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23 パーティがあるってよ

本日もよろしくお願いします

「5歳のお披露目パーティですか?」


「ああ。お前さんが知っているか知らんが、貴族子弟の5歳、10歳、16歳の誕生日は特別なのだ。姻戚関係のある貴族や、家門の貴族家を集めて大々的に行われる。

 5歳は“ここまで無事に育ちました”と言うお披露目、16歳は成人のお披露目だ。10歳は5歳と16歳の中間点の祝いだな」


 (オニール君)とブルックとの取引が成立してから3週間ほど経つが、あれからブルックの授業には俺が毎回【舞台に上がって】いる。ブルックの授業は週に3回だ。

 “週”と言っても、これは【代役(俺達)】の暦であって、【舞台】の物ではない。

 意外にもブルックは真面(まとも)な授業をする様になり、(オニール君)との相性も悪くない。最近では雑談までする仲だ。

 今は授業の合間の休憩中である。で、「ドゥーハ様の5歳のお披露目パーティの日は、授業は休みだな」とブルックが言った事からの、この会話だ。


 【舞台】の世界は医療技術がまだ未発達であり、乳幼児の死亡率は高い。これは貴族であってもだ。たぶん、庶民の方が死亡率はより高いだろうけども。

 魔術で病気は治せないらしい。これは、病気の原因やメカニズムを理解できていないからだと思われる。細菌やウィルスの感染症などの知識が無いし、免疫疾患や遺伝子疾患など尚更だ。悪性腫瘍が遠隔に転移する何て事も分からないだろう。

 たとえ家庭の医学程度であっても、病気のメカニズムの知識を持っている俺達が魔術で病気の治療をすれば、治せるのではないだろうか?

 そんな事を考えていたら、(オニール君)が納得してないと思ったのか、説明を続けた。


「実際、お前さんたちには姉がいたんだぞ?儂も詳しくは知らんが、生まれて3日程で儚くなってしまったと聞いたぞ」


「え?!お姉さんが居たんですか?僕達が初産かと思っていました。そっか・・・」


「その姉の前には流産もあったらしいな」


「え?!」


「びっくりすることか?そんなもんだろ」



「そうですか・・・でも、ドゥーハは5歳になってから数ヶ月は経ちますよ?お披露目には遅くないですか?」


「ああ。早くに準備を始めて5歳になる前に死んでしまったら目も当てられないからな。

 ちゃんと5歳になってからパーティの準備を始めると、大体これくらいになる。

 実際の誕生日は家族で祝っただろう?」


 ブルックの言葉に、はて、そんなイベントあったっけか?とオニール君の記憶を探って・・・ああ、ああの日は前日の晩餐時に毒を盛られて具合悪くなって、3日ほど自室に軟禁状態だったなと“思い出した”。


「僕、その日は体調を崩して自室で安静にしていました」


 (オニール君)がそう言うと、ブルックは残念な子を見るような視線を一瞬向けて、すっと反らした。

 オニール君が体調を崩して“療養”と言う名の謹慎をしている間はブルックの授業も休みになる。

 ドゥーハの誕生日に授業が急遽取りやめになった事を思い出したんだろう。


「ん、んんっ・・・で、あるから、誕生日から数ヶ月たってからのお披露目パーティは珍しくない」


 ブルックは下手は咳ばらいをした後、強引に話を戻した。

 これは良い事を聞いた。

 先日の報告会で食糧確保の方法について相談してから、1度も社交が開かれていなくて、まだ食糧確保ができてないんだよな。


 勿論、何も動かなかった訳じゃない。まず最初に厨房と食糧庫に行ってみたのだ。

 警備は厳重だった。

 そりゃそうだ。侯爵家の家族が食べる食料。毒を盛られたりしたら、一家全滅なんて事にもなりかねないのだから。

 忍び込むのは不可能に近かった。

 この先、木下君の魔術の習熟度が上がって、『隠密』の技術がカンスト?すれば忍び込めるだろうけど、そんなのいつになる事やらって言うのが現状だ。


 お披露目会に何とか忍び込んで食料をゲットしたい。




▲▽▲▽▲▽


「よし!行くか」


 パーティがあると知った俺達は【控室】で忍び込む作戦を相談した。

 色々意見を出し合ったり、魔術の効果を実証実験で確かめたり、ソーン君が以前着ていたパーティ服を拝借してきたりと準備を重ねて、あっと言う間に当日を迎えた。


「最初に行くのは僕だけどね」


 木下君がそうツッコミを入れて【舞台】に上っていった。


「行くかって言うのは、作戦を始めよう!って意味なんだけど・・・」


 俺が返した時には既に木下君は【舞台】の中で、オニール君がソファーに座る九条さんの腕の中に現れた。




お読みいただきありがとうございます

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