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その日は、午前中にダンジョンに入った後は何処にも寄らずに家に帰ってきていた。
いつものようにばあちゃんに会いに管理人室に行くと、ばあちゃんが困った顔をしていた。
「ばあちゃん、どうしたの? なんか、悪い奴でも来たの?」
「ああ、コウちゃん。
なんでもないよ。さちえから手紙が来たけどさっぱり意味がわからなくてね」
さちえちゃんの手紙の中身がほぼ英語だった。最初の挨拶だけが日本語で残りは英語だけでこれじゃばあちゃん読めないわな。
俺も手伝って翻訳したけど半分位しかわからなかった。
「コウちゃん、残りはさちえが帰ってきたら本人に聞くよ。ご飯食べて行きな」
俺はばあちゃんの許可を得て1人で部屋を借りて生活をしていた。けど、しょっちゅうばあちゃんの家でご飯をご馳走になっている。
初めてのダンジョン研修が行われる日の前日、1人でコボルトダンジョンにくる。裏ジョブの双剣使いと暗器マスターがどれ程利用可能か試す為だ。
ダンジョン内をウロウロとしている人型モンスターは何の問題もなく倒す事が出来るがわかった、感覚的に剣士のレベル300と遜色無い位に扱い易い感じだ。
出会うモンスターを殲滅させながらボス部屋にくる。
ステイタスボードを出すと双剣使いのレベルが15になっていた。やっぱりレベル1からスタートすると上がりやすいらしい。
いつものようにボスを倒す。やはり剣士のレベル300と遜色無い位に扱い易いし、強い。
これなら初研修も問題無い。そう思う。
その日。世界で初めて冒険者の初心者研修なるものが始まるとなり、テレビやら報道関係者が物凄い数訪れる事になった。
そういった対応は全て冒険者協会に丸投げして開始をまつ、そこに研修を受ける冒険者が集まった。数にして約20名だろう。
協会の説明があり、裁判所、警察と挨拶と説明があった。
そして俺の番になる。
「おい、本当に伝説のFランクが出てきたぞ」
そういった声が何処からともなく聞こえてくる。
「紹介にあった二前 宏だ。
研修は俺の先導で入る。先に言ってある通り撮影や録音可能な機材はここで置いていくように。
もし、法律を守らずにダンジョン内に持ち込んだ物は全て破壊することになっている。
後程、協会職員が調べる。その時、間違いなく全てを出せ。
破壊されてから文句を言っても意味無いからな。
俺からは以上だ」
協会職員が来て一人一人に聴取、全てを出せたが、何人かがごまかしてダンジョンの中に入ってきた。
「さて、
最初に、機材の持ち込みをした奴が3人程いる。今、出てくれば痛い目に会わずにダンジョンを出れるが、どうだ?」
やはり、俺の問いかけを持ち込んだ3人は誤魔化すつもりらしい。3人共知らん顔をしている。
一人目の前に来るとカメラになった眼鏡を確認、眼鏡型カメラごと顔面を撲る。
殴られた衝撃で眼鏡が破損、殴られた男も倒れて気を失う。
呆けた顔で見ていたもう1人の男のギブスに仕込んでいたカメラと録音機械ごと男の腕をへし折る。
「ギャー」
痛みで我を忘れる男の頭を殴り大人しくさせる。
最後は女だ。やけに目立つおっぱいをしている、その目立つ胸に仕込んだカメラをバトルナイフを差し込んで破壊する。
すると胸に仕込んだカメラが煙を上げ火花を飛ばし炎が出て女の服が燃え始める。
「ギャー」
女が服を脱いで機材を落とす。洋服や体も少し燃えていたようで泣いていた。
「さて、法律違反の3人はそのまま現行犯だな」
日丘さんが近付いて女を押さえる。
「そんなことより病院でしょう。この怪我見てわからないの?」
女が日丘さんに文句を言う。
「最初に説明したろう。黙って従えば良かったんだよ、今回は殺されなかっただけでも良かったと思いな。
それと、こいつを伝説のFランクて言い出したのは私なの。あんたら馬鹿にしてるけど、5年以上単独でボスを討伐した奴は私の記憶じゃこいつだけだ。
あんた達を1人で全員殺す位、息を吸うように簡単にやってしまう奴だよ」
日丘さんの説明でそこにいた人達全てが恐怖の余り大人しくなる。
「コウ君、3人は警察官に引き渡して来たよ。初級ダンジョンの研修を始めましょうか」
留萌さんの声が聞こえてきた。
ダンジョンでモフモフ兎を捕らえて研修生達の前に連れてくる。
「これはこのダンジョンのモンスター。
シルバーラビット。
こんな可愛い見た目だが脚力が凄く、足で蹴ると軽自動車が吹き飛ぶと言われている程だ。
それ程強力だし、このシルバーラビットとシルバードックはこの見た目で油断した冒険者を沢山、再起不能にして来た。
それは有名な話だ。少なくてもレベル50を過ぎるまでは油断禁物だ」
そう言ってシルバーラビットにとどめをさす。
「最初から出来るとは思わない事だ」
シルバーラビットを地面に落とすと魔石と毛皮を残し消える。魔石と毛皮を持つ。
「これが俺達の収入源だ。この魔石は1個100円前後。
そしてこの毛皮、これが3000円~5000円程かな。毛皮はあまりポップしない珍しい物だ。
約1000匹倒して1個出るかどうかと言う物だ」
「「「「「「ハァ」」」」」」
研修生達のため息が聞こえて来た。




