第七話 佐藤優衣の妹
コンコンと私のいる部屋のドアをノックする音が私に聞こえた。
「姉貴、開けるぞ〜。」
という若い女の声と共にドアノブが下がり私たちがいる寝室の茶色いドアが開いた。
この私がいる寝室の間接照明が明るくはないのと廊下の光が逆光で影になってよくわからないが背の低い女の子が立っているように見えた。
「え?」
っと思わず声を上げてしまう私。
「おーい。姉貴〜。ドライヤー貸してくんねえか〜。うちの壊れちまってさあ。って誰だてめえ! 姉貴のベッドで何してんだ! ってええ! もう一人いやがる! ママ〜。」
謎の女の子は突如キレ出す。そして、恐らくは謎の白い人に気がついたのだろう。ドアを閉めドタバタと逃げていってしまった。無理もない。どころか当然だ。ここは彼女の家なのだろう。私は不法侵入者。いや、でも、俺は気がついたら居ただけなんだけど。
「おい、メーデン。一体これはどういうことなんだ! 何か知っているんじゃないのか? ってっああ! いててててて! 怒鳴って左脇腹の背中側が痛え。 ぐふっ。」
私が大声で怒鳴る。この暗い洋風の部屋に私の怒声が響く。
「鈴木悠斗、お主に言い忘れておったがこのお方はターシール皇子。我がアールマン帝国の皇子様じゃ。」
「はあ? アールマン帝国? 国連加盟国限定だが世界の国々を全て暗記している私でも聞いたことねえな。世界史の授業や参考書でも聞いたことも見たこともねえ。」
「当然じゃ。アールマン帝国は地球の第二衛星のモーナにあるのじゃからな。」
「はあ?(二回目) 地球の衛星は月だけと習っていたが。……」
「あるのじゃよ。」
「俄には信じがたいが。……現代のオメリカのNaasや目本のJaaxといった宇宙観測のプロがそんな近くの天体を見落とすはずがない。……」