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さおりの強さに集まった警察官は勿論だが、俺を狙いやって来た奴等の方が完全にビビっていた。
そんな男達を見てさおりの駄目押しが入る。
「貴方達、顔は覚えたよ」
「「「「「ヒッ ヒィ」」」」」
集まった警察官が男達に小さく声をかける。
「心配するな、少しの間は刑務所だ。そこだけは安心だろ」
「な、なあ。俺、全部話す。
あんなのに狙われたら命がいくつ有っても足りねぇ。全部話すから助けてくれよ、ずっと刑務所で匿ってくれよ、なぁ」
「俺もだ!」「お、おれもっ」
捕まったにもかかわらず警察官に命乞いをする程に、さおりに恐怖を覚えたようだ。
警察も帰り静けさが戻る。
「さおり、帰って年越しの蕎麦でも食べよ」
「え? まだ、カウントダウンには少し早いよ」
「良いから着替えておいで」
それから1ヶ月程たった頃に一度俺の意識が目覚める。
聞いていたよりは1ヶ月は早い、が。本当の試練はそこからだった。
息を吸うと全身に激痛が走り、息を吐くとそのまま痛みで気を失いそうになる。
目を開ける事もできず、覚醒と失神を繰り返すような1日を何回も何回も繰り返す。
俺が目覚めた事は麒麟は気付いてようだが俺に反応をする余裕は全く無く、麒麟が本気で心配し始める。
「さおり、主の意識が戻ってるんだけど、体中が痛いらしくて、主が苦しそう。どうしたら良いかな?」
「え? 意識有るの?」
「うん、ほら目を動かしてるでしょ。
でも目を動かすだけで激痛が走ってるみたい。主の魔力が凄く不安定なの。
どうしよう、意識がない時の方が安定してたよ」
「大丈夫よ。コウ君なら必ず元気になる、私達が信じてあげなくてどうするの。
でも、麒麟はコウ君の気持ちが少し伝わるんだね。なんか羨ましいかな」
「そんなこと無い。妾達は主の魔力で生かされてるだけだから、魔力の機微はわかる。
けど、さおりと主は心がつながってる。主、さおりがくると安心して寝るけど、妾だけの時は寝たりしない。
妾達はやっぱりさおりとは違うんだよ」
「コラ(怒)」
さおりが麒麟の両肩を掴む。
「麒麟、そんな悲しい事言っちゃ駄目。
シルバーウルフの時もコングエイプの時も、コウ君の悲しみが嫌と言う程伝わったでしょ!!
貴女達もコウ君の大切な家族なの。忘れないで」
「ご、ごめんなさい」
俺が激痛と戦う事2ヶ月。ようやく体を起こせるまでになった時にはすでに東京に雪はなく、寒さもゆるんできた頃だった。
そこからはほとんどリハビリだ。
箸を持つだけで全身に痛みが走り、トイレに行くのも一苦労の日々を乗り越える。
さおりが春休みに入った頃にようやく外を散歩出来る位に回復する。
「ほらほら、おじいちゃん。
杖無しだと未だ大変でしょう。杖ついて歩こう」
「そうかいの。わしゃ、まだまだ若いぞ。杖等無くても」
「駄目、そう言って昨日も段差でつまずいて転んだでしょ」
「わかったよ。さおりの言う通りにするよ」
なんてふざけた会話も出来る位に回復をしてきた。
「所でコウ君。今日何を買いたいの?」
「魚、ムニエルでも作ろうかと思ってさ」
「え? 時間的に早くない?」
「そうでもない、晩飯一つ作るのに3時間以上かかる。包丁持つとまだ上半身に痛みが走るし」
「じゃあ、私が手伝う。だから、パスタにしよ」
「良いけど、ソースはどうする?」
「ダンジョンに持ってきてた、ホワイトソースがいい。
あれお母さんも大絶賛してたよ」
「そうか、じゃあ。そうするか」
それからさらに1ヶ月が立ち、さおりの大学の卒業相当の試験なんかが終わる。そしてさおりとさおりの両親と一緒に車に乗って病院に来ていた。
ばあちゃんがガンだと言うことを昨日初めて知らされ。お見舞いに来ていた。
「ばあちゃん。気分どう?」
「コウちゃん、良く来たね」
「ごめんね、中々お見舞いに来れなくて」
「何言ってんの。それより、なんか大変な仕事やらされたんだって?
コウちゃんは大丈夫なのかい?」
「俺は問題無いよ」
気が付くと、俺とばあちゃんだけになった個室でゆっくりとばあちゃんと俺だけの時間を楽しんだ。
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さおりの大学卒業資格が取れたと連絡が入ったのは、5月前の少し暖かくなってきた日の時だった。
その時、俺とさおりが北海道に行く準備を進めていた。キリーの封印を解く為あのダンジョンに向かう予定だ。
「ねえ、どうせ北海道行くんだからさ。札幌と旭川のダンジョンにも行かない?」
「難しいな、ダンジョンはここだろ。
札幌に行くのに4時間近くかかるし、旭川も札幌からかなり離れてるぞ」
「う~ん。でも行きたい。いきたい~い」
仕方ないな。本当に半年近くも頑張ってくれたお陰でここまで元気になったもん。
「わかったよ。キリーのダンジョンは何とか早めに終わらせよう。
それと小樽から日本海フェリーも出てるし、函館から青森までフェリーもあるし、まあ何とかなるかもね。フェリーの予約は北海道に行ってからにしようか」
「やったぁ」




