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新しいダンジョンから帰ってくると、さおりと一緒に何処にも行かずにダラダラと過ごす、やっぱり初めての誰も入ったことの無いダンジョンは大変だ。
「ねぇねぇ、今度の日曜日フリーでSランクダンジョンに行かない?」
「え、良いけどどうしたの?」
「学校落ち着いたの。それで体動かしておこうと思ってさ」
「そうか、良いかもな。俺ももう少しで今のジョブ終わりそうだし」
「そっかあ。
でも、最後って事は相当大変なのかな?」
「う~ん。前回はダンジョンの中で切り替えたし、戦ってる最中だったからそんなに厳しさは感じなかったけど。
でも会長のじじいの話しだと英雄と覇王は天地程、能力に差が有るらしい。
会長のじじいも覇王のスキルになった時は半年動けなかったって言ってたからな」
「半年? そんなに」
「ああ、3ヶ月意識が無くて残りの3ヶ月は激痛との戦いらしい。
まぶたを開けるだけで死ぬかと思うらしいよ」
「大丈夫? ダンジョン行くの止めようか」
「大丈夫だよ。
ちなみに家賃や水道光熱費は問題無いからね。でも半年動けないとなると誰かに助けてもらわないとね」
すると勢い良く麒麟が飛び出す。
「ハイハイ!! そう言う事は私に任せて。
さおりとの時間をじっくり堪能しながら、主の面倒見てあげる」
「いや、お前が一番心配だよ」
「ガーン」麒麟が後に倒れる。けど、ガーンって声に出すか普通。
「でも、麒麟がいてくれるなら、私も安心かな」
「でしょでしょ」
「それと、お父さんとお母さんにも相談してみる。私1人だとやっぱり大変だからさ」
「そうか。そう言えば明日だよな。会食?」
「そうだね。じゃその時に相談してみるか?」
「そうしよう」
すると麒麟が余り期待されていないと思ったのか凄く落ち込んでしまう。
「麒麟、さおりの両親だって毎日来るわけじゃない。
それと夜は確実にお前に頼るしかないんだ。でも、俺に何か危険があった時は遠慮しないでさおりに頼れ」
「そうだよ。私は麒麟を頼りにしてるんだから」
「わかったぁ」
麒麟が喜びを爆発させる。
翌日、さおりが両親と晩御飯を食べに来ている時、さおりから俺の再覚醒の話が出た。
「それでコウ君も会長と同じ覇王のスキルを持っていて、次の覚醒で覇王になると言うことか」
さおりのお父さんが神妙な顔をする。
「それでどのくらい違うの?」
さおりのお母さんが興味津々とばかりに聞いてくる。
「ハイ、会長のじじいの話しだと、英雄で最大レベル10万が限界らしいです」
「「「レベル10万?」」」
だよね、普通だよねその反応。レベル1万でSランクで、それ以上は検査のしようが無い。多くのSランクですら5万を越える事がない、そう言われている。
「そ、それで覇王はどの位まで上がるの?」
「わかりません。天井がないそうです。すでに会長のじじいは30万レベルを超えているらしいです」
「そっかあ。納得した。どうりで会長は人間辞めてるって思ったもの」
さおりのお母さんがそう言ってケラケラと笑う。
やっぱり俺も人間辞めなきゃいけないのかね。
「一応、聞いた話しですがアメリカに人の限界を突破するギフトがもらえるダンジョンが有るらしんです。
日丘 克典と館林 鈴蘭はそのダンジョンに入り各々に一回目の限界を超えて二回目の限界までレベルを上げたらしいです。
それでも会長のじじいの前では借りてきた猫のように大人しかった、それを考えても天井は無いと思います」
「わかりました。コウさんのお話を聞く限り、半年で動けるようになるのは早い方ですね。間も無く覚醒出来ると言うことなら、後1ヶ月はダンジョンに入らないようにして下さい。
私の理事としての任期が後三週間で終わります。
そうなると一年間は理事職から離れないといけない決まりです。なので一年間は我々家族がコウさんの面倒をみたいと思います」
さおりのお母さんの決断が早かった。
「私も大丈夫よ。予定通りに大学も卒業して見せる。そしたらコウ君の家で生活しようかな」
「「さおり、それでは結婚してからだ!!」」
「は、はい」
さおりとさおりの両親に対し頭をさげる。
「すみません。ご協力に感謝します」
翌日、俺とさおりの両親とで協会を訪れ、留萌さんとの話し合いになる。
「お話はわかりました。私も紅葉さんから同様の話を聞いた事があります。
これから一年間はコウ君に関するあらゆる依頼は全てキャンセルします。それと覚醒が終った後、幾つかダンジョンに入った方が良いと聞いてます。
力の扱い方に慣れる必要が有るようです。
コウ君、負けずに戻って来て下さい。僕達の子供を抱っこしてもらわないと困りますからね」
「ありがとうございます。明日の初心者研修はダンジョンに入らずに外で研修の話やチェックだけでも良いですか?」
「大丈夫です。明日は別の冒険者の方が中に入ります」




