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緑園  作者: まるだまる
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緑園9 階層を進めよう。

『我が名はお前たちには発音できない。我のことは主神と呼ぶがいい』

『我が名はお前たちには発音できない。私のことは主神と呼ぶがいい』

『ボクのことは主神でいい』


 あの、全員主神って言われても困るんですけど。

 それよりも、神様が揃って取っ組み合いの喧嘩っておかしいと思うんです。


 ローブ姿の神と銀髪のお姉さんが筋肉マッチョに頭を掴まれ持ち上げられたが、お姉さんは負けじと顔面を蹴りつけ、ローブ姿の神は筋肉マッチョの脇腹をぼこすか蹴っている。


『我こそが主神である』

『違う、私こそが主神だ』

『ボクが主神』

「ちょっと落ち着いて?」


 おっさん顔面を蹴られて鼻血が出てるから拭いた方がいいよ。

 神なのに威厳もへったくれもないな。


「まず、昨日のことから説明してもらえる?」

『ここに来させるために呼んだ、それだけだ』

『説明が足りんぞ。戦神よ』

『戦神と呼ぶな、我は主神だ。大地神』


 ほうほう。

 主神と自分で言っているが、実はマッチョのおっさんが戦神で銀髪のお姉さんが大地神ね。

 ローブ姿の神様は何の神様なんだろう。


「そちらの方は?」

『ボクは魔神だった。……今は主神』


 そう言ってローブを降ろすと、中から出てきたのは可愛い女の子。

 見た目だけでいうと、僕らよりも年下、中学生くらいな感じ。

 黒色ショートヘアで髪がつんつんしていて、耳が少しだけ尖がっている。

 ちょっと無表情なのが残念。でもボクっ娘ですか。いいですね。


 なんか銀髪のお姉さん――大地神さんに睨まれてるんですが。

 僕が何かしたのだろうか。


 説明としては戦神さんが言った言葉の通り。

 僕たちをこの部屋に連れてくるのが目的だったらしい。

 この部屋は現世から隔離された空間で、ダンジョンではないそうだ。

 色々調べたいことがあったので来させたらしい。

 

 主神は誰なんだという話を聞いてみると、この世界の本当の主神がいなくなったらしい。

 家出ですか。刺激が足りないと。

『おら、地球さ行くだ。強い奴に会いてぇ』と言って行ったきり帰ってこないと。


 どこかの戦闘大好き猿星人みたいな神ですね。

 強い奴にやられてもう死んでるんじゃないですか?


 主神が不在となった今、誰がこの世界を治めるのってなって、神々が争ってるというわけですか。

 大事ですね。

 

『うむ。冥界神と海神は面倒だと言って我に任せた』

『天空神と鍛冶神は厄介ごとはごめんだと私に任せた』

『放牧神と夜神と芸神はボクになら従ってもいいとボクに任せた』


「それでお三方が争ってるというわけですか?」


『うむ。我らは意見の食い違いがありすぎてな。協力できぬのだ』

『戦神はすぐに戦争を起こそうとするからな。大地が汚れる』

『ボクは魔法を使ってくれればそれでいい』

『だから魔法だけ使うのはマナが枯渇するから少しにしろ』


 ああ、これは大地神さんがまともな感じだな。


『しかし、人が増えれば限られた土地を奪い合い、戦になるのが世の常』

『ボクは魔法を使ってくれればそれでいい』

『土地が足らぬなら海を埋めてしまえばよいと何度も言ってるだろう』


 前言撤回、大地神さんも思考が危ないわ。

 海神さんが大地神さんを推さなかった理由はこれだろう。

      

「あの、主神が誰かはともかく、僕が呼ばれた理由を聞きたいんですが?」

『こやつらのせいだ』


 大地神さんが戦神さんと魔神さんを指差す。


『お主の記憶がないことは分かっている。ルールだからな』

『だが、キミが特異点になっている現実を見逃せない』


「特異点?」


『キミ、怪しげな魔法使ってるでしょ。アースニードルの呪文で変なの生やしてるよね』


 あれでも一生懸命覚えたんですけど。

 まあ、確かに変なのですけど。ブロックですけど。


『分かっている。キミの呪文は間違っていないし、キミの努力は認める。だが、キミは正しい呪文を唱えて違う結果を出している。それはこの世界の理から外れている。それだけで既に特異なんだ』

『そこな娘たちもそうだ。既に滅んだはずの一族の娘が、二人もいるのがおかしいのだ』


「うぇーい。私?」

「私もですか?」


『二人ともだ。歴史の紐を辿れば既に滅んでいるはずの部族。神宿(かみやど)の一族』

『神をもてなした一族だったんだよ。ボクたちの先代が世話になったそうだ』


「うぇーい。そう言われても私には分かんないよ。実の両親は私が小さいときに亡くなってばーちゃんに育てられたし」

「私も分からないです。孤児院育ちですし、赤ん坊の頃に拾われたので、親の顔も知りません」


『生まれや育ちはともかく、お主らの職とスキルが問題なのだ。魔法使いの職と怪力無双のスキルは神宿の一族だけしか持っていなかったものだ。何故、復活しているのか、我らでも分からなかった』

『魔法使いって職業は、神が使う魔法ですら使えるんだよ。怪力無双のスキルも普通の人と比べ物にならない力だからね。人は恐れたんだよ。異常な力を持つ一族を――だから人に滅ぼされた』

『敢えて言うが、私たち神は何の干渉もしてはおらん。人が決めたことだ』

  

 整理すると、僕が特異点で、ラーバとサティアが神宿の一族の末裔。

 僕らが揃っている時点で色々とおかしく危険らしい。

 何が危険なのかが分かりにくい。

 こういう時はきれいなお姉さんに聞きたい。教えて大地神さん。


『お前たちが揃っていると、通常とは違う結果が生まれる可能性があるのだ。例えばの話だが、お前たちが畑を耕し、種を撒いたら次はどうなる?』

「普通、芽が出るとかじゃないですか?」

『魔物が生まれる可能性もあるのだ。特異点とは予期できぬ出来事を起こす可能性がある』


 身に覚えがあると言えば……


「僕のステータスか!?」

『ステータスがどうかしたか?』

「僕のステータス、数値じゃなくて変なのが書かれてるんです。あれって特異点のせい?」

『それはボクが書いた』


 犯人が目の前にいた。

 魔神さんが書いたの?

 何でああなったか教えて欲しい。


『いや、いつもみたいに書いてくださいって、呼ばれたから見て書いたんだけど』

「数値化できなかったとか?」

『あんな風にしか書けなかった。元々キミのステータスって数値化されてなかったし』


 意味が分からん。


「全然変化がないのは?」

『だってキミは変わってないから変えようがない。今もそうだよ』


 精神的に一番でかいダメージだった。

 ラーバとサティアが「よしよし、ちゃんと成長してるよ」と慰めてくれる。

 ありがとう。持つべきものは仲間だよね。

 僕のステータス聞いて笑い転げてたのは許さないけど。

 ラーバとサティアのおかげで回復できたので、話を続けよう。


 それにしても大地神さんが睨んできて怖いんですけど。

 僕は何かをしでかしたんでしょうか?

 

「えっと、僕らが一緒にいるのはまずいということですか?」

『そうではない』

『そうじゃないよ』

『そうだ』


 あれ、戦神さんと魔神さんは違うと言ってくれたのに、大地神さんだけがそうだって言ってる。

 この食い違いは何?


『大地神よ、ヤキモチも大概にせぬか』

『ボクもそう思う』

『なななななななななな、何を言っておる。私がヤキモチなど焼くはずがないだろう!」


 大地神さんがむちゃくちゃ照れてるけど、可愛いね。

 あんな美人さんの態度見ると癒されてしまう。


「うぇーい。渡さん!」

「うぇーい。渡しません!」


 大地神さんの態度を見たラーバとサティアが僕の腕にギュッとしがみついて言った。

 君たち面白がって煽るのは止めなさい。

 大地神さんの顔が引きつっていますよ。


『オホン……私には陽太を送り込んだ責任があるからな。様子を見ているだけだ』


 大地神さんは気を取り直したように、ぷいっと顔を横に向けて言った。


『そうは言うがの。こいつずっとお主のことを見ておるのだ。我らのところにも今日は陽太が魔物を倒しただの、戦闘訓練でボコボコにされたから可哀想だの、結婚もせずに女と同棲なんて許せるかとか、つまらんことを毎日毎日飽きもせず言いにきよって、迷惑以外の何物でもない』

『ボクもキミが魔法を覚えられないのを何とかできないかって相談されたけど、ボクらは直接干渉が原則禁止だからね。説得に苦労したよ。キミが魔法で苦労するたびに、ボクのところへ走り込んでくるんだから、迷惑と言えば迷惑だ』  


 今の話を聞いていて、ラーバとサティアが大地神さんに牙をむきそうなくらいガルルルとか、シャーって唸ってるんですけど、いきなり野生に帰るの止めてもらっていいかな。

 

 ああ、大地神さん顔から耳からうなじまで真っ赤っかです。

 僕は大地神さんに今も愛されているんですね。

 純粋に嬉しいです。


 でも、記憶がないので、何で僕のことを愛してくれるのか分からない。

 少し悲しいし、寂しい。

 このきれいなお姉さんとどんな時間を過ごしたのだろう。

 思い出せるものなら思い出してみたい。



『話を戻すが、お前たちが揃っていても、揃っていなくても問題は変わらん。理解ができんかもしれんが、お前たちが生きていようが死んでいようが同じなのだよ。未来がそう示している』

『キミたちの誰かが死んだところで変わらない。そういう問題じゃなくなってきているんだ』

『……一緒にいる必要はないのだぞ』


 ますます意味が分からないけど、僕たちがパーティーを解散しなくてもいいのだけは分かった。

 とりあえず安心だ。

 大地神さんが何か言うたびにラーバとサティアが敵意むき出しになるのは勘弁してもらいたい。


「あの、僕の呪いって解いてもらえるんですか?」

『駄目だ。解呪することはできるが、今の陽太にその資格がない』

『解呪するにはキミ自身に一定のレベルと功績がないと認められないんだよ』

『陽太はまだ実績もないからな。お主自身の徳を積むことも忘れるな。といっても仕方がないか』

「なんで?」 


『ここでの記憶はお前たち三人の記憶から消えるからだ』

『昔から神の情報が漏洩しないようにルールで決まっているんだ。ゴメンね』

『ここで見つけた宝は持ち出しできぬ。代わりに少しだけいい物をやろう』


 突然、ザザザとテレビの画面にノイズが走るように目の前がちらついた。

 きっと元に戻されるのだろう。

 

『特異――違い――安定――様子』

『キミ――見守る――試練――しれない』

『陽太――早く――二人と別居――』


 ノイズが所々混ざってよく聞き取れない。

 この記憶を持っていけたらいいのにな。

 大地神さんだけ違うこと言ってたような気がするのは気のせいかな。


 ☆


 ラーバがマップとにらめっこしている間にボクとサティアで索敵しながら部屋を探索。

 魔物はおらず、壁際に石の棚はあるものの、めぼしいものは何も見つからなかった

 石の棚を動かそうとするが、僕の力ではびくともしない。

 

「サティアこの棚動かせる?」

「やってみます」


 サティアが棚をがっしり掴みひょいと持ち上げ移動させる。

 棚を移動させたが壁には何もなく、床を見てみると小さな金貨が一枚落ちていた。


「あっ、小金貨1枚見っけ!」

「やったー。大金星です!」


 あれ、なんかデジャブっぽい気がするぞ。

 こんな経験は確かなかったはず。気のせいだろう。

 それよりも一緒に喜びを分かち合うのが大事だ。

 

「小金貨一枚ゲット! うぇーい(やったー)

「うぇーい」


 両手を上げて万歳する僕とサティアだった。


「うぇーい。マップの確認終わり。四枚目に二階層のマップが入ってたわ。一枚目と同じで部屋の寸法がいいかげんなのは変わらない。トラップも要注意だね』

「ラーバ見ろ。小金貨落ちてた」

「お肉一杯買えますよ」

「うぇーい。マジックバックが先ね。これはもしかして今日で行けちゃう?」

「ここからの展開次第だね。お宝が発見できれば可能性はグンと上がる」


 マップの修正をしつつ二階層を進めていく。

 いくつかトラップが仕掛けられていたが、ラーバがことごとく発見してくれた。解除できないものもあったが、仕掛けが分かっていれば引っ掛かることもない。


 魔物との戦闘も至って順調だ。

 ぽつぽつとスライムとエンカウントするが、多くても二体だったので無難に勝ち進む。


 だが、緊張が長時間続くと少しずつ疲労が表に出てくる。

 二階層に入ってから既に二時間は経過していて、そろそろ休憩を取らないとまずい気がする。

 二階層に旨みがないことは分かっているので、なるべく早く先に進めたい。


「うぇーい。階段まであと少しだから頑張ろう」

「これ一日で五階層まで行けないですよね?」

「結構、部屋の探索を諦めてるけど、厳しいね」

「うぇーい。五階層まで行ければ直通路が使えるようになるから、それまで我慢」

「うぅ、嫌な思い出が……」

「大丈夫だサティア。僕らは一緒に向かうんだ」


 ダンジョンには五階ごとに直通路なるものが存在する。

 何度聞いてもエレベーターにしか聞こえないけど、五階にある直通路の石板に触れることで使えるようになる。この石板に触れた者だけが使えるので、一度は自力で五階層まで行かなくてはならない。


 緑園に入る前のサティアも当然これを使えず、当時の仲間から文句をさんざん言われたらしい。

 しかも、一人で五階層まで行けと言われ反論したらクビにされるだなんて可哀想過ぎる。サティアは全然悪くない。


 慎重に油断しないように足元の床、天井、壁を確認しながら歩みを進める。

 曲道や分岐があってもすぐに立ち入らない。

 魔物がそこにいるかもしれないし、罠が仕掛けてあるかもしれないからだ。


「うぇーい。次の左右の分岐点を右に行ったら階段があるはず」

「分かった。ラーバは罠と魔物の探知、僕が左を警戒、サティアはラーバのサポート」

「はいっ、行きます」

「うぇーい。慌てなくていいからねー。まずは様子見」


 ラーバが息を潜めながら少しずつ進み、周りの情報を集める。

 耳を澄ませたり、空気の流れを読んだりしていると僕らには説明した。

 多分、その他にももっと色々なことをして情報を精査しているのだと思うけど、斥候としてラーバの能力はルトさんも認めたくらい優秀なので頼りにしている。


うぇいうぇーい(問題なし)

「「うぇーい(了解)」」


 最初の取り決めどおり、分岐点で僕が左側の警戒。ラーバとサティアで右側の進行方向をチェック。

 分岐点や曲がり角で後方や他方の警戒を怠ると、リスポーンした魔物に襲われることもある。

 

「うぇーい。いるね。ちょっと先に……二匹かな」

「よし、サティアは左をやっつけ。ラーバは僕と交代して後方警戒。終わったらサティアに合流して。うぇーい(よろしく)

「「うぇーい(了解)!」」


 スライムとの戦闘も無難に終え、僕らは三階層へと続く階段を下った。

 階段途中のセーフティルームに寄り、休憩がてら今後の方針を相談。

 

「どうしようかな。疲れがあるからここで仮眠した方がいい気がする」

「うぇーい。私はまだ大丈夫だよ」

「私もまだいけます」


 とはいえ、ダンジョンに入ってから時間が結構経っているので、外は夕方くらいだろう。

 疲れというのは急激にコンディションを悪くする場合がある。

 油断は禁物、ここは大事を取ってしっかり休んでから行くことにしよう。

 リーダー権限で長い休憩をとることにした。


「じゃあ、ご飯作りますね」

「うぇーい。私は寝床作るわ」

「僕は周りの様子を見ておくよ。誰か来たら声かけるね」


 食事が終わり、ラーバとサティアに仮眠を取ってもらう。

 薄い毛皮を敷いて、布を体に掛けるだけの仮眠だ。

 何かがあったときにとっさに動けないと危険なのでどうしてもこうなる。


 二人揃って寝息を立てているけれど、やっぱり疲れていた様子。

 横になってすぐに寝たからね。

 

 二人の様子を窺いつつ、警戒する意識を広げると、微かに足音が聞こえる。

 誰かが階段を使って移動している。

 

 どちらかというと、下の階から上がってきているようだ。

 僕はそっと近くに置いた槍を手元に引き寄せる。

 

 オーガストさんたちに教わった言葉の中で強烈に記憶に残っている言葉がある。

『セーフティルームで一番怖いのは人だ』


 確かに怖いと思った。

 攻撃や強奪をされないとは言い切れない。

 力で脅してくる奴がいてもおかしくない。


 

 入り口を塞がれたらこの中で戦うしかない。

 入り口に人影が映り、嫌な緊張が走る。


 その影は見覚えのある影で、もじゃもじゃ頭のモージャンとポロンだった。

 僕がいることに気付いて、静かに手を上げて挨拶してきた。

 一気に緊張が解けた。


 後で聞いたら向こうも緊張したって言ってたよ。

 オーガストさんたち僕たちを脅し過ぎなんだよね。

 

 でも、教わったことは忘れない。

 大事なことばかりだから。


 ★


 人間の冒険者たちと謁見した大地神、戦神、魔神。

 大地神は喜色満面、戦神は思考を巡らせ、魔神は無表情に虚空を見る。


「ああ、久しぶりに生陽太に会えた。なんと嬉しいことか。残念なのは余計なおまけが付いていたことだが」

「大地神よ、余韻に浸っているところ悪いがお前はどう見た。魔神にも確認しておきたい」

「ボクからも確認させてもらいたいんだけど、陽太の未来おかしいよね。あれ最初からそうだったの?」

「我も同じことが聞きたい。大地神よ、お前は気付いていながら、何故看過したのだ」

「何の話じゃ」


 大地神は魔神と戦神を睨みつける。 


「ボクら神に見えない未来があるのはどういうことかって、聞いてるの」

「ああ、あの霞がかっている部分のことじゃな。時折、他の人間にもいるではないか」


 大地新は魔神が何を当たり前なことを言っているのかと呆れた。


「ふむ、確かに過去にはそういった人間もいた。だが、それはまだルールが緩かった頃に神が関与した人間のいた時代だ。今のルールでは直接干渉が原則禁止されておる故、起こり得ない。誰かが必ず気づく」

「確かに陽太は特異点らしき所があるが、安心せよ。そのために私が直々に監視しておる。陽太を受け取り、こちらへ連れてきた責任は私にあるからな。もうよいか、私は自分の神殿に引かせてもらうぞ。陽太の様子を見なければならん」


 大地神の姿がすっと消える。


「……魔神よ。やはりおかしいぞ。我は違和感を感じておる」

「ボクも同意見だ。大地神()()()()()よね。今の大地神の様子はまるで魅了魔法にかかっているみたいだ。……彼女もしかしたら()()()かもしれないね」


 だが、魔神は考える。魅了魔法は神に通じるものではない。同位者や上位者からならともかく、人間が神を魅了するには格が違いすぎて、魔法が効くことはない。それが理である。


「そのようなことがあり得るか?」

「さあ、どうだろうね。ボクら神自身の未来は自分では分からないからね。さてと、ボクもそろそろ引き上げるよ。大地神には、ボクの配下を監視に付けている。まあ、キミも同じことしてるのは知ってるけど」

「ぬかせ、奴自身も気付いておるぞ」

「まあ、神だしね。お互い様か」


 含み笑いを見せて、魔神が姿を消した。


「主神の気配が地球にもないのが気にかかる。全く、あやつはどこに行ったのだ」


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