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「任せておけ、でも珍しい魔石だな。手で持つとひんやりとする。
でもこれは良いものが作れる。
金額はコウと同じだ、おねぇちゃんには高い買い物だけど大丈夫なのか?」
「ハイ、両親からも了解もらってます。Sランクダンジョンの鉱石なので一生物ですから」
そう言うと契約書にサインする。
「あ、日丘って理事の?」
「ハイ」
「なら問題無い。出来たら連絡するから楽しみにしててくれよ」
すると3週間程でさおりに連絡があり、一緒に刀を取りに来た。
「お、コウ、さおり。良く来てくれた」
そう言って出来た刀をさおりに手渡す。
さおりが刀を鞘から抜く、刃はダンジョン鉱石独特のくすんだ銀色でうっすらと青白く輝く。
「驚くのはまだ早いぞ。魔力を通してみろ」
鍛冶士のおじちゃんが興奮しながらさおりに話す。
それを聞いてさおりが魔力を循環させると刀が青色の冷気を放ち刀を覆いだす。
「なんか、凄!」
「どうだ本当に凄いだろ。コウが持ってくる魔石は凄く澄んでいて、魔力が溢れる物ばかりだ。
本当に良いものが作れる。コウ様々だぜ」
そんな話をしていた時、リッチのサリーが何かに反応する。本当に俺に対する視線や言葉にかなり敏感だ。さおりが刀をしまい、俺のポーターバックにしまっていると、物凄く不機嫌そうな3人の冒険者が来る。
「おい、何でお前らだけ刀を買えるんだ? おかしいだろうが」
呆れた顔の鍛冶士が俺達の前に出る。
「だから言ってんだろう!! ダンジョン鉱石の扱いを知らねぇ奴に造る訳が無いだろう。
もっと腕をあげてから文句言いやがれ」
「こ、こいつらは扱えるって言うのか?」
「馬鹿にしてんのか?
お前らと違いこの2人は才能があって努力してる。お前らにも言ってるだろ。
この刀で巻き藁斬ってみろって」
「馬鹿じゃねぇのか? 出来る訳が無いだろうが、大体刃の無い刀でどうやって物を斬るんだ? どう考えたってあり得ないだろう」
「なら、俺がやってみようか」
そう言うと鍛冶士のおじちゃんと冒険者の間に割って入る。
「論より証拠。実際に俺がやってみるよ」
鍛冶士のおじちゃんから刃の無い刀を借りる。
「ちょっと待て」
そう言うと3人が刀を手で直に握って斬れない事を確認する。
「ふん!」
リーダー的な男が腕を組んで俺の事を見る。
「じゃ、やるぞ」
俺と巻き藁を囲むように冒険者達が立つ。刀に魔力を循環させる。
上段に構え一気に振り下ろす。
スパ! ドタ。刃の無い刀で巻き藁を一刀両断すると斬れた巻き藁が地面に落ちる。
「「「は?」」」
3人があり得ないといった顔をして落ちた巻き藁を拾い見る、斬られた事で表面が軽く熱を持ったようだ。
「ダンジョン鉱石を扱うには技術が必要だ。あんたらにも可能性がある、がんばる事だ」
「お前ら2人していかさましたんだろう? 絶体にそうに違いない」
「やめろ。こいつは本当に斬りやがった」
「でも」
「でもじゃない。断面に触れてみろ、若干だが熱を持っている。
実際に斬らないと出ない熱だ」
俺達に絡んで来た冒険者達が静かになってしまった。
協会本部を出てさおりと2人でCランクダンジョン、双頭の大蛇のダンジョンにくる。
「ねえ、何でCランクダンジョンにしたの? どうせならSランクダンジョンが良かったんじゃないの」
俺がCランクダンジョンを選んだ事がさおりとしては不満のようだ。
「いきなり、Sランクダンジョンで連携なんて出来るわけ無いでしょう。俺はこう見えて結構慎重なの」
ダンジョンに入るとアンデット系のモンスター全てが俺の前で平伏している。
「出ろ」
クリスタルウルフのクリスを先頭にシルバー、からし、キリー、ロック、太郎、次郎。その後ろにシルバーウルフ、大鎧熊、コングエイプ達が姿を現す。
「あの~。なんか仲間増えてない?」
「紹介する。
クリスだ、Sランクダンジョンにしかいないレアモンスターのクリスタルウルフ。
こっちがダンジョントラップにはまって、仲間にしたのがシルバー、太郎、次郎を始めとするシルバーウルフ達だ。
ちなみにさおりの刀の魔石はシルバーの物だ。後はその他大勢だ」
するとシルバーがさおりの前で腹を出し、絶対服従を誓っていた。
「コ、コウ君。モフモフ増えたね」
さおりが目を♡にしてシルバーウルフ達を撫でまくっていた。
「ハァ、癒されるぅ」
さおりがシルバーに抱きついているうちにシルバーウルフ、コングエイプ、大鎧熊達にアンデット系を全部倒させる。
「さおり行くぞ」
「待って、も少しシルバーのエキス吸わせて」
そう言ってシルバーのお腹に顔を埋めているさおりを他のモンスターが神妙な面持ちで見ていた。
「なあ、他の奴らが引いてるぞ」
「んへ? しょ、しょうがないなぁ」




