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15 報告会3

本日もよろしくお願いします

長くなったので2回に分けましたので、明日も更新があります

 【代役】の皆がそれぞれ精力的に情報収集や技術習得を行って1ヶ月が経ったので、今日は2回目の報告会を開いた。


 まず、【シミュレーションルーム】で山田君が弓矢の技術を披露してくれた。

 真剣な様子で弓に矢をつがえて弦を引き絞る山田君。凄まじい集中力だ。見ているこちらも、唾を飲み込む音さえも立てないように、静かに見守る。

 しっかりと狙いを定めて30m程先の(まと)に向けて矢を放つ。矢は真直ぐ飛んで行き、(まと)の真ん中に吸い込まれる様に刺さった。さらに、二射、三射と矢を放っていく。合計十射を打ち終わった時には、6割ほどが(まと)の中心に、他のそれほど外れていない場所に刺さっていた。


「おお!凄い的中率。すげぇなぁ」


「山田兄ちゃんかっけぇー!」


「いえ、まだまだです。今回は(まと)までの距離が初心者の練習用の30mですからね。

 日本の弓道の遠距離競技やアーチェリーでは60m、70mです。70mでは的中の心への的中率は3割を切ります」


 皆の称賛の声にも、冷静に謙遜で返す山田君。相変わらず、自分に厳しい。


「いやいや、弓矢の精度が違うでしょ?日本の弓道もアーチェリーに比べればかなり精度が落ちると聞いたことがあるよ。ましてや【舞台】の弓矢は更に精度が低そうじゃないか?」


「ですがこれは競技ではなく、生死がかかった場面で動く的を射抜かなければいけないのです。動かない的に対する命中率がこれでは話にならないでしょう」


「まぁ、そうなんだけど・・・」



 次に剣術も披露してくれる。

 いつもオニール君を虐めている教官の剣士が【シミュレーションルーム】に出現する。山田君は剣を手にして剣士の前に立った。

 山田君と剣士は剣を正眼に構えたまま、間合いを取りながらお互いにじりじりと時計回りに回る。10歩ほど歩いただろうか、突然、剣士が踏み込んで来た。喉元に突きを放ち間髪入れずに横に振り抜いてくる。山田君は1歩2歩と後退して相手の剣を避けた。そして後退しながら、剣士の3振り目に自身の剣を当てて、力強く右へ払う。

 ここで再度間合いが開いた。

 お互いに剣を構え直した所で、再度剣士が大きく踏み込んで放ってきた突きを山田君が右へ流すように払い、すかさず剣を返して剣士の喉元に突きを見舞う。それは見事に当たって、剣士は蹈鞴を踏んで膝から崩れた。苦し気に喉元に手を当ててゲホゲホと咳き込んでいる。

 初めて剣術教官の騎士に打ち勝つのを見て、皆が歓声を上げて盛り上がる。

 いつもはオニール君を虐めている教官が、地面を這いつくばっている様子に皆心がすっきりとした様だ。

 実物でも早く叩きのめされて欲しい。あいつの悔しそうに歪んだ顔を見てみたい。

 おっと精神がサディスティックになりかけている。いかんいかん。


「やっと【舞台】の剣術が分かってきました。まだまだ未熟の域を出ないので、引き続き鍛錬を続けて行きます。あと、棒術も頑張って練習しています」


「山田君は謙遜しているけど、現役の騎士を這いつくばらせた時点でそこそこのレベルだと思うよ。まだ訓練を始めて1ヶ月に満たないんだ。弓も現時点での到達度としては充分だと思う。勿論、上には上がいるんだし、ここで甘んじている様では駄目だってのは分かるけど、あまり根を詰めないで頑張ってよ」


 そう宥めてみたけど、どこまで伝わっているか・・・



 次は彩音さんが【音楽スタジオ】でリュートに似た弦楽器とフルートに似た横笛を演奏してくれた。それぞれの楽器で3曲ずつ。【舞台】の音楽は素朴な感じであまり複雑なコード進行は無い様だ。


「練習量がまだ足りていないから、子供の遊戯レベルでお恥ずかしい限りです」


 彩音さんもそう言って謙遜するけど、小学校のリコーダーやピアニカレベルの俺からすれば、完璧だ。


「いやいや、普通1ヶ月弱でここまで上達できないですよ!しかも、レパートリーも既に十数曲あるんですよね?流石プロの音楽家です」


「音楽の授業では数曲しか教えて貰えてなくて、どうしようかと思ってたんだけど、書庫に楽譜がたくさんあるのを見つけたのよね。

 最初、楽譜の記号の意味を調べるのに少し時間がかかったけど、理解しちゃえばこっちのものよ」


 そして、ついでにチェロの演奏もしてくれた。何と言うか、プロのチェリストの演奏は次元が違った。

 まさに鳥肌が立つ体験。

 心に響く旋律。

 天上の調べ。

 いくら言葉を重ねても、称賛し足りない。どんな言葉を使って称賛しても陳腐に聞こえてしまう。それくらい素晴らしかった。全員が彼女の奏でる音色に聞き入った。

 確かに、これを聞かされると先の弦楽器や横笛の演奏は一般的な上手レベルと言えるだろう。

 チェロの演奏が終わった時には【代役】全員が惜しみない拍手を送った。

 そしてこのチェリストの命が奪われたことに改めて憤りを感じた。


 俺と斎藤さんは学習した内容を発表した。

 まずは俺から。

 

「地理から行きます。

 オニール君の住む場所はダルベート大陸の北の端プリルベン国です。他に、北からパミドロル帝国、レチノール国、アルギル国、ラミプリル国があります。

 プリルベン国の首都、ああ王都と言った方が良いのかな?はゾランです。ゾランはプリルベン国の中央よりもやや南寄りにあります。オニール君はこの王都ゾランのタウンハウスで生活しています。

 コルタベント侯爵領はコルタベンと言う街が領都です。コルタベンはプリルベン国のやや北に位置していて、領地の半分が山岳地帯です。

 ダルベート大陸の外がどうなっているかと言うと、北にもうひとつ大陸があるのですが国交はありません。村、町レベルで(ささ)やかな交易が行われている程度の様です。

 あと西側には島礁群があり、漁業を生業とする小さな町や村が点在しています。こちらも村や町レベルの交易の様です。

 東側は近接した島や大陸は無いようです。

 そして南側には魔大陸と言う物があって、魔人が住んでいます。

 魔大陸との間に広がる南の海には魔海獣と言う強悪な生き物が棲息しており、浜辺に近づくことすら危険な様です。

 魔人らは人間とは相容れない生き物で、積極的に攻めては来ないが交易の相手にもならない様です。ごく希にダルベート大陸に流れ着いた魔人が無差別殺戮を行い、甚大な被害をもたらす様です。

 次に歴史ですが、ダルベート大陸は日本の戦国時代の様な感じで大陸統一を目指して何度も大規模な戦争が発生しています。

 何度か統一されたり、統一1歩手前までいった事もある様ですが、“盛者必衰の理を表す”じゃないですけど、内乱・反乱などでまた小国に分断されたりを繰り返していて安定しない様です。

 今は先ほども言ったプリルベン国、パミドロル帝国、レチノール国、アルギル国、ラミプリル国の5ヶ国に分かれています。

 現在、レチノール国とパミドロル帝国で小さな小競り合いがある程度で、比較的落ち着いてる様ですが、今後もその均衡が保たれるかは不明ですね。

 宗教は大陸の南北で分かれています。北からプリルベン国、パミドロル帝国とレチノール国辺りまではサルース教と言う一神教、唯一神の名は女神でヒュギエイアです。それよりも南側はエストリック教と言い、こちらも一神教です。唯一神は男神でアグリプレースです。

 それから貴族やその家臣の子弟の生活ですが、5歳位になると家庭教師や親が付いて、男子は勉学や鍛錬・乗馬そして領地経営の手伝いを、女子は行儀作法などを学ぶようになります。

 男子は13~15歳になると、家臣の息子は小姓や騎士見習いとして本格的に騎士や従者となるため、領主の息子は統治者としての厳しい教育が始まります。

 女子は12歳頃から社交界に出て結婚相手探しですね。ただし、結婚相手は親・親族が決める事であり、本人に選択肢はありません。恋愛結婚なんてあり得ない世界です。

 因みに成人は男女ともに16歳です。

 また、プリルベン国には学校制度は無い様です。

 地理や歴史はより細かい事も学習中ですが、ここで発表すると授業みたくなるのでこれくらいで」


 斎藤さんは経済分野について話してくれた。


「まず、貨幣ですが、金貨、銀貨、銅貨などの硬貨が使われています。紙幣はありません。

 次に価値についてですが、物の値段などから推測するに、白金貨 1000万円 、大金貨 100万円 、金貨 50万円 、小金貨 10万円 、大銀貨 1万円 、銀貨 5000円 、小銀貨 1000円 、大銅貨 100円 銅貨 50円 、小銅貨 10円と言ったところです。

 この貨幣はダルベート大陸の共通貨幣です。貨幣を発行しているのはパミドロル帝国です。レチノール国も独自の通貨を少し発行している様ですが、国際間の信用度はかなり低いです。

 コルタベント侯爵家の領地の主な収入源ですが、山岳部で鉱山を有しており、鉄、銅、金が取れる様で、国内貴族の中ではけっこう裕福ですね。平野部では農業を行っており、芋とトウモロコシが主ですが、これらは領民の主食や家畜の餌であり輸出はあまりしていません。畜産は家族単位で鶏や豚、山羊を飼うくらいで、大々的な畜産業は発展していない様です。この世界は魔獣がいるので、大規模畜産は難しいのかも知れませんね。

 ダルベート大陸各国の経済的な規模としては、パミドロル帝国が一番です。次いでレチノール国。2大国から大きく差を付けられて、プリルベン国、アルギル国、ラミプリル国は同程度の様です。

 プリルベン国はパミドロル帝国と経済的に繋がりが強く、レチノール国はアルギル国・ラミプリル国と繋がりが強いです。

 パミドロル帝国発行の貨幣はレチノール国以南でも普通に使用されていますが、レチノール国発行の物はレチノール国・アルギル国・ラミプリル国でだけ使われている様です。

 プリルベン国内の各貴族の領地の産業や、他国の状況もそれなりに調べました。その情報は必要に応じて提供します」


 九条さんは食事のマナーや挨拶など、アーカイブで見れる範囲内のシチュエーションでは完璧だとの事だった。


「書庫にマナー教本が1冊だけございましたので、それを読みました。貴族同士の挨拶や社交のルールと王族と接する際のマナーは多少違う様でございます。

 基本的に下位の貴族から上位の貴族や王族へ声をかけるのはマナー違反でございます。上位の貴族から声を掛けられた場合や、繋がりのある貴族の紹介を介して初めて会話が可能になります。王族には直答やお顔を直視したりなどは許されません。

 礼の方法は、女性は屈膝礼いわゆるカテーシーです。男性は右の手のひらを心臓からやや肩よりにあてながら深く頭を下げます。いずれの場合でも、お辞儀をしながら口上を述べます。日本のように語先後礼ではありません。

 王族への謁見の場合は跪礼(きれい)、いわゆる片膝を床に付く礼を行います。右膝を付いて、左膝を立てます。

 ただ、言葉だけの説明で挿絵がなく、細かい動きや腕や背筋、頭の角度など細かい部分は分かりませんでした。そう言った情報をどうやって手に入れるかが課題でございます」


「まぁ、それは仕方が無いですね。ソーン君のマナーの授業とかを覗き見できれば良いのかも知れませんが・・・」


 星野君も社交ダンスのレパートリーが増やせない状況だった。


「ダンスの講師が2つ位しか教えないんっすよねー。たぶん他にももっとあると思うんすよねー。教えてもらったダンスも、正しいステップを教えてるか怪しいっすよねー。

 コルタベント侯爵家でパーティやる時はオニールは部屋に閉じ込められてて、確認のしようがないんっすよー」


「それも課題だね」



お読みいただき感謝です

明日、報告会4を更新します

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