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「厄介ね」
さおりが渋い顔で唸る。
「さおりじゃない! 主、さおりが遊びに来てる時に妾を呼ばないのはなぜ? 妾ちょっと傷付いた」呼びもしないのに何時ものように麒麟が勝手に出てくる。
「麒麟、ごめんね。ちょっと大切な話をしててさ」
「え? さおりは悪く無いよ。でも、大切な話は終わった?」
「うん」
「じゃあさおり、妾とお話ししよう」
麒麟の顔がパッと明るくなる。
「麒麟、今日は遅いから明日にしろ」
「えー。 主の意地悪」
「明日おやつ買って来るから我慢して」
「妾、あの香り付いたお線香がいい。あの香り落ち着くの。それに食べ物食べないし」
「それもそっか。でもあれで良いの? ならまだあるから明日朝一で来るよ」
「えー、今日泊まって行けば」
「ごめんね。今日は帰らないといけないの。お父さんから電話入る日だから」
麒麟が落ち込んでしまう。しかし本当にこいつってモンスターなんだろうか?
まるで生きてる人見たいな行動や言動だ。もしかしてモンスターって昔は人だった。なんて落ちはないよね。
◇◇◇◇◇◇
群馬の協会支部に来ると朝日 徹也の妻、洋子と朝日 徹也の両親が揃っていた。
「おはようございます。二前さん、今日はよろしくお願いします」
「お願いします。それで協会の連絡係はどなたになりますか?」
「私が行います。
現在、協会の人間がダンジョンで入るのを止めています。3日前から封鎖を行い、ダンジョンに入った者全て、出ているのを確認しています」
「わかりました。これから向かいます。
今日の日程ですが、ボス部屋まで向かって入る予定です。
そこで何も無かったら明日以降、ダンジョントラップの可能性を考えて探して行きます」
「あの、たった1日でボス部屋に行けるものですか? 通常、パーティーを組んでも2~3日はかかると聞いてますけど」
朝日の両親が凄く不安がっている。
「朝日さん。この方は秋田のSランクダンジョンのモンスタートレインをたった1人で止めた実力者です。
もしかすると半日とかからずに、ボスまで行くかもしれません」
職員が説明する。
「「「え?」」」
朝日 洋子を初め、両親も揃って驚いていた。
ダンジョンに向かうとすでに複数の協会職員が朝日 徹也のパーティーメンバーとおぼしき冒険者達と待っていた。
「おはようございます。二前 宏です、早速ですが中に入りたいと思います」
「二前さん。私は朝日 徹也が所属しているパーティーリーダーをしています。どうかよろしくお願いします」
それに合わせパーティーメンバー全員が頭を下げる。
「出来るだけの事はします。
約束です、私が中に入ったら誰もダンジョンに入れないで下さい。
勝手に入った場合は命の保証は出来ません」
「心得てます」
ポーターバックを持ちダンジョン入る。少し進み曲がり道で止まるとブルーとキリーが出て来た。
「ギャァ!!」「グポ!!」
出入り口に行くと、協会職員2人が付いて来たようで両腕を斬られたり、首の前を半分近く斬られたりしていた。
「すみません、この方達をお願いします」
突如ダンジョンを出てパーティーに声をかけたせいかかなり驚いていた。が、職員を見てさらに驚きの声を上げていた。
その後、職員の責任者がすっ飛んで来た。
「大変申し訳ありません」
「かまわない、それより救急車と応急措置を。こうなるから誰も入れるなと行っていたのに」
俺の呆れた声を聞いていた職員とパーティーのメンバーが完全に引いていた。元々何かあった時の為に医師と救急車は来ていたらしくその場応急措置を行い、救急搬送された。
「この次は助けませんからね」
そう言ってダンジョンに入る。ダンジョンの中でキリーとブルーが待っていた。
「ありがとうな、殺さないでくれて。じゃ、行くぞ」
「「シャー」」
曲がり道まで来る。
「さて、出ろ」
その声で皆がそろう。
「これからトラップにはまらないようにボス部屋まで行く。
モンスターの処理は全てお前達に任せる。
行くぞ」
「「「「「「オオー」」」」」」
ダンジョンを歩き始めると麒麟が近付いて来た。
「主、のんびりで良いの?」
「問題無い」
「助けなくても?」
「生きてるなら見つけるのが1日2日延びても、生き延びてるよ」
「それもそうだね。もし、死んでたらそれまでの運命だった事だね」
先頭はダンジョンモンスターとの戦いになってるようだが、ワータイガーのトラオとケンタウルスのケンタ、デュラハンのレットが中心になって進んでいく。
所々で、落ちた魔石やドロップアイテムなんかをコングエイプが持ってきてくれる。
こいつは本当にいい子だ。
順調に階層を上り続けるとボス部屋の階層までくる、その階層は蛇達の階層だ。
それまで後ろにいた朱雀が前にでて、大岩、ワニ、大ちゃんがそれに続く。
飛び出して来る蛇のモンスターを朱雀が焼き付くし、下を這うようにやってくる蛇のモンスターを大岩とワニがその巨体で踏み潰して進む。
「ねえ、主。ここのボスって蛇なの?」
麒麟がふわふわと浮かびながら俺の首元に抱きついてくる。
「確かそうだ。7首大蛇と言ってここ30年は討伐された記録もないよ」
「7首大蛇? 首が7つもあるの? どうやってご飯食べるんだろう。ね。主、不思議じゃない」
お前の心配はそこかい!




