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ダンジョンに入ると同時にモンスターに囲まれるが、さおりが躊躇なくモンスターを倒す。いつもさおりと練習している為か、さおりの攻撃パターンが分かる。そうなると連携も楽だ。
さおりの取りこぼしを全て狩って行く。
1つの階層をくまなく見て回り、問題がない事を確認してから次の階層に入る。
やることはその繰り返しだ。
「コウ君。その刀で斬れるようになったの?」
「ああ、なんとかね」
「コツって有るの?」
「魔力を循環させる事だ。そうする事で斬れる刀になる、本当に不思議な刀だよ」
「刀と言うよりは、ダンジョン鉱石が不思議なのかもね。
その刀、どうやっても刃がつかなかったらしいの。でも、本当に一部の人達からは評価が高いのよ。
私も不思議だったもん」
「そうか。さて、来たぞ」
さおりの話を無視してシルバーのウルフ系モンスターが集団で来るのを伝える。さおりとの連携がかなり取れるようになり、10匹の群れも危なげなく倒す。倒したモンスターの魔石を拾いバッグにしまう。
「コウ君のバッグって本当にでかいよね。良くこの数の魔石がバッグに入るよね」
「これか? これはポーターバッグだ。内容量は100L。まだまだ空きが有るよ」
「良くポーターバッグなんか持ってるね」
俺の背負ってるバッグを見ながらさおりが感心している。
ポーターバッグはその名の通りで、荷物持ち専用バッグだ。円錐形のバックで頑丈で使い勝手がいい。初級職の荷物持ちの時にどうしても背負いたい欲求に負けて買ってしまったものだ。
「そうか、俺みたいにソロで入る奴は割と持ってる奴多いぞ」
等々話をしている間にグリーンエイプの階層にくる、ここを抜けるとシルバーエイプの階層とボス部屋だ。ところがグリーンエイプの様子が少しおかしい、俺達を見て襲う訳でもなく何かから逃げているようだ。
「さおり、グリーンエイプの様子がおかしい、多分だが何かイレギュラーが起きてるかもしれない」
「わかった、でもどっちに向かえば良いのやら。わかる?」
「任せろ、案内する」
索敵等のスキルを持たないさおりを案内する、神目を使い索敵を行いながら生命察知と魔力察知を発動。
「あっちだ」
索敵にかかるのはダンジョンボスよりも弱いがそこそこ強い魔力を感じる、下手したら特殊なモンスターだ。
「この奥だ。次の階層の階段付近から感じる」
さおりとお互い顔を見て頷くと階段の階段付近にくる、すると1匹のグリーンエイプが陣取っていた。グリーンと言うより黒に近い色で、グリーンエイプの2倍のサイズでシルバーエイプよりも少し小さい感じだ。
俺とさおりが来たのを感じたのか石を拾うとやみくもに投げ始める。石をかわしてグリーンエイプに近付き覇王の威嚇を放ち、グリーンエイプの動きが止まるとそれにあわせてさおりの攻撃が入る。一際でかいグリーンエイプの体が真ん中から2つに分かれていた。
グリーンエイプが倒され魔石と骨が残った。
他に問題がなさそうなのを確認してシルバーエイプの階層に入る、この階層は平常営業のようで特別これと言った変わった事がなかった。
それを確認してボス部屋に来る、正直に初めて入るボス部屋に少し緊張してしまった。ドアを開け中に入ると驚きの光景がそこにあった。コングエイプを中心にシルバーエイプが10匹もいる。
「ねえコウ君。事前説明だとコングエイプ1匹にシルバーエイプ2匹だったよね」
「ああ、不味いな」
とっさにさおりをかばい前に出る。
「ゴォー!」
コングエイプの雄叫びがボス部屋に響く。
体をビリビリと痺れさせるような雄叫びだ。
それに合わせて動くシルバーエイプに対し覇王の威嚇を最大限に放つ。
「さおり、シルバーエイプは俺が押さえる」
俺の話しに返事がない。
おかしいと思い後ろを向くと、さおりがコングエイプの雄叫びにやられてふさぎ込んでいた。
壁際にさおりを座らせてエイプ達と1人で対峙する。俺の覇王の威嚇で圧倒されたのかコングエイプはなんとか体を動かしているが、シルバーエイプ達は動けずにいる。
刀を出して魔力を循環させると手前のシルバーエイプから斬りかかる。シルバーエイプの柔らかい体毛も今なら難なく斬ることが出来る、魔力循環を得た俺はやっぱり最強だ(すみません自惚れました)。
シルバーエイプに近付くとシルバーエイプが俺を睨み返してくる。
その意気や良し、エイプ系の上位に立つシルバーエイプの心意気を感じて全力を出す事を決める。覇王の威嚇をさらに強くかけて動きを封じて手前にいるシルバーエイプを倒す、残りはコングエイプとシルバーエイプが2匹残すのみだ。
ここまで来ると先にコングエイプだな。そう思ったが、コングエイプが俺が倒したシルバーエイプを掴み持ち上げると此方に投げる。投げられたシルバーエイプをかわし、縮地を使いコングエイプとの距離をつめて右の鎖骨から胸にかけて袈裟に斬る。
コングエイプが鎖骨を斬られて腕が上がらなくなったのか動きが鈍る、すると咄嗟に左手を地面に付け体を回転させると動かない腕を無理矢理振り回し裏拳が飛んでくる。その顔は痛みに耐えているのか物凄く歪んでいる。
そんなコングエイプを見て、妙に冷静になった俺はタイミングを合わせコングエイプの右腕を切り落とす。
「ゴッパー!」
コングエイプが腕を斬られて俺を睨む。
シュダッ。
突如後ろかさおりのかける音が聞こえた。
「右!」
さおりから右に避けろと指示が出る。
咄嗟に右に避けるとさおりがジャンプしてコングエイプを捉えた。コングエイプは突如さおりが現れた事に驚き、何も出来ないまま体を2つに斬られてしまう。
流石はスキル剣鬼姫だ。おれが苦労して弱らせたコングエイプをあっさりと一刀両断していた。




