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研修が始まり、全員がダンジョン内に入ったのを確認する。
「さて、悪いがみんな二手に分かれて壁によってくれ。真ん中にいると怪我するぞ」
そう言って刀を抜く。その時ふと違和感を覚えた。だが、刀を持った感じは至っていつも通りだ。
俺の声かけに応じて全員が壁際に二手に分かれて集まる。その間を通り出入口付近まで来る。
「お前らはどいつの付き添いだ? 今出ていけば痛い目に合わずに済むぞ」
しかし俺の神目は本当に優秀だ、本当に何で認識阻害をかけてる奴までわかるのかな。神目の説明は至ってシンプルだ、ただ神の持つ目、全てを見通す。それしか書いてない。
中に入ってきたのは2人、その2人が俺を囲むように前後に分かれてから認識阻害を解除して姿を表す。
「「「ひぃ」」」
突然あらわれた男達を見て研修生が恐怖する、引率の協会職員が研修生たちを守るように立つ。
今日の職員はBランクが2人だったはずだ、侵入者に集中して問題無いだろう。
おそらくこの2人のスキルはアサシン。
勝機はある。アサシンは騎士スキルほど武器スキルは高くなく、戦闘能力も低い。まして不意をついて俺を攻撃出来れば良かったが、こうやって面と向かってしまうと今は俺の方が有利だ。
縮地を使い1人の男の前に来るとすかさず刀を降り男の右腕を切り落とす。
「グアー」
俺が1人に集中した事をチャンスと思ったかもう1人が来る。気配を消し、俺の背後を正確に突く。
ブオン!
「なっ!?」
避けられた事が本当に驚いたのだろう、あたふたと周りを見渡している。
とっさに気配遮断を発動して避けると同時に上段に構えアサシンナイフを両手で持つ男の腕を切り落とす。
ザパン!!
「グアワッ お、俺の腕がぁ~」
片腕を落とされたもう一人の男が攻めて来るが、その男の左肩に刀を刺して戦いが終わる。
倒れた男2人を引率の協会職員が連れてダンジョンを出る。怪我した状態だがそのまま警察に預ける事になった。
「コウさん。少し良いですか?」
そう職員に呼ばれる。協会の会長であるじじいから説明を求めると電話が入ったらしい。
その日も研修はこれで終了となってしまった。
電話で話をする。内容は中に入ってきた奴らの事だがどうやらじじいも気付いてたらしく、そして今後の事はじじいが対処すると言っていた。
トラブルの影響で研修が解散となった。あまりに早く終わってしまったので予定を変更してラーメン屋に来て昼飯を食べる事にした。
「コウ、何かあったのか?」
「ん? 何にも無いよ。どうして?」
「何か怖い顔してるぞ」
「そう、教えてくれてありがとう」
店長が心配してくれて聞いてきた。俺、よっぽど酷い顔をしていたみたいだ。
その後新作のつけ麺の感想なんかを伝えてお店を後にして協会に来た、するとサチエちゃんと友達だろう男女がそろって何か話を聞いていた。
「コウちゃん!?」
サチエちゃんが俺を見つけて少し後ずさる。
「お疲れ様。サチエちゃんいつ日本に帰って来たの?」
「もう、一年も前だよ」
「そうなんだ。
うん? と言う事は、ばあちゃんの所に遊びに来てるさっちゃんて、サチエちゃんのこと?」
「え? そうだよ。おばあちゃんからも何も聞いてなかったの?」
「いや、さっちゃん遊びに来るから、コウちゃんはお出かけしててって良く言われるからさ」
サチエちゃんと話をしているとお友達が隣にくる。
「あのさ、コウちゃん。私達、双頭の鷲ってクランに入るのね。
良かったらコウちゃんもどうかと思って」
「双頭の鷲?
あの盾折 俊也って人が立ち上げたクラン?」
「そう。コウちゃんも知ってるの?」
「知ってるのと言うか、一昨日会ったよ。そこで一方的に言われたんだよね、お前は絶対にクランに入れないって」
「「え?」」
そう言って驚いていたのはさちえちゃんと友達2人だ。
「どうにも、俺は冒険者としての資質にかけるらしいよ」
「あの、うちのクランに入る希望があったのですか?」
友達の男に聞かれる。
「いや、俺はどこのクランにも所属するつもりがない。パーティーも組んでいないし基本ソロだしな。
ちなみに、一昨日は突然やって来て名刺を渡されて。
お前に冒険者の資質がない、お前は俺のクランには絶対に入れない。名刺を渡したのはうちに来てもらいたく無いからだ。
誰が誘っても俺のクランには絶対に来るな!! って、一方的にそう言って帰って行ったよ」
一昨日の盾折の真似をして、名刺を見せる。
「うっそう。二前 宏って面白いのがいるらしいからスカウトしてこいって言ってたのに」
ん? ひょっとして盾折と言う親父さんってちょっとめんどくさい系か?
「まあ、ごめんな。俺は何処のクランにも所属するつもりがないから、ダンジョンで会ったらたまには一緒に狩りしような」
「コウちゃん」
サチエちゃんが少し悲しそうだ。
「あの、挨拶してませんでした。
俺は盾折 亮介。俺の隣が妹の盾折 未希
俺達、サチエとは小学校からの友達です」
「初めまして、二前 宏だ。
サチエちゃんとは友達だ。よろしく」
(冒険者クランについて)
クランは複数のパーティーや冒険者達が集まり組織したもの。
個人や単体のパーティーよりもより多くの依頼を受けたり、より沢山の売上を上げる目的で組織されたもの。作品内ではそういう位置付けです。




