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それから話し合いが終わったのはかなり遅い時間になってしまった。まあ、皆さん俺の事を心配してくれているのはわかった。
諏訪のダンジョンで得た魔石等をサナエさんに卸す。
「コウさん。出来れば近い支部で販売していただくとありがたいんですが」
サナエさんが渋々と言わんばかりな顔をしながら買い取りを進める。
「へぇ、これが鬼の角ですか? 私初めて見ました」
珍しい物もあるのだろう、諏訪からデータを取り寄せ、一つ一つ鑑定して買い取り価格を決めていく。
全ての買い取りが終わるとサナエさんが話し出す。
「コウさん。さおりちゃんとお話出来ました?」
「いえ、まだ」
「さおりちゃん、新しい武器を買いたいらしくて、その相談をしたいみたいなんです」
「新しい武器の相談?」
「ハイ、今使っているはお母さんが以前使っていた物らしいんですね。
それでご自身の武器が欲しいそうなんです。それでコウさんも武器を作ったと言う話を聞いて、それもあるらしいですよ」
「まあ、わかりました。さおりと会ったら聞いてみます」
実はこの日の夜、さおりの両親から晩御飯のお誘いを受けていた。夜になり、さおりとさおりの両親と会食を終える。
帰りのタクシーはさおりと一緒になる、帰るマンションが一緒なのもあるけど。
「さおり、武器を作るんだって」
「うん、でも鍛冶士の人に断られたの。ダンジョン鉱石について理解していないって」
「そうか、なら俺が借りているあの刀を渡すよ。あれで練習したら良い。あれはかなり練習になる」
「え? コウ君はいいの?」
「俺は俺専用の刀があるから問題ない」
「じゃあ、また一緒にダンジョン入ってよ」
「いいよ」
「え? 良いの?」
「なんでそこまで驚くの。俺はさおりとダンジョンに入らないと言った覚えは無いぞ。
ただ協会や他の人達の思惑通りに動くつもりが無いだけだ」
「ねえ、松本での約束は覚えてる?」
「そんなことより、学校をちゃんと卒業しろよ。
お前は俺に出来ない経験をしてるんだ。ちゃんと楽しめ、休日や連休があればダンジョンに潜るぞ。その時に色々と教えてやるよ」
「う、うん」さおりが寂しそうに言う。
「それに俺には断る権利は無いんだろ、ならお前が俺に認められるだけの事をしろよ。少なくても今さおりは合格点だ」
さおりが急に笑顔になる。
「なんか上からだなぁ。
でも、それって私と付き合ってくれるってこと?」
ピシ! さおりの頭を軽く叩く。
「おま、法律は理解してるよな?」
「うん」
「今、お前とお付き合いすると俺が逮捕される可能性がある事も知ってるよな?」
「ふへ? 何の事?」
「うわ、最悪だわ。さっきの言葉は取り消しだ」
「待って、理解してるよ。でも、なんでそんなにこだわるの?」
「ほう。そうきますか。
お前は犯罪者とお付き合いしたいんだな。
もしうまく行って結婚なんてしてみろ。お前は犯罪者の妻で、生まれる子供は犯罪者の子供だ。
お前はそれを望んでいると言うことか?」
「いや、そんなことは。
でもそうだよね、冒険者法ってどっかおかしいよね」
「仕方ない、基本的に冒険者じゃ無い人が俺達冒険者を恐れて作った法律だ」
次の日にさおりのお誘いを受けてCランクダンジョンにくる。あのアンデッドの出るダンジョンだ。
「なんでアンデッドダンジョンなの?」
「まだボスまで倒して無いから」
「でも魔法職、それも回復魔法を使う人がいないと駄目でしょ」
「これから俺の本当の秘密を見せる、これを見たら一蓮托生だ。2度と逃げられないけど良いか?」
「そうきますか。望む所よ」
何故かさおりが胸をはる。
ダンジョンに入るとアンデッドやゾンビ、スケルトン等に完全に囲まれる。だがある一定の距離で膝を突きそれ以上は近寄ろうとしない。
「コ、コウ君。これはど、どういう事?」
さおりがよっぽど驚いたのだろう。結構な間抜け顔で俺を見ている。
「キリー 出ろ」
俺の声に反応してリッチのキリーが出る。キリーが出るとアンデッドやスケルトン、ゾンビ達がキリーを見る。
「キリー、俺達は先に進む」
「シャー」
キリーが返事をすると同時にアンデッド達の一部が魔石となって姿を消す、するとコング エイプが出てきて魔石を集め俺の所に来た。
「さおり行くぞ」
「う、うん」
人って本当に驚くとこんな反応なんだろうな。頭が付いてこれずに状況が判断つかない、だからボケッとして見える。
アンデッド達の階層を抜け蜥蜴の階層に入る。
「ロック、からし。お前達も出ろ」
エイプ系のボスのロック、鬼がしらのからし、リッチのキリーがそろう。すると後を追うように大鎧熊とコングエイプ2匹が出てきた。
「紹介しておく。エイプ系モンスターのボスでロック。鬼がしらのからし。リッチのキリーとその他大勢だ」
「ブッ。その他大勢は悪いよ」
「仕方ない。Aランク相当の奴にしか名前をつけられないんだよ」
「あ、そうなんだ」




