はさらに発達し、尾棘は硬い装甲板に包まれた。

数分後、水底の光が収まったとき、そこには数ミリのミジンコの姿はなかった。

体長約1センチ。全身は濃い緑色の分厚い甲殻で覆われ、水中を高速で滑空するための流線形。幸田は、より強靭な体を持つ


「強化型ケンミジンコ(Cyclops Forte)」


へと進化していた。


『進化完了。種族:強化型ケンミジンコ(Cyclops Forte)。』

『HP、防御力、移動速度が大幅に上昇しました。』


「これが……新しい体か。」


幸田は、前世の記憶を保ったまま、新たな甲殻と遊泳脚を動かした。その力強い動きは、ミジンコ時代の比ではない。

だが、人間への道はまだ始まったばかりで、その道のりは果てしない。


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