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残りのシルバーエイプを倒して魔石や骨等落ちた素材を拾い集めて、ダンジョンを出る。
「コウ君。貴方、レベルいくつ?
どうやってもレベル300しかないEランクじゃないよね?」
「な、な ん の こ と で し ょ う?」
思わず、真っ青になり棒読みで答える。
「おい、そんな棒読みで騙せると思ってるのか?」
「良いんだよ。俺と協会会長のじじいとの約束なの。まだまだ俺は伝説のFランクでいいのだ」
「信じられない。実力的にBランク冒険者と変わらないでしょう。
ちょっと、理由を教えなさい」
「後で聞いてみるよ。こればっかは俺1人の事じゃないし、俺1人で判断出来ないから」
「またそうやって逃げる」
すると俺の腕を抱き付いてきた。
「逃がさないからね」
「なあ、この状態で協会まで行くつもりか?」
「当たり前でしょ」
協会に来ていつものようにサナエさんのブースに移動する、いつもと違う所はさおりが一緒と言う事だ。
「コウさんとさおりさんはいつからお付き合いをされたのですか?」
「いえ、お付き合いはしておりません」
俺が真顔で即答すると、何故かさおりが俺を睨んでいた。するとまた力を入れて腕に絡み付いてくる。
「サナエさん。サナエさんはコウ君の本当のレベルは知ってるの?」
サナエさんも驚いた顔をしている。
「本当のレベル?」
「そう、コウ君って絶対にBランク以上の実力だと思う。でも本人がランクを更新しないのは何でなの?」
「そう言えばそうですね。
私もおじいちゃんから"ランクの変更はするな"ってしか言われてるだけだから詳しくは知らないけど。
コウさん、理由は何?
それとも私達には言えない理由でもあるの?」
そう言われて何故かサナエさんとさおりに睨まれる。ところでサナエさんのおじいさんって誰?
「コウ君。このまま黙って誤魔化すつもりなの? そのつもりなら私これからコウ君のお家で生活始めるからね。
ちゃんと責任取りなさいよね」
さおりとサナエさんの圧に負けそうになりながらもこらえていると留萌さんが駆けつけてくれて、留萌さんが間に入る。
「2人共、やめなさい。
詳しい事は僕が説明するから。取りあえずコウ君を離してあげなさい」
「「は~い」」
ようやくさおりとサナエさんから解放されたけど、何故か俺まで留萌さんに連れられて会議室に移動となった。
「良いかい。これらか聞く内容は一切他言無用だ。さおりさんも良いね」
「はぃ?」
さおりが不思議そうに返事をする。
「いいですか、この情報はコウ君の命にかかわります良いですね。2人とも二次覚醒すると様々なスキルが手に入る事は知ってるね?」
留萌さんの真剣な表情に2人の顔が引き締まり、真剣な顔でうんうんと2人共頷く。
「二次覚醒のスキルの中には所謂成長スキルと言われる物がある。
9割方の人は二次覚醒のスキルで冒険者としてのランクがほぼ決まる。そしてその決まったランクから上がらないし、もし上がるとすればスキル以上の努力が必要で、ランクアップ自体が物凄く珍しいと言われている。
残りの2割の冒険者は自分を成長させて行く成長スキルと言うスキルを得る、コウ君のスキルも成長スキルの1つだ。
そして成長スキルの人はスキルの成長が終わった段階で、正式にランクを設定する。それまでは暫定ランクとなる、ここまでは良いかな?」
うんうん。2人共頷く。
「成長スキルはどこで止まるがわからない不確定要素が多い。
Cランクで終わる者もいればSランクを越える者もいる。現在、我々が調べられる範囲でレベル10000以上からSランク指定されています。
つまりレベル10000以上は調べる事ができないし、その技術がない。だから調べる事ができません。
そしてこのSランクは日本で10人しかいない。
その中で、世界と戦えるのは協会の会長1人で、Sランクのほとんどが所謂成長スキル。
本当はもっといるんだけどね、その存在が知れると海外に引っ張られたりしている。その1人が家の奥さんのお兄さんだけどね」
「はっ!」
さおりが息を飲んだ。
従兄に当たる日丘 克典は英雄と言うスキルを持ち、協会会長に次ぐ能力の持ち主と言われる程の強さだ。
それが突如として10数年前にアメリカに渡ったのだ。金と力の有る国は様々な事をして優秀な冒険者を集める、その政策に乗ったのだろう。
「良いかな、コウ君はその成長スキルを持っている。そして、それを誰にも言わないのは何よりコウ君自身の希望でもある」
サナエさんが手を上げて質問をする。
「留萌課長。それはつまりおじいちゃんや日丘 克典さんを越える可能性があり、おじいちゃん自身を超える可能性があるとそう判断している。そういう事で良いですか?」
「そうだ。
会長もコウ君は自分を越える逸材だと考えている。だけど成長スキルは時間がかかる。今が一番大事な時だ、そこを理解して今後の付き合い方を考えてほしい」
「わかりました。それでコウさんが卸した物をあんな名前で出しているんですね」
あんな名前?
「サナエ君。それは我々の業務内容に関わる事だ、ここで話をするの駄目だよ」
「気を付けます」
「それじゃあ留萌さん。コウ君がこれからダンジョンに入る時はどうするの? いつまでもEランクの協会カードだとダンジョンに入れなくなりますよ」
「さおりさんそこは大丈夫。すでに暫定Aランクカードは作ってあるから、Sランクダンジョンまで入れるよ」
「ウソ、やる事はやっ」




