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21 取引成立

すみません!取引の続きを1週間後に更新する筈が、

間違えて、その次の九条菊子さんのターンを挙げてしまいました。

(執筆が滞らない様に、先の話で書き上げたものは予約投稿を入れてあるんです。それに間に合わせる様に間の話を差し込んでいくスタイルです)


この話を割り込ませたので、九条さんの話が次に来ます

混乱させてしまいます

すみません

「儂と、お前が、協力だと?能無しのお前に何ができる?儂に何の利益がある?」


 警戒感を露わにブルックが返してきたのに、俺は脅しの言葉を紡ぐ。


「ソーン兄上を始め下のミールやドゥーハ達には既に他の優秀な教師が付いています。ブルックさんが僕を教えないのなら、ブルックさんはコルタベント家ではする事がないですよね?・・・つまり、用無しって事。

 世間には、貴族の子弟1人を真面(まとも)に育てられず解雇されたって烙印を押される」


「お、お前ぇ・・・」


 ブルックが顔を真っ赤にし、握りしめた拳を震わせて怒鳴ろうとしてきたが、それを遮るために俺は大きく声を張った。


「ブルックさんは!」


 ブルックが黙ったのを確認して、声のトーンを戻して続ける。


「・・・ブルックさんは僕を『能無しに育てる様に』って母上から指示されているのではないですか?」


 俺のカウンターパンチに、驚愕の表情をするブルック。

 

「!!!」


(気づいてねぇと思ってたのかよ!まぁ、実際オニール君は気づいてなかったけど・・・)


 ブルックが言葉を発する前に更に畳みかける。


「僕を『能無し』に育てている筈のブルックさんが僕に言い負かされてしまった・・・と、母上に知られたら、ブルックさんはどうなるのでしょうかね?『能無し』の僕には、解雇される未来しか見えないのですが・・・他に可能性があるのであれば、教えていただけますか?」


「うっ、む・・・んん」


 ブルックは返す言葉が見つからない様子だ。

 そりゃそうだ。

 さあ、脅しはここまでにして、救済案を提示しよう。

 俺は声のトーンを柔らかいものに変えた。


「ブルックさん。ブルックさんは優秀な方だから、ご自身の知識と違う内容を教えるなんて事に苦痛を感じていらっしゃるのではないですか?

 教師は誰しも、優秀な生徒を育ててみたいと言う欲求を持っていらっしゃる筈です。

 ブルックさんもその気持ちはお持ちの筈・・・ですよね?

 それなのに、ブルックさんは教師の矜持を傷つけられている。

 そして、今ここで解雇されなくても、『僕』と言う『無能』な生徒を持ってしまった経歴はブルックさんの未来に影を落としかねない。

 そんな契約を交わした、僕の母上に義理立てする必要って、果たしてあるのでしょうかね?」


 ブルックの表情から僕に対する警戒感は消え、迷う様に視線を彷徨わせ始める。

 考える時間を少し与えてから、取引を持ちかける。


「もし、ブルックさんがこの事態を隠蔽したいと言う気持ちがおありでしたら、僕は協力を惜しむつもりはありませんよ?僕たちは師弟だ。この取引はきっと上手くいく」


 僕の言葉にブルックの視線がこちらに戻る。


「どんな協力だ?」


「ブルックさんは授業内容を少しだけ変えて下さい。できれば真面(まとも)なものが嬉しいですが、そこはお任せします。僕はそれを静かに聞く。そして、体罰は無し。

 家族に僕の能力を知らしめる様な事はしません。今まで通り、『無能』を演じます。

 それだけです。どうですか?」


 「そ、それは・・・」


 緊張の汗が噴き出したブルックは、服の首元に手をやって緩める仕草をした。呼吸が浅く速い。

 あと一押し。


「ブルックさんの経歴については・・・すみません、僕にできる事はないのですが、少なくともブルックさんは教師としての矜持を傷つけられない。僕は知識を得る事ができる。母上は目的を果たせていると満足する。ほら、誰も困らない。ね?」


 まだ迷う様子を示すブルックに僕は握手の手を差し出す。

 数秒迷ったブルックは、しかし何も言わずに僕の手を握ってきた。

 取引成立!

 だけど、汗をかいた中年のおっさんの手で握られるのはちょっと気持ち悪かった。




▲▽▲▽▲▽


 “ちゃんとした授業”の準備が必要だと言うブルックと別れて自室に戻った俺はベッドにダイブして、意識を手放して【控室】に戻った。


「矢崎さん、素晴らしい交渉でしたねぇ。ネゴシエーターの知識がおありで?」


 斎藤さんが開口一番に労ってくれる。


「矢崎さん、恰好良かったです!ブルックは面白いように、踊ってくれましたね!」


 続いて彩音さんにも褒められた。えへへ、嬉しいぞ。


「ザッキー、鼻の下が伸びてんぞ!気持ち悪ぃぞ?」


 星屑君は煩いが、許して進ぜよう。今の俺の心は海より広いぞ?


「僕も魔術の教師、やっつけちゃいたい!魔力量的にいまは無理だけど・・・」


 木下君もちょっと興奮気味だね。

 山田君は小さく「自分も直ぐに助けてやるからな。助けてやるからな」とブツブツ呟いてる。

 

「魔術と武術は魔力と体力が身に付くまでは焦らないで行こうね」


 早まらない様にと釘を刺しておく。


「音楽と魔術も無理せずに行くわ」


 彩音さんは理性的だ。可愛い。


「そうですね。技術系の分野は舌戦でどうにかなるものでも無いですから、慎重さが必要ですね。

 下手に反抗すると、聞く耳を持たずに暴力で押さえつけられる可能性が高いです」


「今日、状況を良い方向に一歩進める事ができたのですから、倦まず弛まず、焦らずで行きましょう」


 斎藤さんと俺が言うのに、皆が頷いた。





3/6の投稿はお休みさせて頂きます

次回は3/13を予定しております

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