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家に戻るとゆっくりと家でのんびりとする。
当分ダンジョンには入りたくない。そんな思いで一週間程を過ごしていた。そして新たに仲間に入れた麒麟が俺の部屋限定でちょくちょく出てくるようになる。
「ねぇ主。ちょっと聞いて良い?」
「あのな、お前は何時でも何処でも出てくるじゃないよ。他の人からしたらお前の魔力や存在感は半端ないんだぞ」
「大丈夫だよ。妾が出るのは主が1人の時だけ」
フワフワと浮きながらすました顔で俺を見ている。
「それで用事ってなんだ?」
「キリーの事なんだけど。何で何時までも弱い状態なの?
リッチは超強いのよ、あの黄龍よりも強いんだよ、全ての死霊系のトップに立ってるんだよ。
何時までも弱いままだと可哀想だよ」
「やっぱりそうなんだ。何かキリーを見てると何かに縛られているように感じるだよな」
「でしょ、多分だけどキリーとホーンアンデのホーンとレイスのブルーは1つの魂のはずだよ」
「え? 麒麟、どういう事だ」カバっと振り向き麒麟を見る。
「妾が感じるにはキリーとホーンとブルーはお互いの魂で結び付いてる。
だから、キリーの縛りを取ってあげれば元の強いリッチに戻るよ。凶王リッチ、これが本当の名前だよ、リッチは凶暴凶悪な死霊王だよ」
そうなんだな、何時も3匹で固まっているのはそう言う意味もあったのかも知れないな。
「ところで、麒麟。何でお前達って話ができるの?」
「え?
う~ん。
う~ん。
う~ん。
わかんない。元々最初から人の姿になれるし、妾達が集まると結構人の言葉で話をしたりしてたから」
そうなんだ。本人がわからないなら仕方ないか。
「麒麟、キリーがどこに縛られているかわかるか?」
麒麟が浮かびながら上下を逆にして頭を下に、なぜか胡座を組んで座りながら全国のダンジョン地図を見る。
「あった、ここ」
指をさしたのは北海道にあるダンジョンだ。以前はAランクダンジョンだったがここ10年、見直しがありBランクに落ちたダンジョン。
そしてボス部屋が二つあると言われる曰く付きのダンジョンでもある。
北海道か、予定組んで見るか。
その日、以前住んでたマンションに来て管理人室に来た。
「ばあちゃんいる?」
「はぁ~い」
うん、若い声だ。
「あ、コウちゃん!」
「ああ、サチエちゃん。来てたの?」
「コウちゃん、秋田のダンジョン大丈夫だった?」
「あ、モンスタートレイン発見したのやっぱりサチエちゃんだったの」
「さちえ。コウ君もそんな所にいないで上がったら」
「あ、おばさん?」
「コウ君、久しぶり!」
どうやらばあちゃんが体調を崩しているようで最近サチエちゃんのお母さんが管理人室にいるらしい。
「ちょっと。サチエから話し聞いたよ。凄いじゃない」
「そんな事無いですよ」
それから久しぶりの再会で盛り上がった。
「コウ君。当分私達がここにいるから何時でも遊びにおいでね」
「わかりました。おじさんも日本に戻ってるの?」
「うん、でも今度は台湾に移動。アメリカは寒かったから喜んでるよ」
「え、そうなの?」
「そうなの、住んでた所が結構緯度が高くてさ、北海道と変わらない場所だったから寒かったよね」
サチエちゃんもうんうんと頷いている。
マンションを出て、やっぱりと言うか当然と言うか何時ものラーメン屋にくる。
ここは何時でも行列だ。行列に並び40分程で中に入ると何かお店の雰囲気が違っている気がした。店舗じゃ無いと思う。
そう思い店長を見る、パンチパーマになってる。いや男性従業員が皆パンチパーマだ。
イメチェン?
「コウ、今日は休みか?」
「ハイ。やっぱりここに来ないと落ち着かなくて」
「ハハ。今日、さおりちゃんは?」
「学校です。もうすぐ進学先を決めないと行けないので結構大変みたいですよ」
「え? 大学行くのかい。
コウ、お前捨てられるなよ。あんな可愛い娘そうそういないぞ」
「そうですね、捨てられたらここで雇って下さい」
「断る、お前が入ると賄いだけで店が潰れてしまうよ」
そんなバカ話で盛り上がる。普通の日常って良いな、でも何でパンチパーマになったかだけは聞けなかった。
ある日、東京にあるSランクダンジョンに来ていた、協会からの依頼でダンジョントラップを潰して欲しいらしい。
俺も良く分からないがダンジョントラップでモンスター溜まりに移転するのは基本的に一回だけなのだとか、そこでわざと罠にはまってトラップを潰して欲しいと言うのがその依頼だ。
もし、何度潰してもトラップが発生する場合は特殊トラップと言われるものなのだとか。
まあ、今日も今日とて1人で入る。ボッチ冒険者の宿命だよね。ダンジョンに入って直ぐにモンスターの集団を発見、シルバーウルフとポイズンスパイダーの集団だ。
するとシルバーウルフが一匹前に出て体を横に向けて立つ。
これは相手に対し敵意がない事を示す行動だ。




