✩
「お帰りなさい。コウ君。ダンジョン入ってやっと1ヶ月だけどどう?」
「日丘さん、これを見てもらえます」
そう言ってにシルバーキャロットの毛皮(通称モフモフ毛皮)を3つ取り出す。
あ、あれ? 日丘さんの顔がひきつっている。
「コウ君、これをどうやって取ったかお姉さんに正直に報告なさい。
フフ、大丈夫。こう見えてお姉さん優しいのよ」
「ヒィ」
逃げ出そうとした俺の手をガッチリと掴むと、逃がすつもりは無いようで少し離れた個室ブースに連れて来られた。
流石にそこまで来ると逃げれる気がしない、と言うか怖くて動けない。すると日丘さんが現金を持ってきた。
「これが買い取り金額。このまま銀行口座に入れる?」
「え。いえいえ、親戚の連中が俺や親の銀行のキャッシュカードや通帳を持っているので」
それを聞いた日丘さんが怒った顔をした気がした。ただ真剣な顔をしただけかもしれないけど。
「ねえ、コウ君。
これから話す内容は、誰にも言ったら駄目よ。特に貴方の親戚の方には絶対よ」
内容は冒険者協会と銀行とは特殊提携を行っている、そう言う話しだった。
冒険者の稼ぎは人によるが、凄い人もいる。中には年間に1億以上稼ぐ事すら有るらしい。それが冒険者なのだ、だからみんな憧れを持つ。
そんな人達は冒険者協会が買い取りして、金額を全て指定口座に納める。そして冒険者協会が税務申告等の手続きを行う、つまり売上金から税金としてのお金を引いて入金する。
そして冒険者が武器や防具等を買ったりしたものは全て経費として落とす、また移動にかかる料金も経費とする、それらを一元的に管理し連動されるアプリもあり、全て連動して管理してくれるのだ。
そして一年に一回、一時預けたお金から税金を引いた額は戻してくれる、と言う話だ。必要なお金はその都度引き出しも可能だと言う。
「どうだろう。私達にお金の管理を任せてもらえないかな。
当然、コウ君のスマホやパソコンで全てを確認できるし、必要があれば協会だけの手続きを止める、または銀行だけを止める事も出来る。
後、一番は専門の弁護士、税理士と無料相談ができ、弁護士と税理士は冒険者個人の財産を守ることが使命。だから利用してる人も多いのよ。
そうすればコウ君の親戚の人達が何を言ってもコウ君の資金は守る事が出来る」
その話を聞いた後、提案を了承して生まれて初めて自分で銀行口座を開設する事になる。
手続きは明日、留萌さんとばあちゃんの立ち合いの元で銀行に行き手続きをする事になったのだ。
次の日。俺とばあちゃんが住む場所に親戚連中がやってきた。そして立会人として留萌さん、弁護士、税理士がくる、俺の今後について話し合いを行う事になった。
親戚連中の言うことはやっぱり金だ。
未成年である俺の稼いだ金を親戚が管理すると言う。本当に何処まで金の亡者なのやら。
そこで弁護士が様々調べたのだろう。遺産相続の事を持ち出し、親戚連中と少しもめる出来事が起きた。その後、親戚連中が急に大人しくなる。ばつが悪いのか話題を俺の冒険者としての事にすり替えた。
そこで俺が二次覚醒出来た事を話す。
二次覚醒は冒険者でも珍しい物で俺を見る顔が色めきだす。
「俺の二次覚醒は剣士だ」
そう言って冒険者カードを見せる。
「ク、クズスキルだ」
親戚の1人がボソッとそういう。
「「「「「クズ スキル」」」」」
「コウ君。僕にもカードを見せてもらえるか?」
留萌さんが信じられないと言った顔をしている。そしてカードを見るとことさら落ち込んだ顔になる。
その顔を見た親戚達は、俺を哀れむ。
「もっとまともなスキルなら、また家族として受け入れてやってもよかっなのにな。
これじゃ年間に100万も稼げないだろう。
これでお前は我々の親戚でも家族でもない」
そう言うと立ち会った弁護士を通じて様々な手続きを行い、俺は完全に戸籍上も独立した存在になった。
唯一、マンションの管理人の遠藤のばあちゃんだけが喜んでいた。俺が危険な目に合わなくてすむ。そう言って俺の手を握ってくれたのが凄く嬉しかった。
ばあちゃんは本当に俺の事を心配してくれているのが伝わって来た。それが凄く嬉しい。
その日の夜、クズスキルと言われたスキルをもう一度見直す。ステイタスボードを出すと、途中で画面が止めた所で止まっていた。
そこからさらに下がある事を発見して下を確認する。
そこには説明がさらに続いていた。
初級スキルは複数設定する事ができます。職業は同時に6個、登録可能です。
最初に推奨される組み合わせは剣士 武道家 ポーター ゴミ拾い 商人です。
登録された職業は交換可能。レベルマックスでも使用できるがレベルアップはしない。
それから1つ1つの職業を見た。そうするとその内容が余りにチート過ぎて驚きを覚えてしまった。
特にポーターとゴミ拾、商人だ。
ポーター、荷物を持って歩くだけで経験値があがる。
ゴミ拾い、倒したモンスターの魔石や毛皮等を拾ってしまうだけで経験値があがる。
商人、取った魔石なんかを売ることで経験値があがる、そのスキルみっつ共にモンスターを倒しても当然レベルが上がる。
そして何よりチートだったのがこれだ。
ポーター 必要経験値-50%
商人 イベントリ取得
ゴミ拾い 獲得経験値+50%
この3つを俺の基本スキルに移動する事が出来るのだ。
イベントリは所持者が現在知られているだけで10数人しかいないとされる特殊能力。
そして必要経験値-50%と獲得経験値+50%だ。
これを使えば10年もたたずに初級ジョブは全てクリア出来る。
1人で部屋のベットに寝転び、ただ1人ニヤついていた。それもそのはずだ宝くじで10億を当てるより、凄いスキルを獲た。
そう。その物凄いスキルを、それを知ってから俺のにやけが止まらなかった。
「コウちゃん何があったの? ちょっと気持ち悪いよ」
そう、ばあちゃんに言われ続けてしまった。
俺が早速スキルを入れ直したのは言うまでもない。
名前 二前 宏
職業 剣士Lv 10
【武道家 ポーター ゴミ拾い 商人 料理人】
【スキル 隠匿(スキルLv1)を取得】
【派生スキル 身体強化Lv2 剣術 精神強化 硬体Lv2 目視強化Lv2 宿地 必要経験値-50% イベントリ 獲得経験値+50% 記憶力アップ】
そして全ての派生スキルを隠匿したのは言うまでも無い。
それとさらに知った事がある。別の職で持っている同じスキル同士は合わせるとスキルレベルが上がるのだ。これもチートだ。
宿地は武道家、記憶力アップは料理人の派生スキルだ。