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災害小説  作者: 田芳治
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プロローグ

 桜咲く九段下の道を歩いて行くとそこは入学式式場であった。

「ここが武道館か。」

 桜の花びらが私の美しい鼻先をくすぐる。

 ああ。今まで学校に入学して良いことなど一つもなかった。つまらない授業に私をいじめて来る嫌な同級生。これからもそうだろう。この入学式が私の地獄の始まりなのである。


「本当にそうじゃろうか?」

 私の脳内に住み着く幼女妖精が私に問いかける。

「また貴様か。本当だ!」

 私は叫ぶ。周りの新入生らしき若者たちや父兄らから変な目で見られた気がする。もっとも父兄のように見えた新入生ということもあったかもわからないが。話はずれていくが、父兄と言う言葉も保護者という意味で使うのは時代錯誤も甚だしいと言わざるを得ない。こんなものは家長父制度の名残に過ぎない時代遅れの言葉である。その証拠に殆どの新入生と思しき若者たちの保護者と思しき人々はその御母堂と思わしき人々である。話は戻っていくが、私はこのように人々に変な目で見られた気がすることには慣れている。日常的にこのような調子で叫んでいるからである。そもそも人々が私をどう思おうがどうでもいいことだ。私が人々をどう思おうが人々にはどうでもいいことだというのと同じことだ。


 一方その頃、地球の第二衛星モーナでは、核兵器の使用を伴う戦争が行われていた。

「ターシール!お前だけは生き延びろ!」

 アールマン帝国の皇帝ヨハはターシール皇子を脱出用小型宇宙船にぶち込むと急いでハッチを閉め緊急発射ボタンを押した。

「ファデルー!」

 お父さんという意味のアールマン語が船内に響くなか核兵器が炸裂しまくるモーナからターシール皇子を乗せた脱出用小型宇宙船は飛び立った。

「ファデル! 私だけが生き残っても仕方がないではないか!」

 脱出用小型宇宙船がモーナの大気圏を轟音と共に突き抜けていくなかターシール皇子は泣きながら叫んだ。

「何か戻る方法はないのか? どういうことだ! この船にはボタンもレバーも何もないではないか! 装甲を破壊しても宇宙空間では生きられん。……もはやどうしようもないというわけか。そもそもこの船はどこに向かっているのだ。モニターはある! 何? エオルゼだと!?」

 地球という意味のアールマン語を狭い船内の小さなモニターに確認したターシール皇子はこれからの自らの運命を悟った。

「私はエオルゼになど行ったことがない! ファデルは私にどうしろと言うのだ! そもそもエオルゼで私は生物として生きられるのか? ああ! 神よ! 何故こうなってしまったのだ! ああ!」

 ターシール皇子の衷心からの叫びが狭く無機質な船内に響きつづけた。

 ターシール皇子を乗せた宇宙船はプログラム通りただひたすらに地球を目指す。

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