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しかし今回の職は凄い。
特に騎士、格闘家、アサシン、マジックマスターの4つは良く知られるジョブでどれもAランクに該当する物だ。それも、このジョブを持つ冒険者のほとんどが日本で上位に入る冒険者たちだ。
そう考えるとレベル3000リターンはまだ楽な方なのかもしれない。
そしてそれぞれのジョブを見ていく。
騎士⇒剣士、双剣使いから派生。単剣~長槍まで網羅可能。
格闘家⇒武道家、暗器使いから派生。あらゆる格闘術を網羅可能。
アサシン⇒盗賊、暗器使いから派生。殺人の名手。人の裏をかき、気付かれずに敵を倒す有る意味嫌われ者。
斥候⇒盗賊、行商人から派生。罠発見から解除、鍵開け、索敵と何かと役立つスキルを網羅可能。希代の大泥棒にもなれるかも。
マジックマスター⇒魔法使い、聖職者から派生。あらゆる魔法を扱う。上級職。賢者、魔道師も夢じゃない。
大商人⇒行商人、聖職者から派生。あらゆる計算や交渉をそつなくこなし利益を得る。人を惹き付けるそんな能力もあるけど、人からケチと思われる。
うん。説明がやっぱりざっくりだ、おまけに少しディスってるし。
ここまでの自分を振り返って思った。
俺、完全に自己流で今まで来た。これを機に剣術の道場でも通うかな。一流の冒険者は何かしらの格闘術を覚えているのが普通だ。
1週間ぶりに冒険者協会に顔をだす。
担当のサナエさんが直ぐに気付いてくれて声をかけてきた。
その後ブースに移動。
「サナエさん。俺、剣術や格闘術って習ったことが無くて、何処か教えている人とか道場とか知りませんか?」
「剣術や格闘術ですか?」
するとサナエさんが何かの資料を持って戻ってきた。
「ここ、お勧めです。
日本古来の古武術の道場です。剣術から格闘術を総合的に学ぶ事が出来ます。
ちなみに留萌さんもここの道場生です。
道場主は日丘 鉄斎さん。日丘 さおりさんのお爺様です。
一般の方ですが冒険者相手に引けを取らない猛者と留萌さんからも聞いてます」
「あれ? コウ君。家の道場に興味有るの?」
振り替えると日丘 さおりがいた。
「お前、人の相談聞いて何やってんだ?」
「え、サナエさんから紹介していいかって聞かれたから見に来たの」
思わずサナエさんをジト目で見る。
サナエさんが俺を見てニコッて笑った。う~ん可愛いから許す。でもなんか、サナエさんの営業スマイルに騙された気がする。
「じゃあさ。見学しない?
私これから帰って訓練なんだよね。それを見れば内容が分かるんじゃない」
「それ良いですね。百聞は一見に如かず。体験してみましょう」
そう言われ、断る理由もなかった俺は日丘 さおりについて移動する事になった。
「なあ、さおりは大変じゃなかったか?」
「なにが?」
「俺との事。日丘さんあれこれ言ったんだって?」
「もう。ハンッパない程大変だった。お姉ちゃんはじいちゃんにこっっっぴどくやられたしね。
今じゃ信じられない位に大人しいよ。てか、コウ君はどうなの? 女子高生に手を出したなんて噂流されて」
「我関せずだ。
俺の事をまともに知ってる人の方が少ないし。
元々ソロで冒険者してるんだ、迷惑がかかる仲間もいないしその点は気楽だよ」
「そか。なら本当に手を出して見ない?
じいちゃんの道場も跡継ぎいないしさ。私の両親は海外勤務が多いから、コウ君みたいな人がいるとほっとすると思うんだよね」
コン!! 俺がさおりのおでこを小突く。
「いて」
「馬鹿な事を言わない」
「は~い」
そして道場に付く。純日本家屋といった作りで、門に"新真大社流 道場"と書かれた看板がさがっていた。
「さおり、ここ?」
「そう。入って入って」
道場に通されると着替えて来ると言ってさおりがいなくなる、道場は誰もいないにも関わらずピンと張り詰めた空気がある。その時だ。
ゾッ! 獣だ!!
何処からともなくこっちを見ている奴に気付く。体が芯から危険を、シグナルを発信してくる。気配遮断スキル、生命察知スキル、魔力察知スキルを発動。
それと合わせ体術スキルを発動する。
背中から空気の揺らぎを感じてとっさに前に飛び出し転がってから、後ろを振り向く。
70位のじぃさんだ。こいつは強いな、協会の会長のじじいと変わらない位に強い。
「なんだ、生きておったか?」
そう言われると殺して当たり前と言わんばかりに威圧される。イベントリからバトルナイフを1本取り出す。縮地を使い距離をつめ、ナイフを降り下ろす。
じぃさんがふっと消えると、顔面めがけ蹴りが飛んで来る。バトルナイフを持たない左で蹴りを受け止め対峙する、心を落ち着かせて神目を使いじぃさんが動くのを待つ。
しかし凄いじぃさんだ。こうやって見ると何処にも隙がない、どう攻めても攻撃が帰ってくる。攻めあぐねているとじぃさんに動きがあった、前蹴りだ。
とっさにそう思い体を横にずらしバトルナイフを持った手を蹴りに合わせ打ち込む。
ガキン!!
バトルナイフを何かが受け止めた。
「ハイ。そこまで!!」
日丘 さおりだ。
見ると薙刀を持って俺のバトルナイフを防ぎ、足ではじぃさんの体を押さえていた。こいつ、こんなに強いのか。それが素直な印象だった。
「じいちゃん。道場の見学に来た人をなんだと思ってるの?
コウ君もコウ君だよ?そんな武器、持たない」
「すまない。冒険者協会のじじいと変わらない位強い獣だと思ってしまった」
「ふん、ところで貴様は何者だ。うちのさおりは嫁にやらんぞ」
「じいちゃん。念願の跡取りが逃げていくよ」
「なぬ! 貴様か? さおりに手を出した男と言うのは!!」
「じいちゃん(怒)」
さおりが俺の前に立つと本気でじぃさんを怒り始める。




