表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/27

20 取引

本日もよろしくお願いします

ちょっと短いですが

 さて、ブルックが教える授業は明日もある。やつが授業にどんな態度で出てくるか、そして俺はオニールとしてどういう態度で臨むべきか、それを決めておかないといけない。


「ブルックの出方次第ですが、可能なら取引を持ち掛けたいと思っています」


「取引?」


 俺の発言に彩音さんが返してくれる。


「ええ。ブルックは侯爵夫人から、オニールを無能に育てろって命令を受けている。今まではそれが成功していた。けど今日、突然オニール君に遣り込められてしまった。この件を侯爵夫人にどういう風に報告しようかと悩んでいるんじゃないかな?」


「そうね。雇われているんだから、雇用主への経緯や進捗状況の報告は必要でしょうね」


「そこで、ブルックは教室を去った後どうしたのか?なんだよね。

 あの足で侯爵夫人に面会して、(おとこ)らしくありのまま報告したのか、取り合えず経過観察をすることにして何も言わなかったのか、それとも己の失態を隠ぺいして、仕事は上手く行っていると報告したのか」


 オニール君以外の人のライブやアーカイブの映像が見られれば良いんだけど、オニール君が居ない場面の映像は出せないんだよね。


「もし、ブルックが己の失態を隠蔽したいと言う気持ちがあるなら、オニール君の変化を侯爵夫人にバラさない取引を持ち掛けてみる。ブルックは今まで通り、意味のない授業を続け、オニール君はそれを指摘することなく静かに聞く。そして、体罰は無し。どうだろう?」


「オニール君

の変化を侯爵夫人に知られたくないのはお互い様で、不戦協定を結ぶって感じかしら?」


「そうですね」


 俺と彩音さんの会話に斎藤さんも加わる。


「確かに、あのブルックは小心者の気配がしますから、自分の失態を隠したがりそうですね」


「斎藤さんもそう思いますか?」


「ええ。支店長をしておりましたから、部下を指導する立場から人品を見極める力は持っていると自負しておりすが、ブルック(あれ)はあまり責任感の強い方ではないと思いますよ」


 斎藤さんが言うならそうなのだろう。


「じゃあ、明日の授業は僕が【舞台】に上がって、ブルックが教室に現れるか見てみます」




▲▽▲▽▲▽


 翌日、宣言通り俺は【舞台】に上がった。長い道のりを歩いて教室に向かう。相変わらず頭がぼーっとして、気を抜いたら歩きながら眠ってしまいそうだ。軽く頭を振って意識を繋ぎ止めながらトボトボと歩く。セカセカ歩きは無理だ。

 漸く辿り着いた教室の扉をノックして応えが無い事を確認後、室内に入った。ブルックはまだ来ていない。

 椅子に座ると意識が落ちそうなので立ったまま待つことにした。

 無意味に歩いたり、窓から外を眺めたり。

 ここは1階で、屋敷の裏に面しているので窓の外は手入れのされていない薄暗い庭が見えるだけだ。

 農業チートとか何とか木下君が言ってたな・・・ここで野菜を育ててみても面白いかも知れないなどと想像してみる。 

 そんな風に時間を潰していたら、いつもよりも遅れてブルックは現れた。

 そして尊大に咳ばらいをした後、話始めた。


「ぅえっへん!少しは反省したか?昨日のあれは、教えを乞う物の態度ではなかった。儂はこちらを敬いもしない相手に親切に教えを与えるなどしないぞ?儂と言う指導者を失えば、侯爵家のお荷物であるお前さんに勉学を教えてやろうなどと言う奇特な物はおらんじゃろうな?どうするね?ん?んん?」


 これは・・・侯爵夫人に報告してないな?


「あの、ブルックさん。昨日の事は、両親には・・・」


「ふふっ。知られたくあるまい?ん?んん?」


 ん?んん?ってのが感に触って鬱陶しいやつだな・・・


「・・・はい」


「安心せよ。まだ言っておらん。しかし・・・お前さんの態度によっては、うっかり報告したくなるかも知れんなぁ?ん?んん?」


「もしそうなったら、ブルックさんはどうなるのですか?」


「?ん?どうなるとは?」


「僕を教え続けるんですか?それとも解雇・・・ですか?」


「!!!!!」


「ブルックさん、ここを解雇されて、次に行く当てはあるんですか?」


「わ、儂は優秀な指導者であるからして、その様な事はお前さんに心配して貰わんでも大丈夫だ」


 嘘だな。

 目は忙しなく動いて視線が定まっていないし、額にじっとりと汗が滲んでいて、明らかに挙動不審(きょど)ってる。


「ブルックさんが優秀な事は分かりますが、だからと言って雇用先がふんだんにあると言う訳には行かないでしょう?貴族の子弟の人数にも限りがあるのですし。

 ここは、お互いのために協力しませんか?」


 俺はブルックが理解できるようにゆっくりと、嚙み含める様に話をすすめて行った。





お読みいただきありがとうございます

週1更新を予定しております

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ