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「まあ、良いや。私は日丘 さおり。17歳。女子高の三年生なのよろしくね♡」
「え? 日丘? あの女神の雫の一員の日丘さん?」
「詳しいね。私、姪に当たるの」
ヒィ(恐)。日丘がもう1人増えた。
「ちょっと、私が名乗ったんだから、あんたも名前を名乗りなさい」
「二前 宏 現在25歳。現在彼女いない歴25年。間も無く魔法使いになる予定の童貞です!!」
そう元気な声が後ろから声が聞こえた。
「日丘さん。余計な事を言わないで下さい」
「コラ!! コウ、お前は私と言う女がいながらまた若い女に手をだしやがって。私の乙女心をかえせ」
留萌さんと結婚したにも関わらず、協会内では留萌ではなく日丘で通している日丘さんが来た。
相変わらず俺でストレス発散しないと気がすまないようだ。
「ま、用事が終わったんで俺は帰ります」
そう逃げるように言って帰ろうとする。
「ちょい待ち」
首根っこを子猫のように捕まれてしまう。
すると書類を渡された。
「お前に興味があるクランの一覧だ」
「棄てといて下さい。どのクランにも所属するつもりもありません、それと会長のじじいと約束があるのでクランに所属するのは無理です」
「だろうな。こっちで破棄しておく」
◇◇◇◇◇◇
翌日、Cランクダンジョンにくる。
今日の目的はあのシルバーの猛烈に強いウルフ系モンスターと対戦予定だ、朝からダンジョンの前に人集りができていて入る順番を待っていると声をかけられた。
「コウ君。私もダンジョンに連れてって♡」
振り向くと日丘 さおりがいた。
無視してダンジョンに入ろうすると捕まってしまう。
「ひどくない? こんな可愛い子がわざわざ声をかけたんだよ。ちょっとは気にならない?」
「気にならない」
「む~。心配しないの? 俺がついてやらなきゃ、とかさ?」
「無い」
「ちょいっ待てやおい!!!!
あんた、私を傷物にしやがった癖に責任位とれやな」
「ふざけるな。お前を検査したのは警察官だ! 責任を俺に押し付けるな」
「待ってよ。
私、今度クランに入る試験があるの。私1人じゃ不安だから少し練習付き合ってよ。お願いします」
日丘 さおりがしおらしく頭を下げる。
「なら最初からそう言え」
本当は自分のレベルアップに集中したかったが仕方ない、日丘 さおりと2人でダンジョンに入る事にした。
今日集まっている冒険者の多くが大物狙いらしく、浅い階層にはほとんど人がいない。
俺達だけが浅い階層でウルフ系を倒していた。
「で、何が不安なんだ」
ギャワン!!
「え?」
「そらぁ」
キャンキャンキャン!!
「ちょっと、モンスター倒しながら人に物を聞かないでよ。私そこまで余裕無い」
「はっ、そこだぁ~!」
ギャン!!
複数のウルフ系モンスターに囲まれてしまい、モンスターを倒しまくる。
その際に話を聞いてみたがそれ所ではなかったようだ。
「あのさぁ。私Cランクダンジョン初めてなんだけど」
「そうか、早めに経験出来て良かったじゃないか」
「へっ!? 何このドS男。鬼教官、人殺し、変態、助平」
何か酷く無い? その言いぐさ。おまけに勝手に俺が倒したモンスターでレベルアップしてるし。
「あ、待って私レベルアップしたみたい。
ね、ねえ。二次覚醒した。剣鬼姫って付いてる。剣術特化スキル。剣神、剣聖に次ぐ能力って? な、なに?」
さおりの顔が青ざめている。
「間違い無いね、Sランクスキルの剣神、剣聖に次ぐ能力と言う事は単独Aランクは固いよ」
「ねぇ、コウ君。どうしよう。本気でどうしよう? どうしたら良い私?」
「一旦、ダンジョン出るぞ」
震えて動けなくなるさおりをおぶって歩く。おんぶするとさらに力が入らなくなったようでふっと体が重く感じる。
「コウくん」
「なんだ、体きついか?」
「ごめん、少し」
「もう少しだ我慢しろ、もう少しで冒険者協会だ。何か飲み物飲むか?」
「ありがとう、飲み物は大丈夫。
あ、あは、あのさ。
おんぶで街中歩くの。は、恥ずかしいよ」
さおりの顔をチラッと見る。まだ青ざめた顔をしてぐったりとしていた。
「は、レベルアップのせいで体が動けない癖に何を言ってやがる。なんならお前の学校近くを通って行こうか?」
「チッ!! ドS男、変態、助平」
さおりも俺に文句を言ってはいるが、自ら降りようとはせずに黙っておぶさっている。冒険者協会の待合室までくるとさおりを椅子に座らせる。
「歩けるか?」
「多分、むりだと思う」
「待ってろ」
事情を説明して留萌さんと日丘さんを連れてくる。
「おねえちゃんにお義兄さん」
さおりが少し緊張する。
「ダンジョンに一緒入った時に二次覚醒したから今はその影響だと思う、体が再生するまでは動かさない方がいい。そう判断して連れてきました」
日丘さんが近づく。
「コ、コウ? ど、どど、どうだった? やっぱり17歳の体は興奮したか?」
何故か日丘さんが1人興奮していて、鼻血を押さえる為にティッシュを鼻に詰め始める。
そして何故かキラキラとした目をしている。
「る、留萌さん。後、お願いします」
ガシっと留萌さんに腕を捕まれる。
「コウ君。この面倒な状況を僕1人に押しつけるのは、どうだろう? うん、人としてどうだろう? 優しいコウ君はそんな事しないよね?」
「ヒ、ヒィィ」
逃げるなよ! そう言われているような気がする、だって留萌さんが怖い顔をしている。




