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協会職員が身内の冒険者を従えて悪さをしようとした、法律で禁止された機材の持ち込みを職員自身が率先して行っていた。


それが研修参加者からマスコミの皆さんを通じて明るみに出た。


そして、それを暴いたのが伝説のFランクだ、それがテレビを通じて大々的に報じられてしまった。これがきっかけで伝説のFランクが勝手に1人歩きを始める。


それが理由だろう、俺は人々の好奇の目に晒され悩まされる事になった。基本的にテレビ報道は冒険者に対して悲観的だ、だからこそ冒険者が良く利用するのはSNSを使った配信だ。


そして配信を利用して人気を得る者もいる。それはモンスターを倒し、魔石を取るよりよっぽどお金になる。それを知っている為か配信が今の冒険者の主流だ。


だが、俺は一切配信をしていない。俺の主戦場はモフモフパラダイス(初級ダンジョン)だ。


そんなのを配信してみろ。あのモフモフ達のつぶらな目を、完璧な愛玩動物とみまごう見た目と行動を。


俺は一夜にして全国民を敵に回す事になる、奴らはそのくらい可愛い。


だいたい、配信する人の多くがC級ダンジョンから上のダンジョンが多い。モンスターは強くそれを打ち倒す冒険者はまさに正義のヒーローだ。


だがテレビでそんな姿は映らない、テレビが追うのはあくまでもダンジョン以外での冒険者の姿だけだ。だからだろう配信を得意とする冒険者はテレビを嫌い、独自に配信して信者に似たファンを獲得する。


だが、その正義のヒーローの格好良い姿は俺には当てはまらない。俺は卑怯極まりない戦い方をする、砂や砂利で目潰し、金滴、後ろから当たり前にぶん殴る。相手のすきを付いて武器で倒す。


そう、俺の卑怯な事この上ない戦い方に誰が共感してくれるだろうか? だから俺からしたらテレビがうざい。SNSがうざい。それが今の俺の本音だ。


コボルトダンジョンの研修の翌日に珍しく留萌さんから直接連絡が来た。今から家に迎えに来るらしい。


やって来たのはいかにもお高い車だ。良く政治家の人が乗り降りしたりするような、あんな奴だ。緊張しつつ、留萌さんを待つとその車から降りて来た。


「コウ君、遅くなってすまない。移動するよ」


そう言われその高級な車に乗せられて冒険者協会の本部に来た。詳しい事は俺も知らないが冒険者協会は本部、各支部に別れているらしい。普段、留萌さん達がいるのが支部。


本部はそれこそ国とのやり取りやら、各支部を取りまとめる仕事がメインらしい。


そしてそんな協会本部の建物に入り結構高い所まで来た。高所恐怖症で、高い場所が苦手な俺には生き地獄でしかない。


実際に余りの高さにおち○ち○が完全に縮こまってしまった(家に帰った後、速攻でパンツを取り替えたのは俺だけの秘密だ)。


ある部屋の前にくる、その部屋の主はどうやらこの冒険者協会を作った本人らしい。


中に入ると60歳位だろうおじい様がいらっしゃる。未だに現役だと思われるその風体は余りに恐ろしい圧力を醸し出していた。


「来たか、座ってくれ」そう言われて前の椅子にすわる。


「君が二前 宏か?」

思わず逃げだそうかと思った。この爺さんは争ってはいけない、俺の本能がそう言ってる。


「そんな緊張せんで良い。今日はお礼を言いたかっただけだ。」


「お礼?」


その言葉の圧力に、俺の本能が騒ぐ。今すぐここから離れろ。今すぐひれ伏せ! 死にたくなければ!! そう言ってアラームを鳴らし続ける。


「コウと言ったか? 貴様、本当の事を報告していないな?」


本当の事? 理由もわからずバトルナイフに手をかける。


「フン!!」


威嚇された俺は全てを悟った。


そう、このじじいに逆らってはいけない。


目を離しても、動いてもいけない。


このじじいの許可無しに呼吸すらしてはいけない。


それは絶対的な力だ。俺達冒険者は能動的な存在だ。いわゆる本能の存在、それは獣の本能に近い。


それは有る意味で劣化した存在だ。力こそが物を言う世界、それは死をもて遊ぶ世界。だからこそ力に、その能力に敏感なのが俺達冒険者と呼ばれる人種だ。


俺達は死に敏感だ、それは恐怖に敏感だ、その絶対的な力こそが超自然なのだ。


だから俺達は超自然体なのだ。


「俺のスキルは覇王だ。


だからこそ、アメリカやヨーロッパ、中央アジアを牽制してきた。


コウ、貴様も同じか同等の力を持っているな。


誤魔化すなよ」


じじいにそう言われ睨まれる。


「ふぅ」


仕方なく冒険者カードを出す、人に見せるためにはこれしかないからだ。そして仕方なく隠匿を外して見せる。


「俺のスキルはジョブ・スキル ツリー(逆)だ。


言葉で言うより、実際に見てもらった方が早い」


「「ジョブ・スキル ツリー(逆)?」」

留萌さんとじじいが驚いた顔をしている。


「コウ君。それはどういう物だ?」

留萌さんが恐る恐る聞いてきた。


「そのままですよ。俺が最終的になれるジョブは覇王」


「「覇王?」」


「はい。ですが、覇王になるために必要なジョブ全てを網羅する必要がある。


実際に今は初級のジョブを全てこなす事に邁進してます」


「コウと言ったか。ステイタスボードを開けれるか?」


「ステイタスボードは俺以外に見られないじゃ無いのか?」


「あまり知られていないが、同じスキルを持つもの同士はお互いのステイタスボードが見られるのだよ」


じじいにそう言われ仕方なくステイタスボードを見せる。


「フム、今は双剣使い、暗器マスター、行商人か。


お前、まだ二十歳だな。随分と頑張ったものだ」


フレンドリーな話し方のじじいに対し、より警戒心が強くなる。


「コウ、俺のスキルを見せてやろう」


そういうとじじいがステイタスボードを出す。


それは何故か俺にも見られた、だってじじいのジョブは覇王だったんだもん。


そのスキルは完全にイカれていた。

全てのジョブを圧倒していて、完全に力でねじ伏せるにふさわしいスキル。だからこそ、他国の圧力に負けることがなかった。それを物語っている。


「コウ。ネクロマンサーやナイトメア等の職を聞いた事はあるか?」


「いや」


「そうか、お前は俺を越える資質がある。お前は俺の後継者だ。逃がすつもりは無い、嫌なら貴様の実力で逃げろ」


思わず睨み返してしまう。が、今の俺じゃあ100%勝てない事は理解できる。


「俺は俺だ、あんたの言う通りになるつもりはない。


それに俺はあんたと比べて若い。あんたを超えるのが俺なら、俺はあんたの思う通りに動くつもりは無い」


「クク、それで良い。それでこそ覇王だ。楽しみにしてるぞ」

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