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その日、初めてアサシンのジョブに切り替えた。


俺はジョブによって精神状態がかなり変化する。料理人の時は、食材にかなり興味を持ち、産地やら、時期等もこだわっていたし、旨い物が出来たらどんどん作りたくなるし人に振る舞いたくなった。


旅人の時は知らない場所への憧れと興味が物凄く強くなり、裏路地的な物を見つけると入りたい衝動に負けて良く散策した。


それがアサシンだ。正直どうなるか?


さっそく索敵、生命察知、魔力察知を作動してマットサイエンスとパンプアップの動きを観察しはじめた。


アサシンスキルは獲物は逃すつもりは無いようだ。


仮眠室を出て協会の出入口に向かう、協会職員ではない俺が協会内を歩いて出る。が、誰も俺に興味を示さない。


認識阻害のスキルでも持っているのか、誰もが俺を見ても道端の石ころのような感じで、興味を示さない。


協会の外で待つこと30分、やっとマットサイエンスとパンプアップの2人が出てきた。


2人は自分達がつけられる。そう言う認識は100%持っていないのだろうな、全くの無警戒だ。動画配信で顔出しをしない2人のどっちがマットサイエンスで、どっちがパンプアップかは知らない。


だが捕えやすい方を選ぶ。

スカートをはき、お洒落な格好をして、厚底の靴をはいたメガネの女の方を狙う事にした。


2人が駅で別れる、女の後について電車に乗る。こいつは本当に警戒心がない。

イヤホンをつけ回りに聞こえる位の音量で流行りの音楽を聴いている、女の降りる駅に来たのか電車のドアが開くとそそくさと降り始める。そこにあわせてわざと女にぶつかった。


ガチャン!! 女が持っていた携帯が放り出された。


「キャッ」

「ああ!! ごめんなさい。前を見てなかった」


「あ、イエ。私もよそ見してたので」

女がビックリした表情でメガネを直す。

その隙にバトルナイフを取り出すと女の首もとに付ける。そこに自然と殺気がこもる。


「死にたくなければ付いてこい」

「…」驚き過ぎたのか、突然とバトルナイフを突き付けられた恐怖からか、大人しく首を縦にふる。


まあ冒険者同士だ、ダンジョン以外で暴れたらどうなるかお互いにわかっている。大人しくついてくるのはただそれだけかも知れない、勝手にそう理解した。


女の腰に手を回しバトルナイフを体に押し当てながら駅をでる。しかし、アサシンのジョブは便利だ。明るい駅から出ていきなり街灯の無い裏路地に入ってもまるで昼間のように良く見える。


「これ以上俺にかかわるな。これ以上は命の保証は無い」

女は振り向きもせずに震えるだけだ。


押さえている女の体が硬直しているのがわかる、恐らく動かない。そう直感して1人で裏路地を出て観察しやすい場所で裏路地を見る。


女が出てきたのは5分後だ、ふらふらとしながら家路に付く。女の住むマンションは把握した。流石に名札のような物はなかったが部屋番号は記録に残す。


翌日の昼、冒険者協会に数人の男女が来た。かなり興奮して責任者を出せと騒いでいる、その横をダンジョン帰りの俺が通る。

責任者として出て来たのはクラン課に所属している日丘さんだ。と言う事はこの人達はクラン登録している冒険者か?


「昨日、クラン所属の冒険者2人がここに来た。その時どんな応対をした? 1人は完全に何かに怯えて部屋から出れないようになったぞ。どんな対応をしたんだ?」


その言葉が気になった。1人は? もう1人の奴も何かあったのか?


で、やっぱり日丘さんがキレた。

「ここは冒険者協会だ。職員の大半が冒険者だ、お前らの教育が甘ったれてただけじゃ無いのか?」


「ふざけるなよ」「ああ(怒)」


そんな2人の間にサナエさんが割って入る。しかしサナエさんもかなり度胸が有る、あんな睨み合った人の間に割って入るのは中々出来る事じゃ無い。


サナエさんが落ち着いて昨日の出来事を説明、どうしても必要が有ると言うなら防犯カメラの録画を見せると話す。


サナエさんがさらに説明を行う。


「我々もあのお二人の異常行動は耳にしています。複数の冒険者の後を付けて何やら勝手に撮影を行い、同意無しに自分達の動画配信に使っているようですね。

我々協会にもかなりの数の苦情と改善依頼が入っています、先ずはその辺りを調べられてはいかがでしょうか?」


「そんな、あの子達がそんな事をするはずが無い」

「なら、我々から警察の冒険者課に事故申請しておきましょうか?」


「嫌、そこまでする必要は無い。クラン内部で慎重に調べてみる」


そう言うと大人しくなる。

サナエさんが話を始めた為か、揉め事に興味を失った日丘さんが俺を見つけて抱きついて来た。


「コウ、久し振りだな。そんなに私に会いたかったか? 本当にお前は私から卒業出来ない奴だな」


そう言って万力のように俺の体を締め付ける。

やっぱり加減してないぞ。金剛体と魔法鎧が常時発動形のスキルじゃ無かったら俺今頃あの世行きだよ。

「日丘さん、苦しいです」


そう言ってタップする。


「お前、さらに硬くなったな。どれ後1割程力を込めても良いんじゃないか?」

「ひぃ、死にます」


そんな俺達を余所にクランメンバー達が話し合いを始める。

「しかし、マスターに対してあの態度。あの協会職員の女は死にたいのか?」

「同感です。たかがクラン課の担当だから言って図に乗りすぎだ」


「そう言うな」「「マスター」しかし」


「あいつは女神の雫の日丘 真美だ。

パワーキングとエイプキングのスキルふたつ持ち。世界でも1.2を争う超パワー戦士だ」


「あれが日丘 真美?

以前ダンジョン内でアメリカ最強のパワーファイターと言われた冒険者を再起不能にしたと言われる奴か」


「すると、あの抱きつかれている奴が伝説のFランクか?

あれだけやられて生きていると言う事は物凄く優秀な防御系スキルなのだろう、レベルが低いと言われてるがあれだけの防御力だ。単独でCランクダンジョンに潜るのも納得だ」


「我がクランに欲しい逸材ですね」

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