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ロビンが帰った後、叔父とモニは作戦会議を始めた。ロビンの返事は『分かった。会えるのを楽しみにしています。』とかそんなところだ。大きなティーポットに紅茶を作り、テーブルには糖分補給のための飴とキャラメルが準備された。

「時間制限がついたことで攻め方を変えなければいけない。」

叔父が言った。いつになく真剣な表情である。

「本当は今日、グリュンワルド家に訪問の約束を取り付けようと思っていたんだけど、やめた。直接行こう。」

「直接行って、どう切り出すんですか。」

「何も考えてない。」

真剣なのは表情だけだった。

「ヘレナが日光に当たることができないって、本当だと思います?」

今後の行動の取っ掛かりになるものはないかと、モニが疑問を適当に口に出す。

「嘘だと思う。そんな噂は聞いたことがない。」

「なぜそんな嘘をついたんだろう。やっぱりロビンを夜に呼び出すため?」

「それしか考えられない。大体10の鐘って、前回の手紙とほとんど同じ時間じゃないか。本当に日光がだめなら今の時期、6か7の鐘くらいで十分だろう。」

「なぜスミソナ池の廃屋なのか。人目を忍ぶ以外に目的がある?」

「いいね、こういうの。思考が整理される……。便宜上、筆跡が変わった以降の手紙を書いている人物を『犯人』と呼ぶことにする。スミソナ池は犯人にとって都合がいい。北の集落からスミソナ池まで、新しい橋を渡ればすぐだ。」

「犯人は北の集落に住んでいるの?」

「証拠はないがそう思っている。手紙を見るに、犯人はグリュンワルド家の内情をそれなりに知っている様子だ。可能性の域を出ないけれど。」

「ロビンを呼び出して、どうするつもりなんだろう。」

「それを考える必要はない。ロビンは決して傷つけさせない。」

「なぜ前回の手紙から2週間空いたのか。」

「……二つ考えた。一つ。ロビンを焦らすため。嫌われてしまったかもしれない、と思い込ませて焦らせる。そうすれば前回とほとんど同じ条件でも会いに来てくれると踏んだんじゃないか。実際そうなったし。二つ。物理的に手紙を出せなかった。例えばこの2週間、体調を崩して寝込んでいたとか。いや、違うな。それだとロビンの手紙も回収できない。一つ目の可能性が高い。」

ふう、と二人とも息をつき、キャラメルを口に入れる。モニが話を変える。

「グリュンワルド家の内部事情について、本があるんですか?」

「内部事情というか、この国の貴族の歴史についての本を持っている。一昔前までの情報なら正確にまとまっている。」

「現在の情報は載ってないんですか?例えば、グリュンワルド夫人やヘレナの好きな食べ物とか好きな動物とか、欲しいものとか。使用人のことでも。」

むちゃくちゃだとは分かっているが、モニは口にしてみた。

「それねえ、今一番欲しい情報だよね。全然分からない。本当は今日、グリュンワルド家への訪問を取りつけた後、中心街でマダムたちの井戸端会議に参加しようと思っていたんだ。まさかこんなに急激に時間が無くなるなんて。こんなに焦るのは久しぶりだ。論文の締め切りに追われていたときだってもう少し心に余裕があった。」

叔父が天を仰いだ。ひとしきり唸った後、意を決したようにモニに言った。

「考えても仕方がない。出かける準備をしよう。正直に話して夫人に取り次いでもらおう。」


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