尊厳
ガラガラと古い行き止まりの病室で
甘い煮豆が食べたいと あなたはいった
知恵わすれの壁掛け時計に 散々 眠らされ
生きるとは この際どうしてもあか抜けない
スーパーの金時煮豆をあたえたら
あなたはかわいそうに おかわりをねだる
目は どうぶつのように 暗く 黒く
わたしの手は いつも空どうを握らされる
いつか 煮豆を折角手作りした日
あなたは 無邪気にそれを食べ残した
汚すようにひと粒 半端に口をつけ
世界一愚かな うすわらいを浮かべた
帰宅して ひとりタッパーを取り出せば
くだらない命が いっぱい いっぱい
形はとぼけていて 集まり方はいやしくて
朝にはわたしの可愛い赤ちゃんだったのに
全部全部 侮辱したいのは大好きなひとだった
うたた寝の消毒剤が こっくりと日を進め
あなたの肉体はそして洗練されていった…
明日もわたしは 煮豆を持ち込もう
さいごの尊厳が立ち昇る この行き止まりの病室に