第十章 - 七月七日(土) 晴
七月七日(土) 晴
山跡庭 鳴きてか来らむ 霍公鳥 汝が鳴くごとに 無人思ほゆ
今日の短歌は先にここに書こうと思います。
色々考えました。
多分僕は、昔を思い出したからやっているわけではありません。
逃げたかっただけです。
昨日の憤慨は、自分に向けての感情でもありました。
ですから、先程、思いっきり瞭司の部屋に入ってみました。
とてもおかしな話です。こんなに身近なのに、ずっとあそこに入るのを拒んで、半ば開いたドアからだけ覗く、そんな勇気しかありませんでした。
開けたら、瞭司がいました。
いつもみたいに机ではなく、僕に面と向かって、椅子に座ってました。記憶の中と変わらない顔で。
その顔を見て、僕は何も言えませんでした。入る勇気は湧いたものの、言うべきことは何も考えませんでした。頭の中は真っ白。何故でしょうか。
そこで、座っている瞭司は僕に言うんです。
父さん、もう15年経ったんです。
父さん、あの事故は父さんのせいじゃない。
もうわたしを、母さんの元に行かせてくれ、と。
この15年間、悪夢をする度に、あの時の痛みを思い出す度に、直面するべきでした。
認めたくない一心で、自分の息子をここに縛り続けてきました。
「ごめんなさい」と言うべきなのに、その場でどうしても声は出せませんでした。
気が付いて顔を上げたら、もう瞭司も部屋の中の物もなくなってしまいました。
それも当然のはず。事故があった直後、僕と映子さんが片付けたのですから。
逆戻りしたいのは、僕でした。
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■の■■
この日記は続いて書きますが、今日はここま■にします。
ちょっと前がうまく見えませ■■ページも濡らしてしまいました。
気持ちを整えましたら、日記を再開しましょう。
■さようなら。また次の日で。