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そう、俺の全てはこの日からはじまった。


「あ、あの」


「ハイ、登録ですか? お問い合わせですか?」


ふう、緊張してきた。

「ぼ、冒険者協会に登録したいです」


「え? 未だ学生さんですよね。お父さんやお母さんは? 1人で来たの?」


「1人で来ました。登録したいです」

あ、あれ? なんかおかしいこと言った? 受付の女性が俺を訝しげに見て睨んで来る。


「あの、冒険者登録って、覚醒したらなれるんですよね」

ヒッ ヒィ!! やべぇ、さらに睨まれた。


「オイ、日丘。お前さん、お客様を睨んで何してんだ」


「だって課長」

そう言うと課長と呼ばれた男の腕を掴みデスクの奥へと消える。


俺はその日、生まれて初めて冒険者協会に来た。


突如として60年くらい前にダンジョンなる物が日本に突然と出来た。


所がその時は誰1人として中に入る事が出来なかったが半年程たったある日。突然、覚醒者と呼ばれる者が出る。


それまで誰1人として入る事のなかったダンジョンに入り、モンスターの存在を証明、写真や動画を使い全世界に示した。


それからモンスターを倒した時に得られる魔石に莫大なエネルギーがあることが判明。その時から日本は、資源の乏しい国から世界有数の資源大国になった。


その後世界中にダンジョンが確認される。

そして、何故か最近になって俺も覚醒者であることがわかった。


俺は二前(ニノマエ) (コウ) 15歳だ。


丁度一年前の今日、俺の両親が海外旅行中にダンジョン開発中の事故に巻き込まれ死亡した。


俺が14歳の時、それはあまりに突然やって来た別れだ。


俺の親戚連中と言えば最初の1時間程は悲しそうな顔をしていたさ。その後はうちの両親の遺産の取り合いだったよ。


俺の手元には何も残らず住んでいた家すらそいつらの手に渡っていたのだ。


必要書類と言われ親戚達が連れてきた弁護士指導の元に、サインをして判子を押したのがきっかけだ。そんな慌ただしい中で有ることに気付いた。やなことが有ると親戚連中の目に止まらないように隠れていた場所がある。


それがダンジョンだった。


有る親戚の言葉だ。「俺も覚醒者ならダンジョンに入れたのに、あの中はお宝の山だ。そしたらてめえ等全員、俺の家政婦として雇ってやっても良いぞ」と。


その時思った。


そうか、ダンジョンに入れば俺はこいつら(親戚)から抜け出せる。そうすればこいつら(親戚)と顔を合わせる必要もない。


それから調べると、ダンジョンに入る能力を持つ者を冒険者と呼びこの冒険者協会に登録することが一番稼げる。


俺は絶体に金持ちになってやる。そしてあの親戚連中の鼻を明かしてやる。そしてすり寄ってきた時に、全てを拒否して地獄に突き落としてやる。お前達が俺にしたように。


そう心に誓ったんだ。


「待たせて悪かった。俺が君を担当する留萌(ルモイ) (タケル)と言う。


うちの馬鹿から話は聞いた。冒険者協会の登録は覚醒者なら誰でも可能だ。一応、本人確認書類が必要だけど、今日は持ってきているかな?」


「あ、は、ハイ。住民票でも良いですか?」


「かまわない。それと学校の学生証は有るか?」


「ハイ」


「うん? 君は二前さんのご子息か?」

「え? 父か母を御存じですか?」


「オイ、日丘。これから俺が言う物を全て準備しろ」

「え? 何、この鬼上司、こんなうら若き乙女に仕事を押し付ける何てなにを考えているんだか。


って痛い痛い痛い。


頭をゴリゴリと拳で擦るのは無しですぅ」


「なあ、二前君。君は住む家は有るか?」

「え、いえ。叔父から今月中に出ていくように言われています」


「オイ、日丘。ついでに遠藤さんにも連絡しとけ」

「はぁ~い」


日丘と呼ばれた人の気だるい返事が聞こえてきた。そして冒険者と冒険者協会の説明を聞いた後で、留萌さんと一緒に何処かに移動する事になった。


「二前君。この人は我々冒険者協会の職員や指定冒険者達のマンションを専属契約してくれている、大家さんだ」


「は、はぁ」


突然連れてこられた場所は冒険者協会と初級ダンジョンの間位に有る少し古い10階建のマンションだった。


そしてわけも分からずにその管理人室に押し込まれて今に至る。


「二前君、大家さんの遠藤さんと我々を繋いでくれたのは君のお父さんなんだよ」

「えっ 父さんが?」


「そうだよ。君のお父さんは一般人だけど冒険者や協会について深く理解してくれていてね。


お陰で我々も家を借りたり、アパートを借りたりと凄く助かったんだ。


一年前に二前さん達の訃報を聞いた時は遠藤さんと一緒に葬式に行ったんだよ」


「あっ!」

あの時、親戚一同はわざわざ来てくれた冒険者とその関係者を葬儀会場に入れる事を拒んだ。


物凄く毛嫌いして追い返した癖に、息子の俺を心配してくれた冒険者や関係者の方達に金をたかっていた。


「すみませんでした」

それを思い出した俺は思わず二人に土下座した。


「頭を上げなさい」


遠藤さんの声が部屋に響いた。

「私は元々冒険者の方を嫌っていてね。


粗暴で野蛮な職業だ、とね。理解が乏しいのはこの国の特徴でね。


でもね、君のお父さんから紹介を受けて来る冒険者の方達は、みんないい人だよ。


礼儀正しいし、困ったことが有るとみんな直ぐに駆けつけてくれるし、何より冒険者に人気のマンションって評判になってから、ゴロツキどもが全く近寄らなくなったの。


一般人のゴロツキは冒険者1人にすら勝てないからね。お陰でうちの町内は安心な町内と噂になってね、引っ越ししてくる人が増えているのよ。


これもみんな貴方のお父さんのお陰だよ」


遠藤さんは結構な年のおばあちゃんだと思う。そんな人に感謝される何て父さん凄かったんだな。


死んでからそんな話を聞くなんて。


ちょっと後悔した、もっと沢山、沢山興味を持って話せば良かった。


そんな後悔だけが後から後からわいてくる。


      ◇◇◇◇◇◇◇


ダンジョン プチ情報 基本的にどのダンジョンにも付いてる張り紙


【ダンジョン入り口ではじかれます】


拳銃等を始めとする銃火器。消火器等々。

車を始めとする四輪車、自動2輪、自転車、手押し車、ベビーカー、車椅子等。


杖、松葉杖は問題ありません。


ペット、動物も入る事ができません。


【ダンジョン内は電波が通じません】


携帯、パソコン、カメラ、ビデオカメラ等持ち込み可能性。


【(注意)ダンジョン内部の生配信はできませんのでご注意下さい】

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