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ミジンコから始まる異世界生き残り物語  作者: 英目太郎


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第十五話 天空からのまなざし

『種族:【炎獄竜イグニス・ドラゴン】。活動開始。』

幸田博は、自らの新しい体を、静かに、しかし深い感動をもって動かした。強大なタイタン・ベヘモスの亡骸の上で、彼の巨大な竜体が目覚める。

彼はまず、足元の重力を感じ取った。前世の地球(1G)と比べて、この星の重力は約1.2Gだ。ミジンコや幼生だった頃は、そのわずかな違いすら生存の重圧として感じていたが、今の竜体には、それがむしろ心地よい負荷となり、筋力を漲らせる。


「地球よりも重い星か……それで、こんなに巨大な生物たちが存在する。生態系が桁違いだ」


次に、彼は深呼吸をした。彼の新しい竜の肺が、周囲の空気を猛烈な効率で分析する。


「酸素濃度が、地球の約25%増し……窒素との比率も違う。この高濃度の酸素が、俺の【炎の抱擁(S)】の火力を支えているのか。これでは、火炎の勢いが地球の比ではない。まさに、炎の星だ」


幸田は、その巨大な翼を広げ、初めてこの世界の空へと飛び立った。

バサアアアアッ!

たった一掻きで、彼の竜体は数十メートルの高度へと上昇する。空気抵抗など皆無に等しく、彼はかつてミサゴに攫われた時とは比べ物にならない、絶対的な自由を掴んだ。

さらに高度を上げ、彼は眼下に広がる世界を俯瞰した。

そこには、彼が百年もの間、その水域の周囲しか知らなかった世界が、信じられないほどのスケールで広がっていた。

眼下は、どこまでも続く壮大な森だった。その森の木々は、地球の針葉樹や広葉樹とは全く異なる、鮮烈な青緑色をしていた。光合成のメカニズムが違うのだろう。その巨大な樹冠は、まるで絨毯のように地面を覆い尽くし、その広大さは大陸の端を想像させる。

風に乗って上がってくる匂いは、これまで彼が知っていた泥の生臭さや焦げた肉の匂いではない。それは、濃密な樹液と、熱を帯びた鉱物の匂いが混ざり合った、太古の生命の鼓動のような独特な芳香だった。

幸田は、さらに数キロメートル上昇し、大気圏の薄い部分へと到達した。

彼の目の前に、この惑星の丸い姿が、宇宙の暗闇の中に浮かび上がった。地球よりもわずかに大きい程度の、しかしその表面は、濃い青緑の森、オレンジ色の広大な砂漠、そして巨大な白い雲で覆われた、荒々しくも美しい生命の星だった。


「あれが、俺がいる星……。地球とは似ているが、全く違う。そして、あの巨大な森……そのどこかに、人類はいるのか?」


幸田の瞳が、知識と好奇心の炎で燃え上がった。

ミジンコ時代から彼の目標は「帰還」だったが、「人類の文明」の存在は、彼の知的好奇心と孤独を強く刺激した。この広大な世界で、もし彼と同じように、文化を持ち、言語を話し、複雑な思考を持つ存在がいるなら、彼らから次元魔法の鍵となる知識を得られるかもしれない。

彼は、その巨大な竜体を宙に静止させたまま、森の彼方に広がる平原、そして遠くの山脈へと、その視線を向けた。


「あの森を抜けたら、何がある? 鉄やガラスの文明か、それとも石と火の文明か……」


彼の知性は、この広大で残酷な世界で、たった一人で生存を続ける中で、常に人間としての知識と文化を求めていた。

幸田は、翼を大きく羽ばたかせ、青緑の森の上空を、東へと向かって飛翔し始めた。


「俺の孤独な戦いは終わった。次なる試練は、この世界の文明との邂逅だ!」


彼の体から放たれる熱線のような炎の吐息が、夜空に一筋の赤い線を描き、強大な炎獄竜の新しい旅立ちを告げていた。


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