第二十二話 次元の解析と最後の理論
幸田の研究室は、高度な科学機器と、複雑な幾何学模様が刻まれた魔法陣が共存する異様な空間だった。彼の目標はただ一つ、「転移魔法」の仕組みを完全に解明し、それを「次元魔法」へと昇華させることだ。
幸田は、この世界の基本的な転移魔法の魔法陣を、地球の量子力学と相対性理論の観点から解析し続けた。
1.科学的解析:
o転移魔法の魔法陣は、幸田の目には、「四次元空間における座標軸の複雑な回転」として映っていた。それは、ワームホールやブラックホールの特異点理論に酷似していた。
o幸田は、【空間把握(S)】を最大限に活用し、転移の瞬間に起こる空間の歪み(時空のしわ)をナノメートル単位で測定し、その数学的モデルを構築した。
2.魔法技術の融合:
oこの世界の転移魔法は、空間を折りたたむために「エーテル」と呼ばれるこの星特有の魔力を使用していた。しかし、そのエーテルは次元間の壁を越えるほどの出力は持たない。
o幸田は、彼の持つユニークスキル【炎の抱擁(S)】の「純粋な熱エネルギーの変換」能力に注目した。彼の炎は、物質を原子レベルで分解するほどの純粋なエネルギーであり、エーテルとは比較にならない破壊力を持っていた。
そして、指導開始から200年と1年目、幸田はついに、この世界の科学者や魔術師たちも誰もたどり着けなかった次元魔法の理論を完成させた。
【次元移動理論:時空炉の概念】
「次元の壁とは、途方もないエネルギー密度の時空連続体の障壁だ。それをこじ開けるには、宇宙の根源的な力が必要となる」
幸田が導き出した理論は、以下の三つの要素を組み合わせたものだった。
1.座標の特定: 【空間把握(S)】を用いて、地球の三次元座標と時間軸座標(すなわち、帰還目標の時空座標)を正確に特定する。
2.空間の折りたたみ: 既存の転移魔法の魔法陣を応用し、この世界の空間を目標座標の近くまで折りたたむ。
3.障壁の破壊: 【炎の抱擁(S)】のエネルギーを、幸田の竜体内部に持つ魔力炉で極限まで凝縮し、次元の障壁を熱線で焼き切る。
幸田は、研究室の黒板に、壮大で複雑な数式と魔法陣を書き終え、満足感から深い息を吐き出した。
「長い旅だった。ミジンコから始まり、竜となり、神となり、そして今、人として、俺はついに帰還への道筋を見つけた」
彼は窓の外を見つめた。人々が忙しなく行き交い、笑い、喧嘩し、そして愛し合う、彼が創造した美しい文明。
「ありがとう、俺の家族。お前たちのおかげで、俺は孤独を乗り越え、そしてここまで来ることができた」
彼の瞳は、もはや哀しみや絶望の色ではなく、故郷への強い憧憬と、未来への希望の炎に満たされていた。
『最終試練:時空炉の起動と超次元転移の実行。』
『この星を去る時が来ました。』




