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食卓をきれいに片づけて再度手紙を並べる。注意深く文字を眺めるが、筆跡の変化はモニには分からなかった。

「同じ単語に注目して見たらいいよ。たとえば、『家』という単語。インクのかすれ方が違う。『猫』もそうだね、最初の手紙と並べてみると分かりやすいよ。大分似せてはいるけどね。僕の目は誤魔化せなかったということだね。」

どうだと言わんばかりの叔父を無視してモニは手紙を凝視する。

「だとすると、この手紙以降は違う人が書いたってこと?」

一枚を手に取る。

「僕はそう思うよ。」

叔父が思案しながら言う。

「このことはロビンにはまだ知られてはいけない。知られないように僕が調べてみる。時間がかかるかもしれないから、ロビンがせっついてくるようならモニには宥めておいて欲しいんだ。」

「いいですけど。僕も一緒に調べますよ。」

「それはやめておいた方がいいな。」

モニは大いに反論した。それはそれは大いに駄々をこねた。こんなに面白くなってきたのに、のけものにされるとは心外である。

「面白くなってきたんじゃなくて、きな臭くなってきたの。もう子供が関わることじゃない。」

当然だが叔父も渋る。

「僕を巻き込みたくないんだったら、最初から筆跡の話なんてしなければ良かったんだ。ロビンにしたみたいに適当に濁してさ。僕だって危ないこととそうでないことくらい分かるよ。一人で猫を追いかけるつもりもないし、他の人に言いふらしたりもしない。ただ、叔父さんが調べるのに僕も力になりたいんだ。一緒に解決したいんだよ!」

モニは言い募る。

「それに、叔父さんだけで行動した方が危ないよ。叔父さんはこういうことさせると周りが見えなくなるから、迷子になったり、知らないうちに他人の庭に侵入して捕まったり、服を破いたり、とにかく絶対トラブルになるんだから。絶対僕がいた方がいいって!叔父さんだって言ってるじゃないか、自分がぶつぶつ喋っていると僕が質問したりして、考えの整理になるって!」

これはもう無理だなと、叔父は観念した顔をする。しばらく唸り、大きなため息をついて叔父は言った。

「絶対一人で行動しないこと、何かあったら必ず僕に言うこと、暗くなる前には絶対家に帰ること。」

小さく飛び跳ねているモニを見ながら叔父がやれやれともう一度ため息をついた。

「あと、姉さんには知られないこと、これだけは絶対にだ。モニをこんな妙なことに関わらせたと知られたら僕が殺される……。」

モニは頷いた。叔父が首を縦に振らなければ『母に言いつけてやる』を切り札にしようと思っていたのだが、そうせずに済んで良かったと思った。あまりにも子供すぎる。

「ただ、途中で本当に僕がダメだと判断したらこの件は終わりだ。実際問題として、第三者が夜中に、ロビンを誘い出そうとしている。途中で警吏に介入してもらって丸投げする可能性も、僕は高いと思っているよ。」

「分かってる。でも、まだそうと決まったわけじゃないでしょ。」

「まあねえ、こんな平和な街に極悪人がいるとは思えないけど。」

叔父が疲れた顔をする。

「そう考えるのは、大人としての責任を放棄することなのかもしれないな。」



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