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いつものようにコングエイプがクリスタルウルフの魔石を持って来てくれる。
コングエイプの頭を撫でてお礼を言う。
「いつもありがとう」
それを見たシルバーウルフ達が羨ましそうにコングエイプを見ていた。
「よし、時間も遅い、帰るぞ」
クリスタルウルフを連れてダンジョンを出る。そこでダンジョンに入るパーティーとすれ違った。ダンジョンを出る前でみんなを常闇の寝床にしまった後で良かった。思わずほっとしてしまった。
夜、家で晩飯の準備をしているとさおりが来た。
「コウ君どうだったAランクダンジョン?」
「いや、最悪だった。あの職員達は正直最低だったよ。でも、Aランクダンジョン自体は楽しかったよ」
「そんなに嫌な職員に当たったの?」
初対面の職員達から言われた事をそのまま伝える。
「あんたが伝説のFランク? 初めて見た、ウケる」
「あんた、意気がってるけど協会の手助けがないと意味ないっしょ、俺達のお陰で今まで生きてきたんだよ。そこん所を理解しろよ」
「所詮、会長の気分で冒険者やらせてやってるだけなんだから意気がるなよ」
「お前、私らに逆らったらわかってんだろうな」
「とかな、色々言われたよ。
そのくせ、自分達は何も鍛えていないからあっさりとモンスターにやられて病院行きだよ」
「うん? もしかしてモンスターが沢山いる場所を行ったの?」
「な、なんのことでしょう。僕わかりません」
棒読みする俺を見てさらにさおりが呆れていた。
「まぁ、腹立ったのね。しょうがないけど。
でも、あんまりやり過ぎると職員から嫌われるから注意してね」
「ハイ。以後気を付けます。
あ、そうだ。
俺とさおりにSランクダンジョンの調査依頼が来ていた。学校の連休を当てダンジョンに行かないといけないね」
「うん、協会からも連絡きたよ。後2ヶ月で夏休みだから、夏休みの間に行こう」
「そうだな」
「あ、それと夏の花火大会がここの近くで有るの。その日だけは予定開けておけって、お父さんから言付かったよ」
「花火大会?」
「そう、来月と再来月は結構多いんだ」
「でも、何処で見るの?」
「え? ここのマンションの屋上。結構見晴らしが良くて花火は結構見えるの。
それに冒険者協会は都内のほぼ全ての花火大会の協賛してるからね、役員を勤める理事の人達は花火大会が近付くと仕事どころじゃないのよ」
知らんかったよ、何やら面倒な事もありそうだな。人付き合いの苦手な俺にはやなシーズンになりそうだ。
「で、さおりがこの時間にくると言う事は晩飯食わせろと言うことか?」
「へへ」
のやろう。始めから晩飯目当てか。
「1人分しか無いから、コンビニでも行って何か買うか」
「え? そうなの?」
「当たり前だろう。何時までもあると思うな親と金。買わないと食い物無いのよ」
さおりが怪訝なな顔で俺を見ていたが、2人でコンビニに出かける。すると直ぐに俺達を尾ける奴に気付く。
「コウ君!」
「後ろは見るな。このままコンビニ行く」
「う、うん」
さおりが緊張してか羽織っていた薄手のカーディガンの手を持って少し緊張し始めた。
それから10分程歩きコンビニに来る、何時もより何倍も遠回りしてからコンビニに入る。惣菜やお菓子を買いコンビニを出る時に尾けて来た奴とすれ違う。
このタイミングですれ違ったと言うことは交代したか?
そう思ったが関係なく、来た道と違う通りを通って家に戻る。部屋に入って直ぐに買った物をさおりに預けてジョブをアサシンに変える。
こっそりと家を出て尾けている奴の近くに陣取る。
「なあ、やっぱり日丘 さおりはあの男に騙されて無いか? どう見ても、おっさんが女子高生を騙してるようにしか見えないんだけど」
優美と言うクランの主要メンバー達が集まっていた。
「口を慎め。日丘 さおり自身がAランクの上位冒険者だ。ファッションだけ気にしてダンジョンに入るお前達とは違う感覚を持っている。
何時も言ってるだろう、どんな相手も侮るな」
「しっかし、本当に東京支部つくってそこの責任者に日丘 さおりを置くのか?
確かにモデル並みに綺麗だしセンスも良い、でもその条件に伝説のFランクを入れないといけないと言うのは、納得がいかない」
何かさおりが褒められるのは悪い気がしないな。
「まあ、良い。今日は戻るぞ、明日面会出来るように協会には伝えてある」
そんな話をしてこの日は帰っていった。
しかし、クランの加入条件に伝説のFランクを入れる?
さおりは全てのお誘いは断った、そう言ってたはずだ。それとこれ以上付きまとうなら法的処置を行うとも協会を通じて伝えている。
翌日、さおりに付き添って協会にくる。部屋を借りて何時もつけてくる優美のメンバーとの話し合いだ。
さおりが俺と一緒に来た事に優美のメンバー達がざわめきだす、そこに留萌さんとサナエさんが入り話し合いが行われることになった。
留萌さんが簡単な挨拶を行って話し合いが始まるあ。
「今日はクラン担当職員が体調不良でお休みしてます。代わりに我々2名が立ち合います。
話し合いの内容は記録させて頂きますのでよろしくお願いします」
すると優美のクランメンバーの1人が立ち上がる。
「俺達は今までの冒険者とは一線を画する、そう言う存在だ。
格好良くて、強くて、みんなの憧れでありみんなに夢を持たせる。そう言う冒険者の集まりだ。
だからおっさん!! あんたは最初から必要ない、出ていってもらえるか」
何故か俺に指をさして文句が出る。




