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Cランクダンジョンを進む。
出てくるモンスターのほとんどをコングエイプ2匹とシルバーウルフ35匹が倒して行く。それも其々の階層の全てを回り尽くして倒して行く。
以前キリーと会ったあの辺砂漠の階層に入るとムカデとさそりを中心とした、虫系モンスターが出る。コングエイプとシルバーウルフが嬉々として虫系モンスターを倒す。
「凄いね、コングエイプとシルバーウルフも連携取れてるね」
さそりが物凄く感心していた。
「そうでしょ、モンスター達も他のモンスターを倒すとレベルアップするみたいなんだよね。もう少し強くなってもらわないとな」
「これでも弱い方なの?」
「大鎧熊もそうだけどSランクダンジョンに入ると雑魚扱いだ。
クリスと対峙した時はシルバーですら動けずにいたよ」
「クリスってそんな強いの」
「ああ、Sランクダンジョンのボスの次位じゃないかな。そう思わさせられる位に強いよ」
そんな話をしつつ蜥蜴のエリアにくると一旦配下を常闇の寝床に戻す。
「さて、さおりの刀の威力を確めようか、ここの蜥蜴は亀系モンスターの次に硬いらしいから、試し斬りには丁度いいと思うよ」
「そう、じゃやってみようかな」
さおりが前を歩き木蜥蜴を探す、岩影から木蜥蜴が飛び出して来るがそこに合わせ刀を振り下ろす。
スパッ。
余りに切れ味がいい刀で斬られた為か、木蜥蜴が何事も無かったかように10秒程動いてから体が真っ二つに分かれる。
「す、すっご!? え? 凄すぎるんだけど」
でも刀を使ったさおりが一番驚いていた。
「信じられない。お母さんの刀と比べ物にならない位に良く斬れる」
この日、岩蜥蜴の階層をとばして、火蜥蜴の階層に入り、さおりがひたすら火蜥蜴を狩り続けてダンジョンを出る。
帰り、改めて刀を見たさおりが驚いていた。
「あれだけ斬ったのに刃こぼれ1つ無い。この刀優秀過ぎでしょ」
そう言って驚いていた。
その後、協会で其々取った魔石等を卸す。さおりも火蜥蜴を散々倒した事もあって結構な額になったようで晩御飯おごるよって、上機嫌で言ってきた。
それから数日後。都内のSランクダンジョンに来る、その日は協会職員がダンジョン前で待っていた。
「おはようございます」
「おはようございます。コウさんとさおりさんですね」
その職員は初めて会う職員だった。その後の説明で職員はダンジョンに入らないそうで定期巡回の腕章を渡される。
「以前、コウさんがダンジョントラップにはまったと聞きました。
万が一、ダンジョントラップにはまった場合はダンジョンを出て報告をお願いします、ダンジョントラップは一回はまって終わる物と何度も起きる物とあります。
ここのダンジョンは全然わかっていない事が多くあります。出来るだけ回数を多く入って頂きたいのですが、無理だけはしないでください」
「ちなみに、職員の方は誰も入らないのですか?」
「はい、すいません。実は東京支部でSランクに入れる職員は留萌 長と留萌 真美の2名しかいないのです」
歯切れが悪い答えだ。
「わかりました。気にしなくて大丈夫ですよ」
「察して頂けると有難いです」
「ここで真美さんの体に何かあったら大変ですからね」
実は、日丘 真美こと、留萌 真美さんは現在妊娠中なのだ。以前のクラン優美との話し合いの時もまだ安定期に入っていない日丘さんの体調を気遣っての事だ。
ダンジョンに入ると直ぐにみんなを出す。
クリス、シルバー、ロック、サリー、からしの5匹が中心になって進む。
2階層に入って直ぐクリスが動きを止める、やはり俺にはわからないトラップがあるのだろう。
クリスが俺を見る。明らかに緊張した顔だ。
「クリス、行くぞ。お前達も気を引き締めろ。モンスターハウスだ」
クリスが空間を切り裂くように前足をふる、すると空間が広がり俺達と日本鰐亀の群れが睨み合うように対峙する。
なる程な、クリスも亀系は苦手なようだ。俺がクリスの前に立つ。
「さおり、サポート頼む。シルバー、氷のブレスだ」
シルバーが息を大きく吸って最大級の氷ブレスを出す、その様子を見ていた日本鰐亀達が一斉にシルバーに襲いかかる。
「クリス、岩弾」
シルバーがはく氷ブレスによって日本鰐亀の動きが鈍る、そこにクリスの岩弾が炸裂。日本鰐亀達の真ん中に穴が空いたように空間が出来た。
刀を抜いて突進、俺の後をロック、からし、コングエイプ、大鎧熊が続く。
新しい刀はダンジョン鉱石より硬いと言われる日本鰐亀の甲羅を紙でも斬るかのようにスパスパと斬り倒して行く。
倒し損ねた物をロックとからしが中心にひっくり返していき、そこに大鎧熊やシルバー達が噛みついて倒す。
さおりが俺に追い付いてくる。奥にボスがいた、日本鰐亀は体長が長くて2mとされていたがボスは3mを優に越えるサイズだ。
さおりがボスと対峙する間に俺達が残りの日本鰐亀を全て倒す。
トラップにいた日本鰐亀を全て倒しさおりを見ると、ボス亀との対戦も終わりに近付いていた。
日本噛みつき亀は水の中でのみ早く動くが、この日本鰐亀は水中でも陸上でも動きが早い。
そのうえ性格は狂暴で貪欲、一度狙いを定めた獲物は何時までも追いかけると言われるしつこさを持つ厄介ものだ。
さおりと日本鰐亀の戦いも終わりを迎える。最後の力を振り絞り突進してくる日本鰐亀をかわし、攻撃するために伸ばした日本鰐亀の首を刈り取った。




