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眩い光と深い闇の間を意識がうつろう。
時々、人の声が頭の中に入ってくる。
その繰り返しを何度行っただろうか? それすら覚えていない。
そして目に光と影がうつりこむ。
その音はやけに高くうるさく聞こえ、体を揺らすような嫌な振動を感じていた。
するとまた、静けさが戻る。
闇が目の前を支配し始めると同時に強い光が辺りを照らし出す。
そして俺の後ろに死神のような風貌の骸骨が膝を付いている。
「お前は誰だ?」
「…」
「俺の問いに答えられないか?」
それは俺が憶えていた唯一の夢。そう思う。
体中の痛みに耐えきれずに目を覚ます、そこは知らない部屋と知らない天井があった。
「コウ? コウ。起きたの」
その声は聞き覚えがある。無刀取りの師範代ムラセさんの声だ。
ゆっくりと体を起こす。
「イッテッ。ムラセさん、ここは?」
「うん、ちょっと待ってな」
そう言うと俺の体にカーディガンをかけてくれる。
「ここは道場の医務室。今、みんなを呼んでくる」
ムラセさんが軽い足取りで部屋を出ていく。
ドタドタドタドタッ。
「コウ君!?」
さおりがベットに座る俺に抱きついて来て泣き始める。が、その衝撃で意識が飛ぶ程の痛みが全身に走る。その痛みに声を上げる事も出来ずに悶絶する。
「こら、さおり。コウ君が苦しそうだろう。少し気持ちを抑えなさい」
そこには初めて見る女性が立っていた。歳は40代の中頃だ。さおりが俺から離れた、そこでやっと呼吸が出来る。やっとの思いで呼吸を調えているとさおりがその女性から怒られていた。
「さおり、覚醒した時の辛さは貴女も知ってるでしょう。
貴女があんな風に抱き付くから、息を詰まらせて死ぬ所だったわ。大切な人ならもっと相手の事を思ってあげなさい」
すると鉄斎のじぃさんと冒険者協会 会長 柴田 円俊。留萌さんと日丘さん夫婦も揃っていた。
柴田 円俊が俺の前の椅子に座る。
「お前が寝てる間にステイタスボードを拝見した。残りは後2段階のようだな。
小僧。お前をAランクに切り替える」
「何を勝手に覗きこんでんだ、俺のプライバシー位、守りやがれ」
「ふん、そこまで悪態が付ければよろしい。
紹介しておく。
日丘 瑠美、協会の外交担当理事だ。因みにさおりの母親だ。こっちが日丘 岳人(ヒオカ タケト) 協会の外交担当責任者。さおりの父親だ」
「そうかい。そんな協会のお偉方が俺になんのようだ?」
突然、日丘さんが前に出てきた。
「コウ、お前。私のさおりを傷物にしやがったな。おまえどう責任取るんだ? ああ!」
「傷物ってなんの話です?」
「そんな事より、さおりの抱き心地はど、どうだった?」
日丘さんが小声で俺に聞いてくる。
「そんなことしてません!! お姉ちゃんは、少し黙ってて」
さおりが俺の横に座る。
「何度も説明したでしょ。私が無理矢理コウ君を誘って、長野のダンジョンに行ったの。
協会の仮眠室は2部屋借りて各々で泊まったし、コウ君が凄い心配してたから私もお酒は一滴も飲んでない。
後は協会にも報告が入った通り。ダンジョンでレアモンスターと当たったり、新人狩りをやっつけたりしただけ」
「さおり、その話は後で聞きます。
今はそれ以上に大事な話なの。真美、貴女も黙ってなさい」
「は~い」
「あら、真美。たるんでいるわね。
今日は私がしごいてあげるから覚えてなさい」
「ヒィ!?」
珍しく日丘さんが恐怖していた。再度、協会会長の柴田 円俊が話しだす。
「お前のスキルは把握した。これからはお前をAランクとして世にだす。
だが、このスキルだけは誰にも言うな。世界で小僧を合わせても2人しか覚醒していないスキルだ」
そう言ってメモを見せられる。そこには"ネクロマンサー"と書かれてある。思わず首をかしげた。ネクロマンサーなんてそんなジョブは見たことがない。
「ステイタスボード」
名前 二前 宏
職業 聖騎士 Lv5012
HP105080
MP102001
上級職 レベルMAX 10000 リターン(Lv3000)
聖騎士(騎士、マジックマスター)から派生
バトルキング(格闘家、アサシン)から派生
ネクロマンサー(アサシン、斥候)から派生
任意発動スキル 補助
【隠匿スキルLv5 生命察知Lv5 魔力察知Lv5 気配遮断Lv5】
任意発動スキル 戦闘
【剣術Lv5 格闘術Lv5 体術Lv5 索敵Lv5 縮地Lv5 魔力強化Lv5 覇王の威嚇Lv5】
任意発動スキル その他
【金剛力 インベントリ 】
常時発動スキル 補助
【必要経験値-50% 獲得経験値+50% 記憶力アップ 運気アップ 精神強化Lv5】
常時発動スキル その他
【魔力鎧Lv5 金剛体 神目 魔力循環Lv5 覇王の目覚めLv5 常闇の寝床】
聖騎士の時のみ魔法が発動。
【魔法スキル 火炎魔法Lv5 大風魔法Lv5 水氷魔法Lv5 回復魔法Lv5 解毒魔法Lv5 解呪魔法Lv5】
ネクロマンサーの時発動
【魂の抽出 闇王の命令 闇魔法 死霊操作術】
俺のステイタスボードを会長の柴田 円俊も覗き込む。
俺は驚きの余り柴田 円俊を見た。
「良いか、このスキルは平国の冒険者の第一人者と呼ばれるラヤンジャ ダジャヤリ首相だけが持つと言われるスキルだ」
「あの 平国か?」
「ああ、内乱と海外からの圧力をたった一人で抑えた独裁王だ。お前の噂が広がるとかなり不味い」
「なら、先ずはこいつを説得してもらえるか」
そう言ってさおりの手を引いて横に座らせる。
「前回、サナエさんと一緒に留萌さんから説明をしてもらった、ところが全然我慢できないらしい。兎に角俺の秘密を教えろといって騒ぎ続けている」




