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次の日、朝一でコボルトダンジョンに来た。


ばあちゃんの心配は嬉しい。けど生活の為にはもっと稼がないといけないし、それと俺は絶対に金持ちになって、あの親戚連中の鼻を明かしてやるんだ、それだけは何があっても譲れない。


ダンジョンは平日は空いている、まして朝一でほとんど人もいない。ダンジョンに入り走りながら階層を下りて5階層にくる。


ボス部屋に一組のパーティーがいた。俺よりも早い奴らがいたらしくボス部屋の前でたむろしていた。だがこいつらがいると言うことはすでに先に別の奴らがボスに挑戦していると言うことだ。


仕方なく、パーティーの後ろに並ぶ。


「あんた、順番待ちか? 他のメンバーの為にわざわざ場所とりか?」


前にいるパーティーの女に声をかけられた。


「俺はソロだ」


「は? 1人でボスに挑むのか?」


そこまで言われて、このパーティーが協会の出張所からレンタルした武器や防具では無いことを理解した。


つまり、ある程度長い期間冒険者をやってるベテラン達だ。俺の装備はレンタルした革の胸当てとバトルナイフだけだ。


「生き急ぐなよ。お前達みたいな連中は長生き出来ないのが多い」


「そうか、忠告ありがとう」


ボス部屋が空き前のパーティーが入る、それから時間を潰して開くのを待つ。


やっと俺の番が来た。


コボルトが俺を見て何か考えているのか、観察しているのか? 相変わらず自分から動く事がない。


コボルトの真っ正面から、勢いを付け突進。カウンターを合わせるようにコボルトの攻撃が来る。


「縮地」


コボルトの攻撃をかわし右横に移動、コボルトの首と胸を挟むようにバトルナイフを深々と刺し込み倒す事に成功する。


頭に機械音が流れる。それにあわせて武道家に職業を変更。


「単独でボスを倒し、また討伐時間が10分かかっていません。


特別ボーナスが加算されます。ボス討伐の経験値は入りませんがレベルが15上がる事になります」


名前 二前(ニノマエ) (コウ)


職業 武道家Lv233


【剣士Lv300 ポーターLv228 ゴミ拾いLv227 商人Lv214 料理人Lv300】


【スキル 隠匿(スキルLv1)を取得】


【派生スキル 身体強化Lv2 剣術 精神強化 硬体Lv2 目視強化Lv2 縮地 必要経験値-50% 獲得経験値+50% 記憶力アップ インベントリ】


やったぞ!! うまく行った。


ウキウキしながらダンジョンを出てレンタル武器を返す。


「なんだ? 良いことでもあったか?」

出張所のおじさんに声をかけられた。


「何でも無いよ」


「今日は帰るのか?」


「うん、一度協会によって顔見せてから帰る予定だよ」


そんな話をしておきながら別の初級ダンジョンにくる、今日の目的はモフモフ達ではなく10階層の一番奥、亀さんの部屋だ。


そこまで一気に行く。剣士Lv300の俺が走って移動、途中でモフモフ軍団に遭遇するが気にせずに走り抜ける。時々体当たりしてくるモフモフがいるが構う事なく突っ切る。


そして15分もかからずにボス部屋にくる。


亀さんは冒険者に不人気のボスだ。本当に甲羅と鱗が固く、倒すのに時間がかかり過ぎる為だ。だが俺には秘策が有る。見つけた動物の本を読み漁りある作戦を考えてから来たのだ。


ボス部屋に入る、すると高さ1m位の岩が中央に置かれていた。警戒しつつ中を見渡すが何も無く中央まで来て岩に腰を掛ける。


索敵を持たない俺に取って、何処にモンスターがいるのかがわからない。ぶっちゃけその緊張は凄まじい。


など考えていたが景色が変わっているのがわかった。


「ま、まさかぁ?」


そう、俺は亀さんの甲羅に座って休んでいたのだ。もしかしたら甲羅に座った俺のケツの暖かみが少し嫌だったのかもしれない。


亀さんから降りて前に歩いて亀さんと対峙する。対峙しているつもりなのだが亀さんの動きは物凄く遅い、普通に歩いても亀さんを追い越す位だ。


インベントリから丸太を取り出す。実は散々本を読み漁りこの日の為に長さ2mの丸太を準備したのだ。そう、ある作戦を実行する為に。


脇に回り亀さんの足元から丸太を差し込み持ち上げる、流石の亀さんもこんな攻撃を受けた事がないのか、ふらふらとしながら踏ん張っている。


そう、俺の考えた作戦は亀さんコロリ作戦だ。要はひっくり返して、たいして強度の弱いお腹の甲羅や首裏の鱗を狙う。いわば卑怯極まり無い事を思い付き実行している。


体が斜め45°になりながらも倒れないように頑張る亀さん。そんな亀さんを悪い顔でニヤ付きながらひっくり返そうとする俺、たぶん他の人が見たら亀をいじめる悪ガキにしか見えないかもしれない。


そんな攻防も終わりが来る。重たい体を支えていた片側の足が耐える事が出来ずにひっくり返ってしまう。


「キュー、キュー」と弱い声で泣く亀さんを横目にバトルナイフを深々と亀さんのお腹に刺し込む。


「キューーーーー」


そして亀さんは絶命した。


頭に機械音が流れるのにあわせて武道家に職業を変更。


"単独でボスを倒し、また討伐時間が10分かかっていません。


特別ボーナスが加算されます。ボス討伐の経験値は入りませんがレベルが15上がる事になります"


名前 二前(ニノマエ) (コウ)


職業 武道家Lv248


【剣士Lv300 ポーターLv228 ゴミ拾いLv227 商人Lv214 料理人Lv300】


【スキル 隠匿(スキルLv1)を取得】


【派生スキル 身体強化Lv2 剣術 精神強化 硬体Lv2 目視強化Lv2 縮地 必要経験値-50% 獲得経験値+50% 記憶力アップ インベントリ】


俺はレベルアップ告げる声よりも亀さんを倒した事に罪悪感を覚え、その罪悪感に押し潰されてしまっていた。


亀さん、鳴き声可愛かったな。


亀さん、俺を乗せて歩いてくれたな。

そんな亀さんをコロリとしちゃったな。コロリと、コロリ…。


その日、真っ直ぐに家に戻り、1人でひっそりと部屋の中で過ごした。


だって、亀さん俺を攻撃しなかった・・・な。

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